
不要な保険を見直して毎月払う保険料が減れば、手元のお金を増やせる。でも、「もしも」を考えると解約するのは不安。気持ちと保険のバランスは、どうとるべき?
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“なんとなく”で入っている民間保険は見直しを。
「必要な保険は、人それぞれ違うので、まず自分は“何が不安なのか”を明らかにしてみて。たとえば病気なら、入院費用が心配なのか、仕事を休んで収入が減ることなのか、子育てや家族への影響なのか。不安の中身を分析すれば、保険でカバーするか貯蓄で備えるか、判断もしやすくなります」(ファイナンシャルプランナー・黒田尚子さん)
そもそも多くのリスクは、公的な社会保険でカバーできる部分も多いというアドバイスも。
「日本の社会保険制度は世界的に見ても超充実。もしものときの給付を知っておけば、民間保険で備える部分を減らせます」
保険ではなく貯金で備えるのなら、もしかしてNISAを使うのもあり?
「最近、若い人にそう考える人が増えています。ですが、投資でリスクに備えるのはNG。万が一、相場が暴落時にがんの告知を受けたら、精神的にも売却的にもきびしいです。リスクには保険か、貯蓄で備えて」
【TRY】あなたは今の生活でなにが不安? 書き出してみよう!
モヤモヤしている不安をいったん全部、書き出してみて。何がこわいのかを分析すれば、必要な備え方が見えてくるはず!
社会保険
日本の社会保険はかなり充実。いざというときの保障を知っておくだけで、ムダな出費も不安もなくせる!
・健康保険
日本在住であれば、みな何らかの公的医療保険に加入している。そのため病院の医療費は69歳まで3割負担ですみ、残りの7割は保険から支払われる。
・労働保険
雇用を促進する保険。失業時や勤務中に起きたケガの補償のほか、育児で仕事を休む際の育児休業等給付、介護休業給付もここから。
・年金保険
20歳以上60歳未満の人は国民年金への加入が義務。会社員や公務員は厚生年金にも加入する。年金には老齢年金のほか、障害年金、遺族年金がある。
・介護保険
要介護、要支援になった際に、入浴や食事などの介護にかかる費用負担を軽減することができる保険。保険料の支払いは40歳から始まる。
民間保険
社会保険で不足する部分だけ、民間保険で補うのがセオリー。本来は必要ない保険に加入している人も多いので、自分の優先順位を整理してみよう。
・医療保険
入院や手術など、治療をフォローする保険。がんに特化したものも。「貯蓄が少なく、入院で経済的に困る人は必要。貯蓄が100万円程度あるなら優先順位は低めです」
・生命保険
死亡したらお金が下りる保険。「残される家族がいないシングルは不要です。家族がいる場合でも、遺族年金を確認し、不足する部分を検討すればムダなし」
・損害保険
事故や災害で発生した損害を補償する保険。「自動車事故などは、損害賠償が億単位になることも。起きたら致命的になるリスクには、民間保険でしっかり備えて」
→民間保険は“確率”と“インパクト”のバランスで考えよう。
民間保険は、確率は低いけれどもし起きたら経済的に困窮する、大きなリスクに備えるもの。「自動車保険や、子どもの教育費に使える生命保険などは入らなければいけない保険。逆に言えば、万が一のときに貯蓄や公的保険でまかなえるリスクに民間保険は不要ということ。入院費を貯蓄で払えるなら、医療保険はいりません。ただ、がんは2人に1人はなる時代で、治療が長期化しやすい。確率とインパクトを考えると、がん保険は検討もありです」
Q&A
Q. 若いうちから保険に入っておいたほうが安いのではないでしょうか?
「保険は早く入るものではなく、必要なときに入るもの。健康な若いうちや何かあったときに備えて貯蓄がある場合は急ぐ必要はありませんが、病気になったら入れないのも事実。若い人にも多い女性特有の病気が気になる人、妊娠の予定がある人は入っておくと○」
Q. 収入に見合った掛け金はどのくらいでしょうか?
「保険料の目安はライフステージによっても変わりますが、高くても手取り収入の5~7%まで。手取り300万円なら、ひと月あたり1万5000円前後に抑えましょう。その中で、自分に必要な保険を選んで組み合わせていくようにしてください」
Q. 保険と一緒に貯蓄ができると聞いたのですが…。
「貯蓄型に多い変額保険や外貨建ては保険料が割高。拘束期間も長いので、ライフプランが変わっていく若いうちに入るのはリスクもあります。“10年は続ける覚悟がある”“強制力が欲しい”“外貨で資産を持ちたい”かどうか、よく考えて」
Q. 保険は人生のどのタイミングで見直すのがいいですか?
「就職、結婚、出産、住宅購入などを機にライフステージが変わると、抱えるリスクも変わるので、その都度保険も見直しましょう。医療保険やがん保険は、昔の内容のままでは今の医療に対応していないことも。2~3年に一度など、定期的な見直しがおすすめです」
Profile
黒田尚子さん
ファイナンシャルプランナー(CFP(R))。城西国際大学、千葉商科大学非常勤講師。『マンガでわかる お金に人生を振り回されたくないから 超ビギナーが今すぐやること教えてください』(主婦の友社)ほか、著書多数。
anan2449号(2025年6月4日発売)より