
私たちの暮らしと地球環境の変化はどうつながっているのでしょうか。ジャーナリストの堀潤さんと社会問題への関心も高い井上咲楽さんが、環境問題と向き合います。
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クマの出没事件はいまや日常の危機に
── 日本のあちこちでクマ出没のニュースを見かけるようになりました。気候や環境に、今どんなことが起きているのでしょうか。
堀 2025年は特にクマの餌になるどんぐりが不作だったんですよね。一方でクマの頭数自体は増えていまして、山の中で限られた食料を奪い合うようになった。で、争いに負けたクマがお腹をすかせて人里に出没して、なりふりかまわず人間に襲いかかってきているという事件が多発しています。
井上 私も北海道の南西部を撮影で訪れたとき、数百メートルの距離でも「危ないから車で移動してください」と言われて。確かに道路に人が歩いていないし、登下校にも送り迎えが必要とのこと。さらには、お店にも気軽に人が来られないから飲食店も商売が成り立たなくなっているって…。命の危機だけでなく経済にまで影響が出ていることに驚きました。
堀 本当にそうなんですよね。僕もこの間秋田県に行った時に「歩きでは危ないから車で案内します」と言われて驚きました。地方ではクマ出没がもはや日常で起こっていることなんだと痛感しました。実際ハンターを増員したり自衛隊の動員も始まっていて、これからクマ対策はより広がっていくと思います。とはいえクマの勢いに対してまだ追いついていないのも実情。2026年も気候変動の影響で餌の不作が予想されますから、クマの被害は残念ながら増え続けると思います。
── 日本だけでなく世界的にも大規模な自然災害が増え、環境問題はより深刻になっているように思いますが…。
堀 2025年は11月に国連の気候変動に関する会議COP30がブラジルで開かれました。ブラジルのルラ大統領が「真実のCOPを目指す」と宣言して、これまでだと先進国と新興国の対立みたいな構図で語られていた議論を、例えばアマゾンの先住民族の皆さんなど、開発される側の声を世界に発信した会議でもあったんですね。
井上 この間コロンビアに行く機会があったんです。成長の勢いは感じるけれど、その副産物であるゴミ問題や大気汚染も同時に感じてしまいました。日本もそういう発展途上の時期を経て今があるし、そういう国の工場に仕事を発注しているのは先進国かもしれないと思うと後ろめたい気持ちに…。あまりにも大きな問題なので私たちにできることがあるのか自信がないです。
堀 まずはその第一歩として、ニュースをしっかり見てほしいと僕は思います。COP30はそもそもメディアの報道が十分ではなかった気がして残念だけど、気候変動のニュースを追うと「これまでの日本の対策があまり的を射ていなかったんじゃないか?」ということに気づくはず。
というのもこれまでの日本の気候変動対策って緩和策なんですね。CO2の排出削減とか、プラスチックの消費量を減らそうとか。それで気候変動が進むのを食い止めようとしていたんですけど、効果を感じることはあまりありませんでした。
いま世界で重要視されているトレンドは、適応策。気候変動はますます進み、クマが出没するのも台風で家が壊れるのも当たり前という時代に、どのようにしたら適応できるのか。それが2026年以降の世界の課題です。
異常気象や災害を前に今、できること
── 2025年は四季ならぬ「二季」が流行語になりました。暑い季節が長く、かと思えば豪雪に悩まされたり…。ここ数年はその傾向が強くなっていますが、私たちの暮らしの中でできる対応はあるのでしょうか。
堀 そうですね。まずはみんなで知恵を出し合うことが、これまで以上に必要になってきます。夏はゲリラ豪雨があるからいつでもリモート勤務に切り替えられるようにしようとか、台風シーズンは休暇を取ろうとか、働き方ひとつとっても対策は多岐にわたります。また、災害が起きることで地球の中に閉じ込められていた未知のウイルスが発生するということもありえないことではない。コロナに引き続いて警戒が必要です。
井上 そうですよね。そんな災害はないほうがいいけれど、コロナ禍を経験してからは、私も「とにかく今できることは、今実現しよう!」と心がけています。
堀 まさに予想もつかないことが起きうる時代。井上さんは2026年、やりたいことはありますか。
井上 うーん…そうですねえ。自分が旅をすることもそうですが、それをもとにして人と体験を共有できるイベントはやってみたいです。私たちはコロナ禍で留学に行けなかったり、体験のチャンスが少なかった世代だと思うんですけど…だからこそ体験した人の生の声を聞きたいという思いも強い気がしています。この先どうなるかわからない今の時代、未来の設計は難しい。…だからこそやりたいことを先延ばしにせずに、日々を充実させたいと、今日のお話を聞いてあらためて思いました!
押さえておきたいキーワード
#COP30
「国連気候変動枠組条約」に基づく世界最大の気候変動対策会議。30回目の節目となった2025年は、森林破壊が進むアマゾン地域に約200の国と地域が集まった。2035年までの途上国への資金支援強化や熱帯雨林保護のための新資金メカニズム創設などの決定がされたものの、化石燃料からの脱却について明確な合意には至らなかった。アメリカは不参加。
#二季
春夏秋冬の「四季」が崩れて、春と秋の季節がどんどん短くなり、夏と冬の2つの季節しかなくなってしまったかのよう。そんな近年の地球温暖化の影響による気温上昇や極端な気候を表現した言葉。季節感やファッションのみならず、農業や生態系、健康への影響など、気候変動が暮らしに及ぼす現象にも注目が集まっている。
Profile

堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト、元NHK アナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」 CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX 月~金曜20:00~21:00)が放送中。

井上咲楽
いのうえ・さくら 1999年生まれ、栃木県出身。選挙演説めぐり、マラソン、発酵食品など多分野で活躍。近著に『井上咲楽の発酵、きょう何作る? 何食べる?』(オレンジページ)。
写真・JOJI(RETUNE Rep) スタイリスト・池田木綿子(井上さん) ヘア&メイク・石川ユウキ(井上さん) イラスト・ONATSU 取材、文・大澤千穂
anan 2477号(2025年12月26日発売)より






















