子どもの頃からカルチャーと身近に接し、引き出しが豊富。
「Z世代はネットを介して多様なカルチャーに気軽にアクセスするのが当たり前。文芸の世界では、血肉化してきたカルチャーを全部盛りにした“現代エンタメ”の機運が高まっています。たとえば波木銅(なみきどう)さんの『万事快調(オール・グリーンズ)』は、ヒロイン3人に音楽(ラップ)・映画・文学への愛と知識を振り分けた青春群像劇。出来上がった作品も音楽的で映画的で、なおかつきっちり文学的なんです」(ライター・吉田大助さん)
また、YouTuberの中からユニークな書き手も現れているという。
「YouTuberの動画は基本的にドキュメンタリーですが、『kouichitv』のコウイチさんはフィクション=短編コメディ動画をアップしている。初の著書『最悪な一日』でもショートショート=超短編小説を執筆。面白かったです」(吉田さん)
見た目だけでの勝負は卒業。専門知識を自分の強みに変える。
SNSは、いまどき男子にとっても大事な自己アピールのツール。なかでも、時代の流れを敏感に読み取るインフルエンサーたちは、次なるフェーズへ。
「インフルエンサーは拡散力の高い人気者という立ち位置ですが、それよりも専門性の高い『KOL』という概念がいま広がっています。これはキーオピニオンリーダーの略で、たとえば美容男子の中でも、見た目を磨くだけではなく、美容の情報や知識を発信する人のこと。美容男子のKevinさんは、TikTokで自分がいいと思ったコスメを紹介。メイクの過程などを公開しています。とくに男性の場合、自分の個性を強みに変えようとする傾向が強いんです」(N.D.Promotion代表取締役・金丸雄一さん)
ルールや規則に縛られず、のびのびと才能を発揮。
いまどきは、10代で起業をするなど、一般的な進路にとらわれず、早いうちからチャレンジをする男性も出てきているが、それはスポーツ界に顕著。
「学生時代のスポーツは部活を基本とした“スポ根”的な練習になりがちなので、トップアスリートはそこからの脱却を図る意味でも、型にはまらない進路を選択する傾向に。近年多いのは、通信制の高校を選ぶケース。日本の高校に籍を置きながらも海外に拠点を移すなど、より競技に集中し、自分の能力を伸ばすため。卓球の水谷隼選手は、その一人です」(スポーツライター・小林信也さん)
勝ち負けにこだわるよりも、自己表現を追求する。
東京2020オリンピックのスケートボードが象徴的だったように、勝ち負けではなく、自分が納得できるかどうかに重きを置くのも、いまどき男子らしい。
「こうした精神は、もともとエクストリームスポーツ全般にあるものですが、いまの時流と合ったため、まぶしく映ったのでしょう。スケートボードで金メダルを取った堀米雄斗選手はもちろん、“ゴン攻め”などの解説で話題となった瀬尻稜選手は、より自己表現に重きを置いているタイプです。オリンピックで金メダルを期待される実力がありながらも、スケボーを純粋に楽しみたいからと出場を辞退。さらに、もはやスケートボードのコンテストにも意識が向いておらず、彼の一番のプライオリティは、いいライディングをSNSにアップすること。ランキングより、SNSのアクセス数のほうを重視しているんです」(小林さん)
吉田大助さん ライター。弊誌をはじめ、小説誌やカルチャー誌などで、文芸作品の書評や作家インタビューを行う。紙媒体14 誌+αの書評情報をTwitter(@readabookreview)で発信中。
金丸雄一さん N.D.Promotion代表取締役。Z世代を対象としたシンクタンク組織「Z 総研」発足やZ世代をターゲットとしたプランニング、インフルエンサーのキャスティングなどを行う。
小林信也さん スポーツライター。雑誌、ウェブなどにて執筆中。著書に『大谷翔平「二刀流」の軌跡―リトル・リーグ時代に才能を見出した指導者と野球愛風土』(マガジンランド)など。
※『anan』2021年11月3日号より。イラスト・WALNUT 取材、文・保手濱奈美
(by anan編集部)