
漫画『るすばん猫きなこ』の作者、今日マチ子さんにインタビュー。
次世代につなげていけるものになるといいなと思っています
冒頭、暗闇の中で少女は子猫に話しかける。〈おるすばん? わたしもだよ いっしょにいてもいい?〉小学1年のここなと、友達のさきちゃんが飼い始めたばかりのきなこは、〈おんぼろ屋敷〉の主であるおばあさんと、地震と津波で離ればなれになった家族を待ち続けることに。置いていかれた場所で待つ側、探しに行くことさえできない側、それぞれが抱えたままの思いを繊細に掬い上げた『るすばん猫きなこ』(現在、「モーニング・ツー」にて連載中)を、強く推したい! 今日マチ子さんは、3・11後に発表した震災ストーリー『みつあみの神様』以来、改めて同じ題材に挑んだ。
「私の基本的な姿勢として現地に行ってから描きたいタイプなんです。でも当時は取材もままならなくて、ファンタジーに寄せたような作風になりました。その作品自体に満足はしているんですけれど、ずっと引っかかっていて。被災地のスケッチや写真、うかがったお話など溜めてきたものをやっと形にできました」
主人公を少女と猫にしたのは、震災から越えてきた年月が猫の寿命と同じくらいだなと気づいて、猫の一生を重ねることを思いついたそう。
「あと、一口に被災体験と言っても大人の立場や事情は複雑なので、子どものフラットな目で出来事を見られたらいいなというのと、小学生ぐらいから読めるような開かれた作品にしたかったのと。ただ、そこで被災者というとすぐ悲しいイメージに結びつけられるのがイヤで。置かれた状況はシリアスでも、本人は割と楽天的で誰とでも仲良くなれる子にしておこうと思いました」

Ⓒ今日マチ子/講談社
とはいえ、そうしたここなの明るさや無邪気さが、読者の胸によけいずしんとのしかかるのではあるが。
「自然災害のような抗いがたい運命やその痛みと向き合い、フィクションで検証していく。その方法論として、次世代につなげていけるものになるといいなと思っています。映画なんかで言うところのメイキングや、日記やメモのような役割。後世の人たちがこれを頼みに、また違う作品を作ってくれたらいいなと」
震災という体験に完全なけりはつかないのかもしれない。それでも声なき声を拾う物語を通し、違う角度から光を当ててもらったことでかすかな希望を見出せる気もするのだ。
Profile
今日マチ子
きょう・まちこ 東京藝術大学卒。手塚治虫文化賞新生賞、日本漫画家協会賞大賞カーツーン部門を受賞。『cocoon』など、戦争を題材にした作品も多い。
information
『るすばん猫きなこ』1巻
子どもたちも猫たちも愛らしく、過酷な状況を忘れそうになるが、その向こうに続く終わりの見えない痛みを浮き上がらせる存在でもある。圧巻の読後感。講談社 792円
anan 2504号(2026年7月15日発売)より

































