下町、原宿、夜景まで…愛を描く、アメリカ制作のドラマ『モダンラブ』の東京版が完成

2022.10.23
NYタイムズ紙に掲載されたコラムを基にした、アメリカ制作のドラマ『モダンラブ』の東京版『モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~』が完成。全話のあらすじと、ショーランナーの平栁敦子さんが語る制作秘話を紹介。

監督たちとの共通認識は、東京をショーケースすること。

制作総指揮に当たる、ショーランナーと、エピソード1、6の監督を務めたのは、サンフランシスコを拠点に映画制作などを続け、活躍している平栁敦子さん。

「『モダンラブ』の東京版を作りたい、とお話をいただいたのは、ちょうどパンデミックが始まった頃。世界中の人々が、人との繋がりや愛を求めているのを肌で感じていたからこそ、チャレンジングで面白い企画だと感じて。すぐに『やりたい』とお返事しました」

6人の監督による全7話の、オムニバス形式の今作。まずは、基になるコラムを探すところから始まったという。

「セレクトの基準は、現代の日本の社会を垣間見ることができて、NYを舞台にしたコラムでも、東京のストーリーに展開しやすいこと。多様性も大事にしました。そして、日本といえばやっぱりアニメ。アニメを採用することは初めから決まっていたのですが、それを知った海外の人たちはみんな「So cool!』って言うぐらい、楽しみにしているようです。海外で日本のアニメの影響力は、本当にすごいんです」

各チームが、共通認識として持っていたのが、東京という土地をふんだんに使って、東京がまるで一人のキャラクターのように作品に共存すること。ドラマには、下町や名所の橋、原宿、東京の夜景などが登場する。また、カラフルな衣装に目を奪われる作品もあり、個性豊かなラインナップだ。

「完成作を見た時、監督たちの持ち味がうまく出ていて、どの作品も素晴らしいと思ったし、感慨深かったです。それぞれの監督のファンのみなさんも、きっと喜ぶのではないでしょうか」

たとえ文化や言語が違う国の物語でも、“愛”というフィルターを通せば、人類共通。愛はいつの時代も、国境を越えても、普遍的なもので「“愛は愛”ですから」、と平栁さん。

「映画の世界ではよく、日本の作品は海を越えるのが難しいと言われていますが、アメリカに住んでいると、日本の作品が見たいという声をたくさん聞きます。だからPrime Videoで世界に同時配信されて、さまざまな言語で字幕もつくとなれば、ハードルが下がって、より多くの人たちに見てもらえるのが嬉しい。日本はもちろん、世界の観客のみなさんの反応が楽しみです。そして、そこにまた、次に繋がる新たな発見があるような気がしています」

Episode 1「息子の授乳、そしていくつかの不満」
水川あさみ×前田敦子 ほか

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あるパートナーシップの形と母親の葛藤。
キャリアウーマンの真莉(水川あさみ)は、パートナーの彩(前田敦子)と子供を育てながら、仕事との両立に奮闘する日々。母乳での授乳が息子への愛情表現だと信じ、常に搾乳器を手放さない真莉。ある日、海外出張で子供を母親に預けることになり、真莉に小さな変化が表れる。「私の経験が組み込まれています。人間、葛藤の末にギブアップするとドアが開いたりするんですよね」(平栁敦子さん)。監督・脚本:平栁敦子

Episode 2「私が既婚者と寝て学んだこと」
榮倉奈々×柄本 佑 ほか

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元夫婦が探すこれからの愛。
大学教員の加奈(榮倉奈々)は、圭介(柄本佑)と離婚したばかり。マッチングアプリで出会った男性とその場限りの関係を結んでいたが、それは、セックスと愛の関係を知るためだった。男性たちの本音を聞きながら、自分の本心に向き合っていく加奈が出した答えとは。「アメリカでもよく話題になるセックスレス。それ自体ではなく、そこに導く何かの問題に共感できるのでは」(平栁さん)。監督:廣木隆一 脚本:黒沢久子

Episode 3「最悪のデートが最高になったわけ」
伊藤 蘭×石橋 凌 ほか

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時を超えたシニアの恋愛。
離婚して3年の大学講師の奈津子(伊藤蘭)は、恋とは無縁の毎日を過ごしていた。そんな時、友人から勧められたマッチングアプリで知り合った耕介(石橋凌)と、デートをすることに。徐々に意気投合していく二人だったが、過去の話になった時に、思いもよらない事実が発覚する。「全エピソードの中で、一番キュートでポジティブな物語。可愛くて滑稽で、好きです」(平栁さん)。監督:山下敦弘 脚本:龍居由佳里

Episode 4「冬眠中のボクの妻」
成田 凌×夏帆 ほか

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寄り添い続ける夫婦の在り方。
デザイナーとして働く麻衣(夏帆)は、職場での人間関係からうつ状態になってしまう。麻衣と結婚3年目になる健吾(成田凌)は、かつての笑顔を取り戻そうと、変わらぬ愛を注ぎ続けて、麻衣を支えていた。しばらくして、心に変化が表れ始める麻衣。そしてそんな二人がたどり着く未来とは…? 「監督も意識していた、カラフルでファッショナブルな衣装にも注目してください」(平栁さん)。監督・脚本:荻上直子

Episode 5「彼を信じていた十三日間」
永作博美×ユースケ・サンタマリア ほか

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真実を超えた愛。
独身を貫き、テレビディレクターとして働く桃子(永作博美)は、ある日、鈴木洋二(ユースケ・サンタマリア)という男と出会い、意気投合。以来、一緒に過ごす時間が増えていくにつれ、洋二は桃子の心の拠り所になっていく。しかし洋二には、桃子に隠している重大な秘密があった。「黒沢監督のファンには、たまらないエンディング。私もすごく好きです。みなさんの演技も素晴らしい!」(平栁さん)。監督・脚本:黒沢清

Episode 6「彼は私に最後のレッスンをとっておいた」
ナオミ・スコット×池松壮亮 ほか

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運命的な愛を信じた二人。
世界中の生徒に英語のオンラインレッスンをしているエマ(ナオミ・スコット)は、その中の一人、トウモロコシの研究をする日本人学生のマモル(池松壮亮)に心を揺さぶられ始めていた。そんなある日、マモルから「今日が僕の最後のレッスン」と告げられる…。「池松さんにとって、こんなにもストレートな愛の表現は挑戦だったのでは。“ブラッド・ピットになった池松壮亮”に注目(笑)」(平栁さん)。監督・脚本:平栁敦子

Episode 7「彼が奏でるふたりの調べ」
黒木 華×窪田正孝 ほか

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音楽により蘇る青春時代の恋心。
仕事でもプライベートでも行き詰まっていた珠美(声:黒木華)は、ある曲をふと耳にしたことで、15年前の記憶へと戻っていく。高校の体育館でピアノを弾く少年・凛(声:窪田正孝)とは、音楽を通じて仲良くなるが、ある日を境にその関係性は断たれてしまっていた。そんな凛が現在、ミュージシャンになっていることを知り…。「優しくて温かみのある二人の声が素敵です」(平栁さん)。監督:山田尚子 脚本:荻上直子

『モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~』
子育ての葛藤や、マッチングアプリでの出会い、セックスレス、シニアラブ、国境を超えた愛など。NYタイムズ紙の人気コラムに投稿された、一般読者の実体験をベースに独自に解釈。現代の東京における多種多様な日常の愛の形を描いた、オムニバスドラマ。映画界で活躍を続ける6人の監督たちが、それぞれの感性で作り上げた、実写6話、アニメーション1話の全7話で構成。10月21日(金)よりPrime Videoで全世界同時独占配信。
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ショーランナー・平栁敦子さん 映画監督。大学院修了作品の短編『Oh Lucy!』(’14年)が高く評価され、同作長編映画『オー・ルーシー!』(’17年)はカンヌ国際映画祭批評家週間に正式出品された。

※『anan』2022年10月22日号より。取材、文・若山あや 構成・野尻和代

(by anan編集部)