ケガも不運もここまで来れば愛嬌!? 愛され度高めの高校生男子の恋。
「以前から、可愛い中に少し陰のある人物を描くのが好きで…。そんな絵を描きたいなと生まれたのが、毎日傷だらけの矢野くんです。吉田さんは、実は初期段階では心配性でも委員長でもしっかり者でもなくて、本当に普通の女子という設定でした。ところがそれだとなかなか話が広がらなかったんですね」
かくて田村さんは、担当編集者と相談しながら彼らの関係性を改めて模索。“ケガだらけ男子と心配性女子”のアイデアにたどり着いた。毎回、矢野くんがドジを踏むシーンが描かれるが、そのバラエティぶりが面白く、愛らしいのなんの。
「基本的に自分の高校時代の思い出を引っ張り出して、『矢野くんたちがあんなことをやったらどうなるかな』と想像を膨らませています。自分で経験したり見聞きしてきたケガやドジをそのまま描くこともありますし、『ここで手が滑ったらこうなるかも…』などと考えて展開するときもあります。また、表紙等でカラーイラストを描くときに、顔に貼られた絆創膏をカラフルに塗るのが、とても楽しいですね」
影響を受けたマンガに、増田こうすけ氏の『ギャグマンガ日和』や、和山やま氏の『女の園の星』などを挙げる田村さん。本作もまた読んでいて温かい気持ちになるが、それは矢野くんの笑顔や吉田さんの照れる顔など、キャラたちの優しく豊かな表情の賜物だ。
「もともと絵を描くのが好きなので、作画については日々模索しています。描いている自分も思わず感情移入してしまうような表情を描くように心がけています。その意気込みが読者の方にも伝わっているのか、表情を褒めていただくことが多いのは、うれしいですね」
2巻では、吉田さんに恋をする同じクラス委員の羽柴くんが大活躍。相性よさげに感じさせる場面もあり、波乱の予感が渦巻く。
「けれど、毎回『全員、楽しくて幸せな高校生活を送ってくれ…』と祈りながら描いてはいるんです」
田村結衣『矢野くんの普通の日々』2 ファミレスで一緒に勉強したり、カラオケに行ったり。「普通の高校生活を送りたい」という矢野くんのために、吉田さんをはじめクラスメイトも全力サポート。講談社 726円 ©田村結衣/講談社
たむら・ゆい 1998年生まれ、北海道出身。2020年イラストレーターとして活動を始める。同年、モーニング月例賞 佳作賞を受賞。’21年6月より連載開始。
※『anan』2022年3月23日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)