誰でも手軽に、気軽に利用して他人と共感し合える便利な現代に気をつけたいのが、SNS上でのマナー。自分も他人も居心地が良く、楽しく交流できるインターネット空間とするために、肝に銘じたい心得とは? 日々の発信を振り返りつつ、おさらいしよう。
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ついやりがちな「SNSあるある」NG集から考える、みんなに優しい発信の心得。
頭ではわかっていてもついうっかり投稿してしまい、トラブルが広がってしまうのがSNSの恐ろしさ。自分を、そして他人を守るために、いま一度、発信の注意点をチェックしよう。
多くの人が当たり前にSNSを使う今の時代。誹謗中傷やレスバ(レスポンスバトル)をはじめ、日々、さまざまなトラブルが発生しがち。
「特に、Xのような匿名性の高いSNSの場合、“どうせ自分だとわからないはず”という前提のもと、普段は使わない強い言葉で抑制なく発信する人が多いように思います。たとえば、フェイスブックのように実名で登録していたり、身近な人とフォローし合っている人が多いインスタグラムなどのSNSでは、そうしたトラブルは多くはありません。誰に対しても丁寧に接し、面と向かって言えないことはSNSにも書かないことが、トラブルを避けるカギです」(弁護士・清水陽平さん)
他にも、個人情報をさらす、誤った情報を拡散するなど、無自覚のうちに迷惑をかけて、問題になるようなケースも少なくない。
「被害者になることを避けるのはもちろんですが、自分が加害者にならないためにも、SNSマナーを知り、守ることが大切になります。万が一、炎上してしまうと、個人情報を特定されたり、それがデジタルタトゥーとして残って社会において生きづらくなるなど、大変な状況に陥ることも十分に考えられます。また、法的な責任を追及されることもあるかもしれません。SNSマナーを守ることは、そうしたさまざまなリスクから身を守ることにも繋がります」
よくあるトラブルを避けるための5つのNGを紹介。これを読んで、SNSを楽しく、安心して使おう。
【NG】友人と写った写真をSNSに投稿してしまう。

事前に相手に確認を取り、他人のプライバシーを尊重しよう。
「人の氏名、住所を書かないのは当然ですが、顔写真を載せるのであればスタンプで顔を隠すなど、何かしらの対応をしましょう。小さく写っているとしても、顔が判別できる場合は隠したほうが安心です」(清水さん)。“こういう人がいました”というような目撃エピソードを投稿する場合、「ポジティブな内容であっても、書かれた本人が見た時に、ネタにされているとか、不快に思う可能性があるものは避けましょう。炎上はしなくても、相手との間でトラブルが生じる可能性があります」。また、“誰々とどこに行きました”というような内容にも注意。「他の人との約束を断っていたなど、相手に事情がある場合も。投稿する前には一度、確認を」
【NG】納得できない発信をしている相手にレスバしてしまう。
モメる火種はスルーし、ミスを見つけても心の中にとどめよう。
そもそもSNSとは、自分の考えや言いたいことを、自分勝手に発信する場所。「なので、そこで議論をしようとしてはいけません。納得できない発言に対して『それは違うよ』と指摘しても、『意見は求めてない』と返されるだけ。そこから話が噛み合ったり、解決できるケースは本当に少ないので、たとえ反論したくなったとしてもスルーしたほうが、揉め事に発展するリスクを避けられます。また、間違いを見つけてもあげつらったりしないようにしましょう」。逆に、誰かに何かを言われた時も、相手にしないのが得策。「無視をすると『逃げた』などと言われがちですが、気にしなくていいです。ちなみに、最近よく耳にする揉め事の内容でいうと、“とあるキャラクターに対して自分とは違った解釈がされている”といった、推しに対する解釈違いによる言い争いです。これはキャラクターに限ったことではなく、アイドルや2.5次元の世界でも同じようなケースが見られます」
【NG】嘘や不確かな情報を鵜呑みにして拡散してしまう。

自分の手で検索し、拡散する内容を確認しよう。
SNSで出回っている情報の中には、嘘であったり、正確性に欠けるようなものも交じっている。特に最近は、AIが発達したことで、フェイク画像や動画なども簡単に生成できてしまうのが怖いところ。「意図的に嘘の情報を流して誰かを困らせてやろう…と考えて実践するような人は、ほとんどいないと思います。でも、たとえ悪気はなかったとしても誤った情報を拡散することは他の人の迷惑になるため、拡散前に情報の内容や情報源を検索するなど、対策を行ってください。特に、最近問題にもなっていますが、地震や豪雨などの災害時は気をつけるようにしましょう。いろいろ自分で調べた上で大丈夫だと確信が持てないものや、少しでも疑わしい情報は、拡散しない意識を持つことが大切です。また、『この人の居場所を知りませんか?』といった、人捜し系の投稿も注意が必要です。投稿者がストーカーで、相手の居場所を捜しているというケースもあるので拡散しないようにしましょう。ちなみに、正誤にかかわらず、自分が拡散した情報が誰かの誹謗中傷にあたる場合、相手から訴えられてしまう可能性もあります。情報の内容にかかわらず、安易な拡散はしないほうが安心です」
【NG】相手が見ていないと思って、悪口や陰口を投稿してしまう。
誰に対しても丁寧に、面と向かって言えないことは投稿しない。
「ネット上では、『バカ』などの酷い、強い言葉を目にすることが少なくないと思いますが、現実世界で言う人はほとんどいません。面と向かって言えないことは、SNS上に書かないことがトラブルを避ける上での鉄則です」。また、居酒屋やカフェで友だちにこぼす軽い愚痴のような内容であったとしても、書き込むのは危険。「ネットは手元にあるメモ帳とは違い、投稿した内容を誰が見ているかわかりません。悪口や陰口を書かれた本人が目にすることも、十分に考えられますから避けましょう。人格を否定したり、容姿を貶すような内容の場合、訴えられる可能性もあります。思ったことを反射的に書いてしまう人は要注意です」。フォロワー数が少ないから大丈夫…と安心してはいけない。「もし、何かのきっかけでフォロワーが1万人くらいいるようなインフルエンサーなどの目に留まり、言及されたり拡散されると、一気に注目されることも考えられます。これがSNSの怖いところです」
【NG】他人の著作物を勝手にアップしてしまう。

「これは拡散してOK?」を考え、本人や公式の発信を確認しよう。
映画やドラマなどの映像や、漫画、雑誌、イラストなど、自分以外の人が手がけた作品を無断でSNSに掲載することは違法にあたる。「著作権法上、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、あるいは、その両方が科される可能性があります。また、アイコンにアニメのキャラクターであったり他者の著作物を勝手に使っているケースも多いと思いますが、こちらも注意が必要です。いずれにせよ、著作権を持っている人に確認を取るようにしてください。ただ、本当に一部だけを掲載するのであれば、要件を満たしてさえいれば引用の扱いになり、許可が不要になることも。また、著作権を持っている人の投稿をリポストすることは、まったく問題ありません」
Profile
清水陽平さん
しみず・ようへい 弁護士。法律事務所アルシエン共同代表。ネット中傷や炎上対応などを得意とする。ドラマ・漫画『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』も監修。
anan2449号(2025年6月4日発売)より