内外で同志を集めて念願の番組を実現!
2020年、テレビ東京で放送された『生理CAMP2020』。出演者がテレビで生理にまつわる体験を率直に語り合い、深夜枠にもかかわらず大きな共感と話題を呼んだ。その後、配信イベントも行われ、さらに『生理CAMP みんなで聞く・知る・語る!』として書籍化も実現。番組の立ち上げについて、同局プロデューサーの工藤里紗さんに伺った。
「10数年前、女性向けの深夜番組を担当していて、その時に生理特集をやったことがあったんです。生理に対する悩みや疑問を取り上げた他、世界の生理グッズを紹介したり。それが思っていたよりも反響があり、生理をメインテーマにした番組をいつかやりたいとずっと考えていたんです」
しかし、会議で提案しても「生理についてテレビで見たい人はいない」と周囲から反対され、なかなか実現しなかったそう。
「実現のために、社内外で同志を集めることから始めました。他部署の人や、生理用品のメーカーさんなどにも『こういう番組をやりたいと思っていて』とたくさん相談したところ、『生理についてもっとオープンに語れる空気ができたらいいね』と共感してくれる人が何人もいたんです。ちょうどフェムテックという言葉が浸透してきた時期で、外から中から同志の力が合わさり、深夜2時の放送枠をもらえたのです」
放送後、「生理CAMP」がツイッターでトレンド入りするなど大反響があった。「PMSについてもっと取り上げて」「出産経験のある女性の話も聞きたい」など、さまざまな声があり、「僕たちこそ知るべきだと思う」という男性からの意見もあったという。
「番組放送後、社内の雰囲気も一変し、『生理』という単語を口にするのにみんなためらいがなくなりましたね。自身の生理や健康状態を大きな声で語ることはもちろんありませんが、男性の上司が『他局でも生理の番組やってたから、見ておいたほうがいいよ』と普通の会話の中でナチュラルに教えてくれるなど、“生理を語るのはタブー”という雰囲気はなくなったように思います」
番組制作が機になり、生理について勉強したという工藤さん。自身も、生理との付き合い方を模索した時期があったそう。
「仕事柄、生放送の時は、5時間トイレに行けないことも当たり前。そんな時は、夜用ナプキン&タンポンでしのいだり…。またPMSで気分の落ち込みや眠気もあり、仕事のパフォーマンスに影響すると感じることも度々。今はピルを服用し、生理の回数が3分の1になり、ラクになりました」
やるべきタスクがたくさんある中で毎日を快適に過ごすには、まず自分の状態に目を向けることが大事だと工藤さんは語る。
「生理の症状は人それぞれ。個人差が大きいので周囲の事例が自分にも当てはまるとは限らないんですよね。私自身、毎月くる謎の眠気や気分の落ち込みがPMSだと気づけたのも、自分の体に目を向け、知識をつけたからこそ。今後も女性の健康問題に関する番組を制作していく予定なので、自分の体を考えるきっかけにしてもらえたらうれしいですね」
くどう・りさ テレビ東京制作局クリエイティブ制作チームプロデューサー。2003年にテレビ東京に入社。ドラマやバラエティなど幅広いジャンルの番組を手掛ける。『テレ東フェムテック委員会』『生理CAMP』がYouTubeで期間限定配信中。
※『anan』2023年3月1日号より。写真・瀬津貴裕(biswa.) 取材、文・音部美穂
(by anan編集部)