あの頃のドキドキが蘇る! 竹宮惠子の巡回展

2019.3.4
1976年、「週刊少女コミック」で連載がスタートするやいなや、賛否両論の嵐を巻き起こした「風と木の詩(うた)」。なぜならそこには、フランスの寄宿学校を舞台に少年たちの同性愛、近親相姦、虐待といったタブーをテーマにしたドラマが繰り広げられていたから。
アート

発売日が待ち遠しかったあの頃へ、タイムスリップ。

“BLの祖”とされ、少女マンガ界に革命をもたらした竹宮惠子の画業50周年を記念する巡回展が開催中。「風と木の詩」をはじめ「地(テラ)球へ…」「天馬の血族」など、代表作の貴重な直筆原稿を含む作品150点余りが一堂に会する。 注目は初公開のクロッキーノート。ここに「風と木の詩」の連載を遡ること5年前、冒頭50ページがすでに完璧な形で描き上げられていたというから驚きだ。会場では実際の原稿と対比して展示する試みも。迷いのないタッチに若き日の漫画家の息遣いが感じられそう。そのほかスケッチなどの展示も。制作の裏側を想像しながら鑑賞するのも興味深い。

もう一つの見どころは「大泉サロン」の再現。かつて竹宮惠子と萩尾望都という2人の天才漫画家が共に暮らした練馬区大泉の長屋。ここに同世代の漫画家、ファンらが集い交流する中で、いくつもの少女マンガの新潮流が生まれたそう。ひたすらペンを動かし、仲間と喧々諤々の論争を交わした青春の日々はまさしく原点なのかも。“サロン”といいながらも、6畳一間の昭和の風情もポイントだ。

少女マンガといえば、星が輝く瞳の女の子がヒロインで、恋愛ものやスポ根ものがメインストリームだった時代。SF、冒険譚、ファンタジーなど、幅広い作品世界が生まれるようになったのも竹宮惠子以降のこと。連載当時、劇作家の寺山修司は《これからのコミックは、たぶん「風と木の詩」以後という呼び方で、かわってゆくことだろう》と評したというけれど、後の展開はまさに予言通り。本展ではその豊穣な作品世界に浸る贅沢な時間が楽しめる。

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©竹宮惠子 『風と木の詩』より ジルベール

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©竹宮惠子 『地球へ…』より「星の生まれるところ」

「画業50周年記念展 竹宮惠子カレイドスコープ 50th Anniversary」 川崎市市民ミュージアム 神奈川県川崎市中原区等々力1-2(等々力緑地内) 3月2日(土)~4月14日(日) 9時30分~17時(入場は閉館の30分前まで) 月曜・3/22休 一般800円 TEL:044・754・4500 ◆トークショー:3月9日(土)14時~ ※HPより要申し込み(3/1まで)。◆サイン会:3月9日(土)15時30分~ ※当日図録を購入した先着100名対象。 ◆劇場版アニメーション『地球へ…』上映会:3月10日(日)(1)11時~ (2)14時~ ※一般600円。定員270名、当日先着順。http://www.kawasaki-museum.jp

※『anan』2019年3月6日号より。文・松本あかね

(by anan編集部)

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