のちに大きく評価されるようになるかも? 菅内閣をふり返る

2021.10.29
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「菅内閣ふり返り」です。
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10月4日に菅内閣が総辞職しました。昨年9月に発足し、約1年という短い任期でした。菅内閣の一番の功績はデジタル庁を立ち上げたことでしょう。日本のデジタル化の遅れは、コロナやオリパラ対応でも明らかでした。各省庁によってITの仕組みもバラバラだったものが、一元化し管理できるようになったのは大きな前進でした。

ほかには、少子化対策として不妊治療の保険適用範囲を拡大し、孤独・孤立対策にも力を入れました。環境問題では、2030年までに温室効果ガスを2013年に比べて46%削減することを目標に掲げました。地球全体の気温上昇を1.5°C以内に抑えるには60%台の削減が望ましいという声も上がりましたが、経済界の不安を払拭し、46%という高い望みを掲げたのは功績と言っていいのではないでしょうか。

そのほか、携帯電話料金の値下げを実現させたことに喜ぶ声は多くありました。コロナ対策には不満がある一方、この難局は誰が総理でも同じような結果になったのではないかと思います。

安全保障でいえば、安倍政権下では歴史認識や領土問題において、中国や韓国との軋轢が負のテーマとして根深くありました。その点、菅内閣はイデオロギー色の薄い政権だったため、対外的に大きな摩擦がなかったというのは大きな成果だったのかもしれません。トランプ政権からバイデン政権に代わっても、アメリカから不利益なことを要求されることはありませんでした。

ただ、総理自身の言葉で語られることがほとんどなく、何を考えているのかわからない政権ということになってしまったことは非常に残念でした。それにより、国民の政府不信も募っていきました。

安倍政権は新自由主義で、アメリカ寄りの外交を進めて、歴史認識は戦前回帰な傾向にありました。もしも今後、中国やロシア、北朝鮮、アメリカなどとの外交において、国際協調の橋渡し的な役割を日本がうまく担えるようになったなら、安倍政権からゆるやかにシフトチェンジした政権として、菅内閣はのちに大きく評価されるようになるのかもしれません。新内閣の今後の展開を注視しましょう。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2021年11月3日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)