
漫画『ニーハオ、おいしい東京日和。』の作者、ZONさんにインタビュー。
それほどおしゃれではない、ディープな街が好きなんですよね(笑)
日本で暮らす外国人が増えているのは、いまや日常のさまざまな場面で実感できることだろう。一方で、彼らがどんなふうに暮らしているのかは、意外と見えてこないもの。中国・成都出身のZONさんが、食を切り口にして東京暮らしを描いた本作からは、知っているつもりだったのに知らない東京の一面が浮かび上がってくる。
「私は食べることが好きで、京都で留学していたときも食をテーマにしたマンガを中国語で発表しています。いま住んでいる東京は京都より圧倒的に外国人が多く、いろんな文化が交ざっている印象です。京都ではガチ中華を食べたくなったら、10kmくらい離れた店へ自転車で行くしかなかったのですが、東京だと大抵の駅にあると言っていいくらいなので」
本場の味に限りなく近いといわれ昨今人気を集める、ガチ中華。日本人が海外で無性に刺し身やみそ汁を欲するときがあるように、主人公の「宗(そう)さん」も発作的に故郷の味が恋しくなる。運良く出合えることもあれば、肩透かしを食らうこともあり、“ガチ”といえどもいろいろで、中国の食文化の幅広さ&奥深さを感じさせる。たとえば日本でもおなじみの担々麺。

ⒸZON/リイド社
「私の出身地の四川省が発祥といわれていますが、基本的には汁なしで、味も見た目も日本の担々麺とは全然違います。いま日本で流行っているマーラータンも私が知っているのとは別モノですが、中国でも地域によって結構違いがあるみたいです」
入管でビザを更新した帰りに新小岩で買う包子(バオズ:肉まん)。明け方の新小岩のスナック街で、水商売の人たちに交じって食べる担々麺。高田馬場で留学生にオーダーのしかたを教えてもらうマーラータン。それぞれの街の様子や、偶然居合わせた同郷の人とのやり取りなど、食を取り巻く風景も鮮やかに描かれていく。
「登場するお店はフィクションですが、散歩が好きなので取材のつもりでいろんな街に出かけて、写真を撮ったり食べたりしています。それほどおしゃれではない、ディープな街が好きなんですよね(笑)」
中国人のマナーの悪さを罵る老人に怯えつつ、なぜか食を共にすることになる、江戸川放水路での潮干狩りのエピソードが印象的だ。
「大部分の外国人は法律やルールを守っているけれども、そうではない人のせいで悪い印象を持たれてしまうことも。基本的には優しい人を描きたいのですが、共生にはデメリットもあるので、“そうじゃない人”も描かなければと思っています」
よそよそしさと居心地の良さが半々の東京で、故郷の味に懐かしさと切なさを覚える「宗さん」は、私たちのすぐそばにいる。
Profile
ZON
ゾン マンガ家。中国四川省成都市出身。京都での留学を経て、現在は東京在住、平日は会社員。水餃子とチャーハンが好き。Xは@ZON88888888
『ニーハオ、おいしい東京日和。』1巻
東京でひとり暮らしをする中国人の宗さんが出合う、故郷の味、さまざまな目的で暮らす移民、日本人。知らない東京が見えて、お腹もすく、移民目線の日常。
リイド社 880円
anan 2509号(2026年8月26日発売)より
































