
岡上淑子《招待》1955年 ⒸOKANOUE Toshiko, Courtesy of The Third Gallery Aya
現在、渋谷ヒカリエで開催中の展覧会「まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険」で、キュレーションを担当した、竹内万里子さんにインタビュー。本展に込めた想いを聞いた。
自分の理解が及ばないものの前にも立ち止まってみてほしい
フランス・アルルの国際写真祭を皮切りに14万人を動員、世界を巡回中の写真展が東京・渋谷に凱旋。日本人女性写真家を特集した本に合わせて開催した話題の展覧会で、本の編纂に携わったアメリカ人のディレクター、フランス人のキュレーターの2人に批評家の竹内万里子さんが加わった、国籍の異なる3人の女性による共同企画だ。日本展ではキュレーションを竹内さんが担当、30人の女性写真家を取り上げる。
タイトルに“冒険”と冠したことについて、竹内さんは「女性はこうあるべきという社会規範が根強い中、自分の道を切り拓いた一人一人の果敢な挑戦に対して“冒険”と名付けました」と話す。それは彼女たちがカメラを手にしたときに始まった冒険であり、フィールドはさまざまだ。
幻想的なコラージュ作品は実験精神に富み、復帰直後の沖縄を捉えた1コマはドキュメントでありながら、被写体の目には見えない感情に触れられるよう。ショーウィンドーに並んだエレベーターガールをモチーフに、商品化され、消費される女性の現実を差し出して見せるかと思えば、とるに足らないと見過ごされがちな日常の光景、例えば手元に差し込む光の暖かさにまなざしを注ぐ。
「ドイツを巡回した折にこんな感想をもらいました。『この展覧会は一見、色とりどりの花が咲くガーデンみたい。観終わった今はファイアワークのように思える』」
なぜ“花火”かといえば「一人一人が別々の方向に向かって最高の状態で花開いているから」。そんな彼女たちを“女性写真家”と括ることに関して細心の注意を払ったという。
「作品を観ると各々が独立した表現者であると実感できるでしょう。インディペンデントでパワフルでクリエイティブ。“女性”という名のもとに30人が集まって初めて私たちは日本、日本女性、女性写真家をめぐる漠然とした期待、考え方から解放されると思っています。あえて“女性写真家”と括ったのは、定義するためというよりは定義を壊すため」
私たちの日常は大量のイメージの断片とともに流れていく。その中で一枚の写真の前に立ち止まり、まなざしを重ねることができるだろうか。
「だからこそ展覧会なのだと思います。展覧会は観る以上に、体験するもの。自分のグルーヴや感覚に正直に作品の間を歩いて、どんな順路でもいい。たった一点との出合いが人生を変えることもありますから。そして自分の理解が及ばないものの前にも立ち止まってみてほしい」
4月にオープンしたアート施設MINAをはじめ渋谷の各所で関連展示も行われる。マップを片手に写真をめぐろう。どこかで新しい扉が開くかもしれない。
Profile
竹内万里子
たけうち・まりこ 批評家、作家、キュレーター。京都芸術大学教授。国内外のメディアに写真批評を寄稿するほか数多くの展覧会でキュレーションを担当。近著に『矛盾の海へ』(赤々舎)など。共著書も多数。
information
まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険
ヒカリエホール 東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ9F 開催中~8月26日(水)10時~19時(入館は18時30分まで) 会期中無休 一般2200円ほか ※U-30割引あり TEL. 050-5541-8600(ハローダイヤル)
anan 2503号(2026年7月8日発売)より




































