元祖お騒がせセレブ作家の半生を知って!
フランスで初めて国葬にされた女性と聞くと、お堅い女性作家像を想像する? でもコレットは、我々の予想を軽やかに超えた女性でした。キーラ・ナイトレイがヒロインを演じる映画『コレット』は、片田舎で生まれ育った少女が己の本質に気づき、自由奔放な作家コレットになるまでの物語です。
時代が移り変わろうとしている19世紀末、シドニー=ガブリエル・コレットは、父の友人ウィリーと結婚。14歳年上の彼は名門出身のジャーナリスト兼作家で、コレットは夫の勧めで筆をとります。ただしウィリーにはたいした文才はなく、大衆受けするプロットを思いついては無名作家たちに文章を書かせ、それを編集・加筆して自身の名で発表していただけ。コレットが書いた学生時代の思い出話に加筆した「クロディーヌ」シリーズはバカ受けし、レズビアンめいた女子学生は社会現象に!?
ここでプロデュース能力を発揮したウィリーが「クロディーヌ」ブランドで金儲けをし、素敵カップルはデカダンなサロンでも注目を集めます。とはいえ女性の権利などないに等しい時代なので、コレットはウィリーのゴーストライターに甘んじなければなりません。でも不満を発散し、自己を解放する方法を見つけるのがコレット流。芸術家たちとの交流でアートに開眼し、バレエやパントマイムを習い始めた彼女は、女優として舞台活動をスタート。浮気性で金銭面にルーズな夫をよそに貴族女性ミッシーとの恋愛を楽しんだり、男装にトライしたり、舞台上で女性とキスして暴動寸前になったり。
元祖お騒がせセレブの名に恥じない奔放ぶりで世間を騒がせたコレットですが、ジェンダーを超えて自由奔放に生きる姿の進歩的なこと! LGBTQという言葉ができるよりもはるか以前に“ありのままの自分”でいることを決意し、男性優位の社会で自由闊達に生き抜いたのです。まさにフェミニズムの先駆者といえるコレットの生き方が現代の私たちをインスパイアしてくれます。
主演のキーラが聡明な眼差しと勝ち気そうな言動で不屈のコレットを熱演。両親に隠れて納屋でウィリーと密会する冒頭で感じさせる反骨心は物語が進むにつれ強まり、燃え上がっていくことに。今回はしかもウィリーを演じたドミニク・ウェストとの相性が抜群で、愛憎入り交じる複雑な感情が手に取るように伝わってきます。憎みきれないロクデナシに息を吹き込んだドミニクの好演も光るし、キーラとコスチューム劇の相性が抜群なのも再確認できるはず。
衣装デザイナーのアンドレア・フレッシュが再現したベル・エポック時代の華麗な衣装はため息が出るほど。東京ガールズコレクションのように、気に入ったドレスをすぐにスマホで買えないのが残念? なんてことはさておき、100年以上も前にダイバーシティを体現していた女性がいたことは知っておいても損はないはずです。
監督・脚本/ウォッシュ・ウェストモアランド 脚本/リチャード・グラッツァー 出演/キーラ・ナイトレイ、ドミニク・ウェスト、デニース・ゴフほか 5月17日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開。©2017 Colette Film Holdings Ltd / The British Film Institute. All rights reserved.
※『anan』2019年5月22日号より。文・山縣みどり
(by anan編集部)
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