「寒い」と感じた瞬間、カラダで起こっていることとは? “体温とカラダの仕組み”を解説

ウェルネス
2024.12.04

気温が下がると、体は“普段の体温”を保つためバタバタと動き出す…。なぜその必要があるのか、それがどんな影響をもたらすのかを解き明かします。

冷えると良くないのはなぜ? 体温とカラダの仕組み。

暑ければ汗をかいて体温を下げ、寒ければ筋肉を震わせて温める。私たちの意思とは関係なく、体は体温調節を行っている。

「体内を常に一定の範囲内の温度にするために、私たちの体は休みなく働いています。特に中心の温度である『コア温』は、心臓をはじめとする重要な臓器を温め守る最後の砦。コア温に個人差はほぼなく、みな37°C前後に保たれています。なぜ37°C前後かというと、それが人間の生命活動に欠かせない“酵素”がよく働いてくれる適温だから。私たちの体はそもそも酵素の集まりです。酵素があることで、食べ物などが分解、必要なエネルギーが合成されやすくなり、それが体のあらゆる機能・活動を支えています。適温が保たれないと酵素が働かず、例えば脳の酵素であれば頭がぼーっとするなど、体の不具合に繋がってしまう可能性が。コア温が34°Cまで下がると、生命の危機レベルです」(早稲田大学人間科学学術院教授・永島計さん)

コア温を保つことが重要だとはいえ、いくら周りの環境が寒くても、体温がそこまで下がることはなさそうだけど…。

「確かに人間の体は大きいので、すぐにコア温が下がることはないでしょう。でも逆に言うと、寒いのを放っておいたら、再び体を温めるのにすごく時間がかかってしまうということ。熱を作るために使うエネルギーも大きくなります。加えて、自律神経への負荷も心配です。心臓を動かす、呼吸をするといったことの他に、体温の調節も自律神経が担っていますが、体温調節は自律神経にとっては比較的“余計な仕事”。すぐ解決できればいいですが、寒さを感じるような状態が長時間続く、あるいは何度も繰り返されると、血管を収縮させて熱を逃がさないようにしようと自律神経が働きっぱなしの状態に。それが重なれば自律神経はへとへとに疲れてしまい、体にも悪影響を及ぼします」(永島さん)

さらに、温かいお風呂が時間とともに冷めていくように、体は常に外に向けて熱を放出しているということも知っておきたい。

「主に皮膚と呼吸から熱を放出しています。吸った空気は体温と同じくらいの温度になって外へ出ていきますから、夏よりも冬の冷たい空気の方が奪われる熱は大きくなりますね。じっとしていてもどんどん熱が放出されていくので、体温を保つために体は絶えず熱を作り、熱を補給しなければいけません。そのためには、熱を作る場所となる筋肉が十分にあり、熱やエネルギーの材料になる食事をきちんと摂ることが必須。また、衣服やエアコンを利用した環境の調整など、必要以上に熱が出ていかないようにする工夫もカギになります。“温活”の目的はつまり、体内で作られる熱と外へ出ていく熱の量のバランスをとること。それが、心地よい体温と健やかな体の維持に繋がるのです」(永島さん)

体温の役割とは?

1、カラダの変化を知らせる
感染症時の発熱など、体温の変化は体内の異変を反映する場合がある。しかし、体温そのものの許容範囲は狭めで、34°C以下で低体温症、42°C以上で細胞が変性してしまう。

2、生命活動を支える
体温が適切に保たれることで、体内のあらゆる活動・機能に関わる酵素がきちんと働くように。この酵素は食べ物を分解し、エネルギーを合成するためにも欠かせない。

体温とカラダの仕組み

1、カラダを覆い守る、熱のシールド

実は2層になっている体温。内から外に向けて緩やかに低くなり、放熱されていく。

【1】シェル温
手や腕、脚など、臓器から遠く体表に近い温度。皮膚の温度も含まれる。個人差、部位ごとによる温度差が大きい。

【2】コア温
体の中心の温度。心臓近辺だけでなく、脳から腸までの重要な臓器をカバーし、いつも37°C前後に保たれている。

【3】放熱ポイント
首、手足、耳など、熱が外に出やすい部分。熱の影響をより受けるため、温めたり冷やしたりした時に快適感が出る。

2、さむっっ!! その時、カラダで何が起こってる?

寒いぞと感じた瞬間、全身で起こる素早い連携はこちら。でもそれを繰り返すと…。

【LEVEL 1】
・皮膚センサーが“寒さ”を察知!
・“痛み”レベルのストレスが自律神経へ。

「寒くね?」とまずザワつくのは皮膚。「シェル温」の最前線で外気と直接接しているため、環境が体に与えうる影響をいち早くモニターするのは皮膚の役目。冷たい空気に触れて皮膚の温度が下がると体内と外の温度差のため、体表、呼吸から放出され続ける熱の量が多くなってしまう。すると、体内で作る熱と放出される熱のバランスが崩れ、ついには体温が下がってしまう…という事態を避けるため、体は「寒い」という感覚をストレスに変換。すぐさま自律神経に伝達する。この「寒い」というストレスは、なんと体にとって「痛み」と同レベル(!)に不快なもの。ストレスがかかり、“適温を保ってきた体内の平和を乱すものは何だろうと許さないマン”の自律神経が、体温の低下を防ごうと動き出す。

【LEVEL 2】
・自律神経がフル稼働。血管を収縮させる。
・血液量減少・皮膚の温度が低下、熱が逃げていくのを抑える。

緊急モードに入った自律神経が働きかけるのは、全身に張り巡らされた血管。なぜ血管かというと、体内で作られた熱は血液に乗って全身を駆け巡り体を温めているから。体を巡る血液量を減らせば、おのずと運ばれる熱の量も減り、体内に熱を閉じ込めておけるということ。自律神経が血管を収縮させる命令を出すと、全身を流れる血液量が減少し、次第に皮膚の温度が下がっていく。すると感じるようになるのは、手先や足先などの末端の冷え。特に筋肉量が少ない女性や脂肪が多めの人は、もともと熱を生み出す量も少ないため、血液量が減るとより冷えを感じやすい。けれど、体にとっては中心部の体温をキープするのが最優先。末端がいくら冷えようとも、皮膚から熱が逃げていくのを抑えようとする。

【LEVEL 3】
・寒い状態が続くと、エネルギー消費が激しくなる。
・カラダが疲労、様々な影響が出る。

血管を収縮、皮膚からの放熱を抑えても体温が下がってしまう場合、体は2つの方法で熱を生み出そうとする。一つは筋肉を震わせて熱を作る方法。もう一つは皮下脂肪などのエネルギー源を消費して、熱に変える方法。どちらも自律神経が働き、指令を出す。それで体温の低下が止まればいいけれど、「寒い」というストレスが解消されない限り、自律神経は指令を出し続けることに…。呼吸や血圧、心拍などを司り、ただでさえ働きづめの自律神経にとって、体温調節はエネルギーを余計に消費する仕事。疲労が溜まれば自律神経そのものの乱れに繋がり、倦怠感や不眠、頭痛など体に様々な影響が出る可能性がある。一時的な体温調節ならばいいけれど、長時間、寒さに晒されることは避けたいところ。

PROFILE プロフィール

永島 計さん

早稲田大学人間科学学術院教授。専門は生理学、体温・体液について研究を続ける。著書に『40°C超えの日本列島でヒトは生きていけるのか 体温の科学から学ぶ猛暑のサバイバル術』(化学同人)。

イラスト・宮岡瑞樹 構成、文・間野加菜代

anan 2425号(2024年12月4日発売)より

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No.2425掲載2024年12月04日発売

カラダが整う温活。

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