
生活防衛資金を十分作れたら、次は「投資」に挑戦してみよう。「元本保証はありませんが、時間をかけて資産形成する投資は、決してギャンブルではありません。むしろ、預金だけでは物価上昇に対応できず、貯めたお金の価値が目減りします。投資しないのもリスクなのです」(ファイナンシャルプランナー・黒田尚子さん)。まずはNISAでインデックス型の投資信託を積み立てで買うことを目指そう。
Index
長期・積み立て・分散が簡単に?! まずはインデックス型の投資信託から。
長期・積み立て・分散が大事と言われても、ビギナーにとっては「じゃあ、何をどうすれば?」というのが正直なところ。だが、これらをすべて叶えられる便利な方法があるという。
「それが、インデックス型の投資信託を積み立てで買う方法です。インデックスファンドといい、有名なものには、『オルカン(※)』などがあります」
それなら聞いたことがある! ところでインデックスって?
「相場の指数のことで、国内なら日経225やTOPIX、米国ならS&P500などがあります。インデックスファンドは、こうした指数に連動する商品。インデックス型の構成には多くの企業が含まれるので、インデックスファンドをひとつ買えば、それだけで自動的に、超がつくほどの分散投資が可能になります」
なるほど。では、どれを買えば?
「自分がどんな投資をしたいかによります。どんな株を買うのか、不動産や債券も入れたいのか、どのぐらいのリスクを取るのか。最初に方針をしっかり考えてから、商品を選びましょう。あとは積み立てを設定するだけで、資産形成をスタートできます」
※オルカン…インデックス型の投資信託のひとつ「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の通称。
【SYSTEM】投資信託ってどんな仕組み?
投資信託とは、投資家からお金を集めてプロ(ファンドマネージャー)が運用する金融商品。これひとつで分散投資ができる!

投資信託は、ひとつの商品の中にいくつもの資産が入った金融商品。「株式だけが入った株式型や、債券や不動産など複数の資産が入ったバランス型など種類はさまざま。インデックス型の中にも、全世界株式型、全米株式型など複数のカテゴリーがあります」
【CHECK】インデックスファンド、なに見て選ぶ?
長く積み立てるものだから、商品選びは重要。商品の解説書(目論見書)を読んで、次の5項目をチェック!
・信託報酬
「投資信託はプロが運用するので手数料が必要。それが信託報酬で、毎日少しずつ資産から引かれます。運用中はコストも複利で増えていくので、低いほど○。理想は0.1%以下、高くても0.2%以下が目安です」
・運用会社、シリーズ名
「投資信託にはシリーズで展開しているものが多いです。たとえば、『eMAXIS Slim』シリーズは、低コストの投資信託の代名詞。シリーズで運用方針が決められているので、ここをチェックしてみると選びやすさがアップ」
・純資産総額
「純資産総額は、その投資信託の大きさや信頼性を表します。純資産総額が少ないということは、人気がないということなので、途中で終了(繰り上げ償還)してしまうことが。100億円以上あるファンドを選ぶと安心です」
・分配金の有無
「分配金とは、運用で出た利益を投資家に還元すること。長期投資では、分配金を出さず、再投資するほうが複利の力を最大限に活かせます。同じ商品名で分配金が出るタイプとないタイプがあったりするので注意して」
・連動する指数(ベンチマーク)
「最初に見たいのは、TOPIXや日経225、S&P500など、その商品が連動する指数。指数を調べれば、何に投資しているものなのかわかります。具体的にどんな国や企業に投資する商品なのかを見て、自分の方針に合うかどうかを確認しましょう」
Q&A
Q. 投資を始めようと思ったものの、トランプショックが不安です。状況が改善されるまで待つのと、とりあえず始めるのと、どちらがいいですか?
「結論から言えば、今始めるのがおすすめ。理由は、完璧な始めどきは誰にもわからないから。それなら、できるだけ長く積み立てるほうが資産形成には有利です。それに下落は買いどき。少額で始めて様子を見てみては?」
Q. 人気のインデックスファンドがランキングになっているのを見かけます。これは買うときの参考にしたほうがいいですか?
「ランキングはそのときのトレンドや相場の動きで変わってくるもの。上位にある=定番&安心感の目安にはなりますが、自分の投資方針と合っているかは別。上の選び方も参考に、中身をしっかり確認しましょう」
Q. 生活防衛資金が貯まったのでNISAをスタートします! 今まで月1.5万円貯めていた分、すべてNISAに回してもいいですか?
「5年以内に使う貯金は補充し続けたいので、貯金7:投資3ぐらいで始めると安心。貯金が十分なら5:5でもいいでしょう。貯金を継続しながら、ボーナスのタイミングで投資額を増やすスタイルも、堅実でおすすめ」
Q. ボーナスが出たタイミングで積み立てる金額を増やすのと、月々一定金額を積み立てるのはどちらがいいですか?
「ボーナス時に増額するのはアリ。ボーナスの1~2割は投資に回すなど、予算を決めると計画を立てやすいです。増額分を一気に入れた後に、相場が下がると精神的につらいので、数回に分けて入れても」
Q. 昇給したのでもう少し投資金額を増やしたいです。投資先を増やすのと、投資先は増やさず積み立てる金額を増やすのと、どちらがオススメですか?
「種類を増やすとメンテナンスが大変に。たとえば、インドの割合を増やしたいとか、ハイテク株を入れたいとか、分散の方向性を変えたい場合は種類を増やすのもアリですが、それ以外は積立額のアップがおすすめ」
Q. 投資をしていますが、運用収益率のマイナスが続き、正直やめたいです…。どうすればいいですか?
「資産がマイナスになる含み損はしんどいですが、売らなければ損は確定しません。多くの企業に分散投資している投資信託は、やがて上がってくるときがきます。長期・積み立て・分散を信じ、コツコツ続けましょう」
Profile
黒田尚子さん
ファイナンシャルプランナー(CFP(R))。城西国際大学、千葉商科大学非常勤講師。『マンガでわかる お金に人生を振り回されたくないから 超ビギナーが今すぐやること教えてください』(主婦の友社)ほか、著書多数。
anan2449号(2025年6月4日発売)より