ジャーナリストの堀潤さんと社会問題への関心も高い井上咲楽さんが、「経済」の視点から日本の現在地とこれからを語り合いました。

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    日本の物価高はこれからどうなる?

    ── ニュース番組でも毎日のように聞く「物価高」。なぜこんなに物の値段は上がったのですか? それに対してお給料は上がっていないような…。

     その通りです。結論から言うと、日本の稼ぐ力が世界と比べて落ちているから、物の値段が上がっていると感じるんですよね。例えば最近さらに高くなったマグロ。日本と反対にアフリカ、中東、東南アジアといった国々は豊かになって、世界的に見てお寿司を食べる人口も増えている。

    みんなが食べると食材の価格は上がります。でも日本はお給料が上がってないから、それについていけない。そこに気候変動もプラスされ、山火事や干ばつが起きて作物の収穫量が減ることも、物価高の要因のひとつです。

    井上 どうして日本は成長が止まっているんですか? 確かに海外に行くとお水や食事が高くて、外国と成長のスピード格差が広がっている気がして怖いです。

     それは「失われた30年」という言葉があるように、成長するチャンスを日本が逃したからなんです。日本は自動車産業や鉄鋼業など昭和から続く古い業態が今も経済の中心にいて、宇宙開発など次の経済のエンジンになっていくような企業が成長していない。この国自体がこれから何で食べていくのかを模索中なんです。

    井上 では、物価高はこの先も続くということですか?

     私たちが新しい産業を手に入れるまで続きます。産業だけでなく、日本はフリーランスなど正社員以外の働き方をサポートする仕組みづくりも遅れている。「世の中にないから自分で作る!」というアントレプレナーシップ、つまり個人の新しい発想を支援していく国に変わっていけば、日本はもう一度成長できるはず。

    実際、海外の成長国はスタートアップ支援に積極的です。アメリカのGoogleやMetaが成長した背景にはオバマ政権時代の支援がある。そのためには私たちも「自分にできること」を自問して稼ぐ力を育てることが大事です。それについては国もNISAという政策で支援しているし、副業を許可する企業も徐々に増えている。だから私たちも「月の生活費が20万円なら、そのうち3万円を副業や資産運用で作れないかな」みたいな発想を持ってみること。それが日本の稼ぐ力の向上につながると思います。

    井上 なるほど…。物価といえば、お米の値段が上がり続けていることも気になります。この間、米農家の友達に聞いたら「これまで作っても売れなかったのに、足りなくなったら騒がれて…」と困惑していました。

     まさにお友達の言う通りで、これは今までのお米の価格が安すぎたのが大きな問題だと思いますよ。お米は食料安全保障上不可欠だとして、国が価格をコントロールして安く提供していた。そうしたら作り手が「そんな儲からない作物は作れない」となって田んぼが減っていったと…。

    井上 それプラス主食が麺やパンなど多様化していることも大きいですよね。とはいえ私はたくさんお米を食べるんで、このままだと困るなあ…。

     麺やパンだけでなく、世界的に主食の消費量が減っているんですよね。糖質オフなど健康志向もその理由のひとつ。でも世界的に日本食文化が広がっていることもあり、収穫量に反比例して、欲しい人は増えている。お米の値段は2026年も本来の適正価格に向けて上がるでしょう。

    2026年を生き抜く鍵は自分との対話

    井上 あとニュース番組では、新入社員の初任給が先輩社員よりも高いという「給与の逆転現象」をよく耳にするようになりました。もし私が会社に勤めていて先輩社員だったら、後輩のお給料のほうが高いなんてめっちゃ嫌です! 確かに少子化もありますし、若くて有能な個人が高給になるのはわかるんですよ。でも世代で括られて、そこに格差が生まれるのは違和感があります。

     AIプログラミングとか、新しいスキルが高く買われるから、新しい世代の給料が高くなってしまうんですよね。その「納得いかなさ」を解消するためには教育支援に国が力を入れることも大事だと思います。学び直しやリスキリングという言葉がよく聞かれ、助成する制度も作られていますが、まだその制度を活用するのが当たり前とまではなっていない。なぜなら僕たち一人一人の情報感度というべきか、世界や社会の変化に対する情報が乏しいからです。僕らが思っている以上に、日本は遠い沖に流されている。

    井上 確かに「一億総中流」という昭和の感覚が根強く、世界の変化への感度が低いかも。

     もっと世界の波を実感して自分の能力をもう一度見直してみる、自分にとっての幸せは何かを考えてみることが大事になってくる。今までコミュニケーションといえば人と対話することだったけれど、2026年は“自分とうまく話すこと”がコミュニケーションの新テーマになりそうです。

    押さえておきたいキーワード

    #アントレプレナーシップ

    直訳すると「起業家精神」。IT分野やベンチャーが時代の寵児となった20世紀のアメリカで一気に広まった言葉。一人一人が「まだ世界にない価値」を形にしようという“アントレプレナーシップ”を持つことで、新たなビジネスを生み出そうとする空気が国民全体に広がり、日本の将来を担う産業が生まれるかもしれないと期待されている。

    #給与の逆転現象

    新卒の給料が先輩社員を上回る現象。少子化による若手の奪い合いに加えて、デジタル領域のスキルを持つ人材を確保したい企業の思惑が重なって起きている。一方で20代後半~30代は年功序列制度の名残もあって、ゆるやかにしか昇給しないケースが多い。その結果として後輩のほうが高給という歪みがさまざまな企業で生まれている。

    Profile

    堀 潤

    ほり・じゅん ジャーナリスト、元NHK アナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」 CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX 月~金曜20:00~21:00)が放送中。

    井上咲楽

    いのうえ・さくら 1999年生まれ、栃木県出身。選挙演説めぐり、マラソン、発酵食品など多分野で活躍。近著に『井上咲楽の発酵、きょう何作る? 何食べる?』(オレンジページ)。

    井上さん・ワンピース ¥48,400(ダイアグラム/Diagram表参道ヒルズ店 TEL. 03-6804-3121) イヤリング ¥1,900(Sorbet

    写真・JOJI(RETUNE Rep) スタイリスト・池田木綿子(井上さん) ヘア&メイク・石川ユウキ(井上さん) イラスト・ONATSU 取材、文・大澤千穂

    anan 2477号(2025年12月26日発売)より
    Check!

    No.2477掲載

    NEXT!

    2025年12月26日発売

    来年のトレンド予想、私たちをとりまく社会の話、そしてネクストカミングな俳優さんやVTuberなどをピックアップ。10月に行われたanan AWARD 2025の受賞者の撮りおろし、そしてAWARDレポートも一挙掲載。モノクロでは第16回ananマンガ大賞の発表も。

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