
左から、介助犬・ノース、聴導犬・ボーディ、盲導犬・アール
体に障害のある人と一緒に生活し、必要な動作をサポートするように訓練されている補助犬。目の不自由な人が安全に歩くことを手伝う盲導犬に、手や足に障害のある人の日常生活を支える介助犬。そして耳が聞こえない、聞こえにくい人に音が鳴ったことを知らせる聴導犬の3種類がいて、ユーザーにとっては欠かせない存在となっている。
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補助犬にも優しい社会とは?
盲導犬ユーザーの青木保潔さんは、「目の代わりになるという意味ではもちろん、僕の盲導犬は5歳くらいの男の子だと思っていますが、不安感が強い時も彼がいれば大丈夫だと思えるなど心の支えになっています」。また、介助犬ユーザーの安杖直人さんは、「車いす利用者はトイレに入るのも大変で、外出が面倒で引きこもりがちですが、介助犬がいると世話や散歩をしますよね。決まった時間に決まったことをすることで生活が整うなど、いい方向に作用しています」と教えてくれた。
その一方で、「日本社会においては、補助犬ユーザーと補助犬がいることを前提にした街づくりが、十分にできているとは言いがたいです」と、日本補助犬協会代表理事の朴善子さん。
「たとえば、競技場など大勢の人が集まる場所の座席に補助犬が一緒にいられるスペースがない、補助犬用のトイレが用意されていない、犬が歩くと滑るようなツルツルした床、電車に乗ると足元暖房で火傷しやすいなど、犬に優しいとはいえない仕様になっている場所がまだまだ多いです。補助犬が法律で認められているとはいえ、実際に連れて出かけたり、日常生活を送ろうとした時の困り事が多く、負担感も大きいため、補助犬ユーザーの社会参加数が伸び悩んでいる実情もあります。ヨーロッパは生活の中に犬がいることが当たり前で、トイレをしていい場所もたくさんあります。すべての場所に補助犬用のトイレを作ることは難しいとしても、たとえば補助犬ユーザーが来るお店や会社であれば、犬がトイレをしていい場所を教えてくれるだけでも負担が違います。また、公的な施設や大きなターミナル駅を造る時は、補助犬ユーザーと補助犬も利用することを想定してデザインしてほしいなと思います」
補助犬の仕事を邪魔しないために、補助犬との向き合い方を知っておくことも大事。
「気が散ったり、迷子になることもあるので、歩行中は犬に声をかけないようにしてほしいです。また、補助犬ユーザーといっても性格や望むことが違います。許可さえ取ってくれたら盲導犬に触っていいという人もいれば、絶対に嫌な人もいる。急に声をかけられると怒る人もいます。その時どきで、状況を見ながら、上手にコミュニケーションをとってもらえるとありがたいですね」(青木さん)
補助犬の役割
・盲導犬とは…
交差点や段差で止まったり、障害物をよけたり、指示された方向に進むなど、視覚障害のある人が街中を安全に歩けるようにサポートする。
・介助犬とは…
落としたものを拾ったり、ドアの開け閉め、指示されたものを持ってくるなど、肢体不自由の人の日常生活動作をサポートする。
・聴導犬とは…
玄関のチャイム、電話の呼び出し音、目覚まし時計のアラーム音など、聴覚障害のある人に生活の中の必要な音を知らせ、音が鳴ったら音源まで誘導する。
街で補助犬に出会ったら、気をつけること。
・話しかけない。
・じっと見ない。
・触ったり、撫でたりしない。
・自分のペットを近づけない(挨拶させない)。
・食べ物や水を与えない。
・無断で写真を撮らない。
anan2449号(2025年6月4日発売)より