NIPTや無痛分娩など、知っておきたい“出産時の選択肢” 最新事情を産婦人科医が解説

ウェルネス
2024.07.01
ananフェムケア連載「Femcare File」。今回のテーマは、出産時の選択肢。医療の進化にともない、出産時の選択肢も増えている昨今。自分らしく出産と向き合うために正しく知っておきたい知識とは。

自分らしい出産を追求できる時代に。

フェムケア 出産

出産の痛みはどれくらいなのだろう、子供は無事に産まれてきてくれるだろうか…など出産にまつわる不安はさまざま。一方で医療の進化とともに、不安を軽減するための選択肢も増えている。まだ妊娠や出産を考えていなくても、事前に知っておくことで視野が広がる、最新の出産医療事情を産婦人科医の尾西芳子先生に伺った。

「最新の選択肢のひとつとして、NIPT(新型出生前診断)が挙げられます。これは赤ちゃんのいくつかの染色体の状態を調べるもので、母親の採血だけでできる検査。体へのリスクはとくになく、この検査により『赤ちゃんの命にかかわる病気の有無』といったことの確率が分かります。これまではクアトロ検査という採血検査が行われていましたが、NIPTはより精度が高いといえます。出産の高齢化にともない、母体や赤ちゃんへ何か影響があるのではないかと、不安に感じる人も増えているのは事実です。NIPTは確定検査ではありませんが、そういった不安を軽減するために、選択する人も増えています。また結果によって、産むかどうかを判断する検査と考えている方もいるかもしれませんが、赤ちゃんの健康状態を事前に知ることで、受け入れ体制を整え、より良い環境で育てるために検査を受けたいと考える人も多いんです。決して“後ろ向き”な検査ではないということも、みなさんに知っておいてほしいです」

一方、出産の痛みをやわらげるための選択肢といえば、無痛分娩が知られるところ。ただ正確な知識となると、実はよく分かっていない人も多いはず。

「まずお伝えしたいのは、完全に“無痛”ではないということ。日本では“和痛分娩”という言い方をしていますが、陣痛がきてから痛み止めの麻酔薬を少しずつ注入しますので、それまでは痛みはあります。薬を入れ始めた後はほぼ無痛ですが、入れ具合によっては陣痛が遠のき、出産が長引くことも。そのあたりは、医師の裁量によるところが大きいです。また稀ですが、誤って薬が血管に入ることにより、母子が危険な状態になることも。リスクはゼロではないので必ず医師から説明しますが、選択する人は確実に増えています。ただ医師不足などもあり、無痛分娩を行う病院自体が地域によってはまだまだ少ないのも実情です」

他にも昨今はエコーの精度も進化しており、胎児の状態をより詳しく見ることができるように。また、つわりをやわらげる薬なども登場しているそう。

「先ほど挙げたNIPTや無痛分娩など、不安を軽減する選択肢だけでなく、『病室は少しでもキレイなところがいい』『入院中の食事にはこだわりたい』『家族も出産に立ち会ってほしい』といった希望を伝え、出産環境を自ら整えるのも大切な選択のひとつ。リスクや金額もきちんと理解した上で、自分らしい出産を選択できる環境がもっと整っていけばと思います」

出産時のいくつかの選択肢。

NIPT(新型出生前診断)
検査方法は母親の採血のみ。胎児の染色体の異常を調べることができ、胎児が早くに亡くなる可能性がどれくらいあるかなどが分かる。検査結果により、羊水検査などを受けるかどうか検討するのが一般的。妊娠10週目から検査可能。費用は病院によってさまざま。

無痛分娩
腰にチューブを挿し、麻酔薬を少しずつ注入することで出産時の痛みを減らす。陣痛が起こった後、または陣痛誘発剤で陣痛を起こした後に注入を始める場合が多い。高血圧などの母体の状態や疾病により、医師から推奨される場合も。自然分娩費用+約10万円。

出産時の環境づくり
どんな病院で産むのか、出産時は地元に帰るのか、また出産の際は誰に立ち会ってもらうかなど、パートナーや周囲と相談した上で、出産時の環境を自らで整えるのも、とても重要なこと。病院によっては、一緒に希望の出産プランを考えてくれるところもある。

尾西芳子先生 産婦人科専門医。神谷町WGレディースクリニック院長。「すべての女性のかかりつけ医」を目指し、周産期、不妊治療、婦人科系のがん、PMSや更年期など、専門に特化しない幅広い診療を行うクリニックを運営。

※『anan』2024年7月3日号より。イラスト・二階堂ちはる 取材、文・山本奈緒子

(by anan編集部)

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