女性同士の団結力が生理時の強い味方に。
生理痛やPMSは軽いほうだという宇賀なつみさん。それでもむくみなどの不調を感じることはあったというが、朝の番組を担当していた頃は生理中でもヒールで2時間立ちっぱなしが当たり前。
「夜のニュースは見ている方が落ち着くように座ってお伝えするスタイルが多いけれど、朝の番組は立っていることがほとんど。不思議なルールですが、慣れてしまって特に疑問は感じませんでした。ただ、周りには症状が重い方もたくさんいました。そういう方からすると、生理中の収録やロケ取材は大変だったと思います」
では、職場において生理に関するサポート体制はあるのだろうか。
「収録のスケジュールはかなり前に決まっていて動かせないですし、かといって簡単に代われるものでもないのが難しいところ。そもそも、アナウンス室は男女の比率が半々ですが、会社全体で見るとテレビ業界って“男社会”なんですよ。なので、生理時のサポートの必要性を考えたこともない人のほうが多いと思います。その分、女性同士は連帯して助け合っていましたね。突然生理が来てしまった時にナプキンの貸し借りすることはよくありましたし、少しでも楽に過ごせるようにアナウンサー同士で衣装を交換する場合も。“あの婦人科が良かったよ”などと情報交換もよくしていました」
一方、不調を我慢する習慣がついてしまっている面もあるという。
「生理で立っているのが辛いと伝えたら、実際は“座っていいよ”と言われるはず。でも、“上司であるディレクターが立っているのに…”とみんな頑張っちゃうんですよね。なかには、せっかく自分がもらった仕事だからと、体調が悪くても病院にすら行かずに無理をして働く子も。そういった子には、“体を壊したら結局もっと迷惑をかけるわけだから、休みをとってちゃんと診察してもらったほうがいいよ”と話します」
宇賀さんがそう語る背景には、局アナ時代の自らの経験が。
「不規則な日々が続いて毎日2~3時間しか寝られなかった時期に、生理が半年近く止まってしまったんです。当時はその生活を変えられない状況だったので、婦人科の先生に相談してしばらくピルを飲んで乗り越えました。その後フリーになって睡眠や食事などの生活習慣が整ってきたら、自然と定期的に生理が来るように。そのぐらい、働き方って生理や体の不調と密接に関係しているんですよね」
最近は世間的にフェムケアの話題が増え、生理に対する意識も変化。ナプキンの無料配布を行う会社なども登場し、社会全体でサポートする方向性が生まれつつある。
「そういったサービスがあるのはすごく心強いし、生理中も働きやすい世の中になってきていると感じます。ただ、生理の症状は千差万別で、その人がどういった状態なのかは周りからはわからない。だからこそ無理はせず、不調がある時は周囲にきちんと伝えて理解してもらうことが必要。生理時の休暇も含めて、サポート制度の何をどう利用して、どこまで頑張るのかの正解は、自分で見つけるしかないと感じています」
広がる生理の“困った”の選択肢
生理用品を備品化してもっと快適に。
花王「職場のロリエ」
花王の生理用品ブランド『ロリエ』が各企業にトイレットペーパーと同じように、生理用品を備品化することを目指す活動をスタート。今年3月8日の国際女性デーから始動し、すでに複数の企業が導入。勤務中の生理の“困った”が解消され、女性の働きやすさ向上につながっている。
お出かけ先でも安心して過ごせる。
オイテ「OiTr」
「OiTr」は、商業施設やオフィスなどの女性用個室トイレに、生理用ナプキンを常備し無料で提供するサービス。専用のアプリ(無料)をダウンロードし、スマホをディスペンサーに近づけると無料で受け取れる。全国で173施設、2300台以上が導入されている。写真協力:オイテル
うが・なつみ 1986年6月20日生まれ、東京都出身。テレビ朝日アナウンサーを経て、2019年にフリーランスに。本誌「Food topics」連載も担当している。母親が子宮がんを罹患した経験から、半年に一度は婦人科検診を受診しているそう。
※『anan』2022年12月14日号より。写真・瀬津貴裕(biswa.) ヘア&メイク・遊佐こころ 取材、文・真島絵麻里
(by anan編集部)