市川実日子、星野源らと動物園でユーミン熱唱!? 映画『罪の声』撮影裏話

エンタメ
2020.11.02
人に流されず、自分をしっかり持っている、そんな役柄を多く演じている、女優の市川実日子さん。ミステリアスな雰囲気がある凛々しい表情の下には、どんな素顔が隠れているのでしょう…?

夕焼けの動物園で、3人で荒井由実を熱唱した?!

ichikawa mikako

――新作の映画『罪の声』では、幼い娘を持つお母さんであり、思い悩む夫を見守る、そんな女性の役を演じていらっしゃいました。

撮影は去年の春、1年半くらい前だったんですが、私の娘を演じた子役の朝日湖子ちゃんが、とてもかわいらしい子で! しかもすぐに仲良くなってくれて…。現場では、星野源さんが演じる旦那さんと3人で、とにかく良い家族になれるようにと思っていたのを覚えています。

――京都で撮影されたと伺っていますが、何か印象に残った出来事はありましたか?

ん~…、あの、すごく覚えていることが1つありまして。動物園での撮影で、撮影場所の移動をするとき、土井(裕泰)監督と、荒井由実さんの歌をずーっと歌ってたんです、夕日の時間。そしたらそこに星野さんも加わってきて、なぜか3人で、動物園で荒井由実さんを熱唱するっていう(笑)。あれはいい時間で、とても楽しかった。なかなかないです、現場で監督と一緒に歌を歌うなんて。

――未解決事件がテーマの、重めの作品と聞いていますが…(笑)。

そう、基本重いです。現場の雰囲気もなかなか重かった(笑)。でも動物園のシーンはその中でも比較的楽しい要素があったので、みなさん、一服の清涼剤的な気持ちもあったのかもしれません。

――演じられた曽根亜美という人には、どうアプローチを?

台本をいただいて、読んで、私なりに役柄のことを想像していくのですが、同じ台本でも、人それぞれ受け取り方って違いますよね。監督が思った曽根亜美、旦那さん役の星野源さんが思った曽根亜美がある。なので、最終的には現場でもらうヒントがすごく重要だと思っています。相手役の星野さんの目に浮かんでいるものや、子役の子の甘え方、監督の言葉など…。そういったものを受け取って、少しずつ役を掴んでいく感じでした。たぶん同じ脚本でも、相手役の方が別の俳優さんだったら、あるいは撮影の日の天候が違ったら、また別の像が生まれる。その感じが、私にとってはすごくおもしろいし、人とものづくりをする醍醐味は、まさにそういうことなのでは、と思います。

――脚本を手がけられたのが、野木亜紀子さん。以前ドラマ『アンナチュラル』で、野木作品に出演されていますね。

そのあと、『コタキ兄弟と四苦八苦』というドラマにも出させていただいているので、野木さんの作品は3作目なんです。

――野木さんは今最も注目されている脚本家の一人ですが、演じる側から、野木脚本の魅力とは?

今回の映画の冒頭で、小栗旬さんが演じる新聞記者のセリフで、「犯人グループは一円も手にしていない。まして、誰かが死んだわけでもない。今さら掘り返す価値あります?」というものがあって。しかし、その事件のせいで、人生を狂わされた人がいたり、被害にあった人がいる、それを描いているのがこの映画です。きっと現実にも、一見何も起こっていないように見える事件でも、影響を受けたり、トラウマを抱えてしまった人がたくさんいて、世の中にはそういった“声になっていない人の声”が実は溢れている。私が出ていない作品も含めてですが、野木さんの脚本は、その声を決してないがしろにしない、誰のことも犠牲にしない印象があります。ドラマや映画は時間に限りがあるから、どうしても描けないもの、置いていかれてしまうものがありますが、野木さんが描きたいのは、むしろそういうところなのかな、とも…。昨日、「明日取材だ、何を話そう…」と考えていたとき、ふと、春先の自粛期間に『コタキ兄弟~』を観て、作品の素晴らしさに感動したときのことを思い出し、他の作品のことも含めていろいろ考えていたんですが、野木さんの大切にされていることが少し見えたような気がしました。

SNSはやらないけれど、“お茶日記”をつけてます。

――市川さんは、SNSとか一切やってらっしゃらないですよね?

そうですね。そこで何を言っていいのかわからないというか…(笑)。あ、でも、一度、野木さんのツイッターのボタンを押させていただいたことがあります。記者発表か何かでご一緒したときに、スマホをポチポチやってらして、「みんなの写真をツイッターにアップする」と。これを押すと世界に配信されるのか、と思ったら、なんかすごいボタンだな、と…。だって世界につながってるわけじゃないですか。不思議な気持ちになりながら、投稿のボタンをポチッと押させてもらいました。

――では日々、何か書いたりなどはされていないのですか?

あ、“お茶日記”つけてます。私、昔から中国茶が好きで飲んでいまして、いつ、何のお茶を飲んだかだけは書いてますね。情報の羅列。最初はノートにまとめてたんですが、ここ数年、現場の予定表みたいな紙の裏に書くようになっていて、それも含めてなんかおもしろくて。『アンナチュラル』の香盤表のうらに、“何月何日何時、阿里山茶”、みたいな。しまいにはパッケージを貼ったりして、さらに最近は仕事で体温を測るので、それも一緒にメモしたりして、「なんなんだろう、これ」って思いながらやってます(笑)。

いちかわ・みかこ 1978年6月13日生まれ、東京都出身。’94年、雑誌『オリーブ』の専属モデルとしてデビューし、’00年、長編映画で女優デビュー。代表作にドラマ『すいか』(’03)、『アンナチュラル』(’18)、『凪のお暇』(’19)。映画では『めがね』(’07)、『シン・ゴジラ』(’16)、『よこがお』(’19)など。現在ドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)に出演中。ジャケット¥310,000 セーター¥130,000 ブラウス¥115,000 デニムパンツ¥72,000 ブーツ¥175,000(以上セリーヌ バイ エディ・スリマン/セリーヌジャパン TEL:03・5414・1401) ピアスはスタイリスト私物

『罪の声』 35年前に起きた食品会社を標的とした脅迫事件。未解決のこの事件を、新聞記者・阿久津英士(小栗旬)は追いかけていた。一方テーラーを営む曽根俊也(星野源)は、家族3人で幸せに暮らしていたが、ある日、父の遺品の中に自分の声が入ったテープを見つけ、知らぬ間に事件に関わっていたことを知る。10月30日公開。

※『anan』2020年11月4日号より。写真・東 京佑 スタイリスト・谷崎 彩 ヘア&メイク・草場妙子 

(by anan編集部)

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