
物価は高いまま、給料も上がらない。将来、どのくらいのお金を用意しておけばいいのか…。そんな不安を解消する近道は、お金の知識を身につけること。家計管理から投資の基礎まで、わかりやすくレクチャー。自分自身が幸せになれるお金との付き合い方を、見つけていきましょう!
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こんな時代だからこそちゃんと知りたい、お金のこと。マネーの新常識2025
お金とは何か?‐幸せとお金の関係‐新井和宏さん
みなさんにとって、お金とはどういう存在でしょうか? 自由を得ることができるもの、やりたいことや将来の選択肢を増やしてくれるもの、怖さがあるもの…。十人十色の価値観があると思いますが、ほとんどの人に共通するのは「お金は大切にしないといけないもの」という概念だと思います。では、お金を大切にするとはどういうことなのかを考えてみると、自分が幸せになるために使うことに尽きるのではないでしょうか。ただ貯めるのではなく、話題のスイーツや欲しい洋服を買う、旅行など好きなことをする、誰かにプレゼントをあげる…。さまざまな場面でお金を使うのは、それによって自分が幸せになれると感じるからですよね。人は幸せになるために生きるのであって、お金のために生きるのではありません。お金はあくまでもツールで、それをうまく使いこなして幸せになることが重要なはずなのに、使い方がわからず、お金が目的になってしまっている人が多いと感じています。
世の中がシェアリングエコノミーにシフトしつつある現在、家や車などを所有しない生き方が可能になってきました。以前と比べてたくさんのお金を貯める必要はなくなったはずなのに、欲がなくなったり、お金にまつわる不安が解消されたという人は少ないのではないかと思います。それは、自分が幸せな人生を送るために必要なお金がいくらなのか、イメージできていないからに他なりません。人は漠然とした不安があるとお金を貯めようとしますが、その考え方だと不安が解消されるまで貯め続けることになります。そうやってお金に支配されないためには、まずは自分が幸せな状態をイメージしてみる。そして、そのために必要な金額について考えてみる。そうすることで初めて、お金を貯める意味合いが出てくると思います。
ひと昔前であれば、結婚する、子供を育てる、家や車を買う、そして退職したら退職金が入る…、といったライフプランやお金の使い方が典型的でしたが、生き方や働き方が多様化した今、幸せの定義も変わってきています。そこで求められているのは、自分にとって持続可能な幸せの定義を見つけていくことなのだと思います。たとえば、自分を本当に幸せにしてくれるものと、実はそこまで幸せにはならないものとに仕分けしてみる。幸せにならない部分については、節約を意識してみる。そうやって少しずつ自分を幸せな状態に持っていくことができる物事を探り、そのための取捨選択をすることで、自分に必要なお金や、自分にとって理想のお金との付き合い方が見えてくるのではないでしょうか。
消費だけでなく、貯蓄や投資、寄付などもそうですが、人生を豊かなものにしていくお金の使い方には、いろいろな選択肢があります。そのためにも、まずは自分の幸せについて関心を持つことが大切なのではないかと思います。
ライフイベントごとに必要なお金の目安は?
長い人生では、さまざまなお金が必要に。あらかじめイメージして備えたいところ。よくあるケースで、お金の目安をチェック!
【結婚】
挙式・披露宴・披露パーティ総額:約50万~500万円
新居(初期費用・家具購入など):約80万円~
2人だけのフォトウェディングから、少人数のレストランウェディング、海外ウェディング、結婚式場での大きなパーティまで、最近は結婚式のスタイルも多種多様に。実家から援助があるかにもよるけれど、数十万円~数百万円の大きな支出に。また新居への引っ越し代や敷金・礼金、さらに家具や家電などの購入費など、新生活のスタートにも数十万円のお金が必要に。
【出産】
妊婦健診・出産費用:約30万円~
ベビー用品:約10万円~
不妊治療:約10万~300万円
妊婦健診は自治体から一部助成があり、1回数千円ほどの自己負担で済む。出産の際は50万円の出産育児一時金をもらえるため、個室等の利用がなければ自己負担額はあまり高くない(現在、2026年度をめどに出産費用無償化の動きもある)。不妊治療は、保険診療の範囲なら高額療養費制度が使え、一般的な収入の人の自己負担上限は月9万円ほど。ただし、保険外診療の場合や期間が長くなれば支出が大きくなることも。
【教育費】
保育園~大学まで公立:約1000万円
保育園~大学まで私立:約3000万円
学習塾・習い事:月数千~数万円
子供1人あたりの目安は、オール公立なら約1000万円、オール私立なら約3000万円。ただし、あくまでもトータルの金額で、高校までは日々の家計から出せる金額内に抑え、大学以降の費用(300万円以上)を子供が小さいうちから準備していきたい。学習塾や習い事は家庭の方針によって大きく異なり、月々の支出が増えれば、トータルで大きな金額に膨らむので要注意。
【住宅費】
賃貸マンション(30~65歳の家賃総額):約3360万円~
分譲マンション購入:約3000万円~
土地付き注文住宅購入:約4000万円~
管理費、リフォーム代:約600万円~
エリアや物件によって金額は異なるが、家賃月8万円の賃貸に35年住めば、合計3360万円に。マイホームを買う場合は、ローン完済まで返済し続けられるかを要チェック。忘れがちなのが管理費や修繕積立金。月1万5000円の支払いが35年続くと、630万円と大きな金額に。水回り等のリフォームを購入後10~20年でするのが一般的で、その費用も準備しておきたい。
【学び直し】
学費:約10万円~
寿命が延び、働く期間が長くなった時代。新たな学びを得て活躍の場を広げ、収入アップにもつながる「大人の学び直し」は要チェック。無料オンライン受講のものから本格的な通学講座まで、今は選択肢も多い。国が社会人の学びをサポートする教育訓練給付制度も、ぜひ活用を。厚生労働大臣が指定した教育訓練を受講・修了すると、受講費用の一部が支給される。
【老後】
生活費:約3600万円~
住宅費:約300万~2000万円
介護(5年間):約500万円
一人暮らしの生活費(住宅費除く)が月15万円なら、20年間(65~85歳)で3600万円に。住宅費は、ローン完済なら管理費や修繕積立金の支払いで済むが、賃貸で家賃8万円なら、20年間で1920万円と大きな額に。老後の住まいがマイホームか賃貸かで住宅費が大きく変わるため、必要な額を考えて備えておきたい。介護費用の月平均は約8万円で、5年間で約480万円に。
Profile
新井和宏さん
あらい・かずひろ 非営利株式会社「eumo」共同代表、武蔵野大学ウェルビーイング学部客員教授。大学卒業後、信託銀行や資産運用会社で運用業務に従事。鎌倉投信創業を経て、お金の仕組みを再定義するeumoを設立。著書に『あたらしいお金の教科書』(山川出版社)など。
anan 2449号(2025年6月4日発売)より