岡宮来夢、2.5次元舞台の魅力は「キャラクターが生きているように実感できること」

2022.4.5
このたび「2.5Dアワード」4部門の受賞が発表された。これは日本2.5次元ミュージカル協会のメルマガに登録した、20万人を超える一般のファン「2.5フレンズ」の投票によるもの。コロナ禍を乗り越え、感動をもたらした受賞作&受賞者を発表! そして俳優部門受賞・岡宮来夢さんに話を聞いた。

作品部門:ミュージカル『刀剣乱舞』~静かの海のパライソ~

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いまや2.5次元人気を牽引する存在となったミュージカル『刀剣乱舞』。大人気ゲーム「刀剣乱舞‐ONLINE‐」を原案としたシリーズ作品で、今作は日本の歴史上最大規模の一揆といわれる島原の乱が題材。歴史を知る者なら誰しも涙せずにはいられない重厚な物語が話題に。ミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~ ©ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

俳優部門:岡宮来夢

’19年の「葵咲本紀」より、鶴丸国永役としてミュージカル『刀剣乱舞』シリーズに参加。目を引く存在感と確かな歌唱力で注目され、’21年にはブロードウェイ作品・ミュージカル『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』に出演。2.5次元界にとどまらず高い評価を受けている。

脚本家部門:伊藤栄之進

ミュージカル『刀剣乱舞』の立ち上げから、御笠ノ忠次名義で脚本を担当するほか、’19年の舞台『幽☆遊☆白書』では脚本・演出を手がけるなど幅広く活躍。’20年にはコロナ禍で舞台の公演中止が相次ぐなか、いち早く本多劇場での配信公演を企画するなど演劇界にも貢献。

演出家部門:茅野イサム

立ち上げからミュージカル『刀剣乱舞』に携わり、現在に至る人気演目に育て上げた立役者のひとり。’03年より2.5次元作品に携わり、キャラクターの心情に寄り添った深みのある芝居演出や、音楽やダンスを取り入れるなどエンターテインメント性の高い舞台に定評がある。

キャラクターが僕のフィルターを通すことでより魅力的になれば。

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――2.5Dアワード俳優部門受賞おめでとうございます。受賞を聞いたときの心境を伺えますか。 

岡宮来夢さん(以下、岡宮):本当にびっくりしました。でも、「静かの海のパライソ」が作品部門を受賞していますし、やっぱり茅野(イサム)さんをはじめ、いろんな方に助けてもらって獲れた賞だなと思うんです。少しでも皆さんの心に届いた作品があるということ、そしてファンの皆さんに、やってきたことを形として残せたことが嬉しいです。

――「静かの海のパライソ」は’20年に一度幕が開きながらも数日でコロナ禍により中止となり、昨年あらためて上演されました。どんな気持ちで臨まれましたか。

岡宮:正直、最初の公演では、そのときの自分が出せる100点は出したけれど、自分の思い描くレベルに自分の実力が足りてないのを感じていて。だから昨年秋にやらせていただくことが決まってから、この1年半の間に培ったものをどれだけ注いで、どれだけ作品に深みを出せるかを課題にして臨んだつもりです。全公演走り抜けられたこと、そして前回の自分を越えられたという思いで終われたことが嬉しいですし、こうして観てくださった方から評価をいただけたこともありがたいなと。

―― 一昨年に自身に足りないと感じたのはどんなことですか。

岡宮:一番は貫禄ですね。鶴丸国永を演じるにあたって居方や言葉に説得力を持たせたいと思っていたけれど、どこかまだフワフワしてたような気がします。でも昨年、稽古が始まったら、共演の笹森裕貴くんに稽古場の居方が以前と違って、なんか大きくなったと言われて。自分では意識していなかったけれど、その間にやってきた一個一個の仕事がちゃんと積み重なっているのかなぁって思ったんです。

――その1年半にさまざまな作品に出演していますが、学んだことのなかで印象に残るものは? 

岡宮:ミュージカル『王家の紋章』の主演の浦井(健治)さんです。これまで僕も座長をさせていただいた作品はありましたが、そもそも座長ってどういうものかよくわかってなかったなと思ったんです。以前の僕は、ただ自分が引っ張らなきゃ、引っ張ってくぞって思うばかり。でも浦井さんの座長は、引っ張るという感じじゃなく、共演者にそっと寄り添う感じが素敵で。帝国劇場の稽古場って独特の雰囲気があって、慣れない僕はどう居ていいかわからずソワソワしていたんです。でも浦井さんから隣の席に来て話しかけてくださる。そういう浦井さんを見てからは、誰よりもがき苦しんで、でも明るく振る舞うことを大事にしようと、そこから意識が変わりました。

――ミュージカル界の第一線で活躍されている方がたから新しい刺激を受けることは多いでしょうね。

岡宮:本当にすごいと思うことばかりでしたけれど、とくに歌に関しては学ぶことが多かったです。たとえば、息の吸い方とか吐き方、歌声に対してどれくらい息を混ぜるかみたいな専門的なことも教えてくださるんです。それは花村想太くんに教えていただいたんですが、想太くんほどのレベルのアーティストでも毎日勉強だって言うんですよね。楽曲によって伝えたいことが違うから、歌もアプローチの仕方を変える必要があって、そのためにはそれだけの表現力やスキルが必要で…。そういう一流の方がたの姿を毎日間近で拝見できる、こんな貴重な経験はなかったです。

――昨年から今年にかけて前後編で上演した舞台『BANANA FISH』The Stageの奥村英二役も好評でしたよね。

岡宮:演出の松崎(史也)さんのお考えもあるんですが、2.5次元舞台の魅力って、キャラクターが現実に飛び出してきたというだけじゃなく、そこにちゃんと生きていると実感として感じられるところじゃないかと思うんです。やっぱりそこは“演劇”で、演じる側が作品を通して感じたことを体現しているからこそ届くというか。あと、『BANANA FISH』に関しては、アッシュ・リンクス役を(水江)建太が演じたことも大きかったと思います。お互い下積み時代からずっと仲が良くて、そういう関係性があったからこそアッシュと英二の関係性がよりリアルなものとして伝わったのかなと。建太がアッシュとしてしっかり居てくれたから、ときに楽しみながらあの世界を体験できたと思うので感謝でいっぱいです。

――アッシュにとって英二は癒しの存在ですが、普段のおふたりの関係性はどんな感じ?

岡宮:あの公演では建太がとにかく出ずっぱりで大変でしたから、なるべく楽屋で癒しの存在でいようと、暗くならないようにしていました。普段はふたりで何でもない話で盛り上がったり、コロナ前はカラオケにふたりで行くことも多くて、ハモったりしていました(笑)。

――岡宮さんが2.5次元作品を演じられるときに心掛けていることがあれば、教えてください。 

岡宮:キャラクターを自分が演じる意味みたいなものは、この仕事を始めた最初の頃から考えていたことです。それは、鶴丸国永役に決まったとき、僕よりもっとうまい人がいたのになんで自分が選ばれたんだろうって思ったことにも通じているんですけれど…。ミュージカル『刀剣乱舞』五周年記念 壽乱舞音曲祭で太田基裕さんの演じる千子村正を見たときに、2.5次元作品で自分が目指すべきはここなのかなと思ったんです。それまではキャラクターにどうなりきるかを考えていたけれど、演じる人の人間性とポテンシャルが役と合致すれば、より役が魅力的になるんですよね。太田さんの千子村正役がまさにそうで、2.5次元の神髄はこれなのかなと。

――あらためて、2.5次元舞台の魅力はなんだと思いますか?

岡宮:原作で魅力的に描かれていたキャラクターが、演者を通して目の前に登場することで、生きているように実感できることだと思います。キャラクターが悩んだり、それを乗り越えていく姿や心情が、生身の人が演じることでリアルに伝わって感動する。そこが魅力だと思います。だからこそ、僕のフィルターを通すことでより魅力的に見えたり楽しんでもらえる役作りをしていきたいですよね。

――この先の目標、やってみたい役や作品を教えてください。

岡宮:ミュージカル『王家の紋章』で立たせていただいた帝国劇場の舞台にまた立たせていただけたらなと。そしていつかは0番(センター)に立ちたいと思っています。ここからは夢を目標に変えて頑張っていきたいし、こういう賞をいただいたからには、2.5次元舞台を引っ張っていける存在になれるように頑張りたいです。

おかみや・くるむ 1998年4月23 日生まれ、長野県出身。’19年よりミュージカル『刀剣乱舞』に鶴丸国永役で参加。高い歌唱力に定評があり、ミュージカル『王家の紋章』などに出演。5月のミュージカル『刀剣乱舞』~真剣乱舞祭 2022~、夏の同ミュージカル『鶴丸国永 大倶利伽羅 双騎出陣』が控える。

ジャケット¥69,300 パンツ ¥42,900(共にETHOSENS/ETHOSENS of white sauce TEL:03・6809・0470)

※『anan』2022年4月6日号より。写真・三宮幹史(TRIVAL) スタイリスト・ホカリキュウ ヘア&メイク・AKi 取材、文・望月リサ

(by anan編集部)