真夏のカラダを守る。5つの基本栄養学。
1、脱水症は、気づかないうちになる。1日2Lの水分補給を!
「人間は、1日に最大15Lの汗をかけることが分かっています。特に夏場は、みなさんが思っている以上に汗をかきやすい時期。失われた水分を補わなければ脱水状態になり、疲れやだるさを感じます」
喉が渇いたと感じたらすでに軽い脱水症。放っておくと突然めまいや頭痛、意識障害などを起こして救急車のお世話になることも。
「水は一日につき最低2Lは摂りたいところ。とはいえ、水を一気に大量に飲むと、体内の電解質のバランスが崩れて“水中毒”を起こすこともあります。喉が渇く前に、こまめに飲むことが大事。体温を下げすぎないためには、常温の水がおすすめです」
2、夏に気をつけるべきは、カラダの糖化。糖質の量を減らす。
暑さで食欲が落ち、つい喉越しのいい麺類ばかりを食べることがカラダの糖化を引き起こすことは、すでに述べた通り。
「糖質は直接エネルギーになる栄養素なので、カラダにとっては必須です。問題なのは食べすぎてしまうこと。1日の適正量は120g程度。1日3食なら1食40gくらいまでに糖質の量をコントロールしましょう」
40gの糖質を含む炭水化物の量は、ご飯なら茶碗3分の2杯、食パンなら5枚切り1枚程度。さらに同じ炭水化物でも、ゆっくり吸収される未精製の炭水化物がおすすめ。できる範囲で、白いパンより全粒粉パン、白いご飯より玄米や麦ご飯、雑穀米を選びたい。
3、鶏肉、魚、ウナギ。タンパク質で酸化を防ぐ。
炭水化物の量を控える代わりに、積極的に摂りたいのがタンパク質食材。夏場は紫外線などの刺激で活性酸素が増え、カラダが酸化しやすい。せっかくなら、より抗酸化作用のあるタンパク質食材を狙いたい。
「鶏むね肉には、カルノシンという強力な抗酸化作用のある天然成分が豊富に含まれています。渡り鳥が長時間飛び続けられるのはカルノシンのおかげです。カルノシンはマグロやウナギなどにも豊富に含まれます。また、鮭に含まれるアスタキサンチンという色素成分にも、ビタミンEの1000倍ともいわれる強力な抗酸化作用があります」
この夏はお肉と魚介類で抗酸化力を養おう。
4、基本は低温調理。お酢、レモンでAGEを抑える。
糖質とタンパク質が体内で結びついたAGEは細胞の働きを低下させ、体調不良や老化を引き起こす。タンパク質の調理法によってはAGEが増えることもあるという。
「揚げる、焼く、炒めるなどの高温調理ではAGEが増えやすく、生、茹でる、煮る、蒸すといった低温調理ではAGEが増えにくいと考えられています。ただし、酢やレモンに含まれるクエン酸にはAGEを抑える働きがあります。肉や魚を酢やレモンで下味をつけてから焼いたり、揚げた魚を南蛮漬けなどにすればAGEを減らすことができます」
クエン酸には疲労回復効果も期待できるので、夏場はお酢とレモンのフル活用を。
5、ファイトケミカルに注目。旬の夏野菜は食べれば食べるだけいい。
植物が、紫外線や害虫から身を守るために作り出す匂いや色素、それらの成分の総称を“ファイトケミカル”と呼ぶ。強い抗酸化作用があるファイトケミカルを含む野菜を食べれば食べるほど、カラダの酸化を防ぐことができるというわけ。
「夏野菜ならトマトに含まれるリコピン、カボチャのβ‐カロテン、ナスのアントシアニンなどが代表的なファイトケミカルです。抗酸化作用で知られる成分ですが、酸化だけでなく抗糖化の作用も期待できます」
栄養素を丸ごといただくなら生で、量をたくさん摂りたいなら加熱調理で汁ごと完食。臨機応変に夏野菜をモリモリ食べよう。
牧田善二先生 「AGE牧田クリニック」院長。糖尿病専門医。医学博士。糖尿病や肥満患者を延べ20万人以上診察。『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)など著書多数。www.ageclinic.com
※『anan』2023年8月2日号より。イラスト・小野寺光子 取材、文・石飛カノ
(by anan編集部)