「推し」への想いは熱いのに、上手く言葉にできない…自分の「好き」を言葉にする方法

ライフスタイル
2025.02.08

愛する「推し」の良さをちゃんと伝えたいのに、上手く言葉にできないこと、ありませんか? そんなanan読者のために、この手順さえ踏めば「好き」を言葉にでき、しっかりと相手に伝わる方法を、文芸評論家の三宅香帆さんが伝授!

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推しについて語りたい、伝えたい! 想いはこんなにも熱いのに、言葉が出てこない…。そんな人でも自分らしい言葉で伝えられるようになる方法を教えてくれるのは、『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』の著者で、文芸評論家の三宅香帆さん。読書感想文が苦手だった人でも、大丈夫だそう。

「今では評論を仕事にしている私自身が、実はあまり得意ではありませんでした。多くの人にとって読書感想文って、書き方を理論立てて習っていないのに書かなければいけなくて大変だったと思うんですよ。でも、ステップを踏んでいけば、推しの魅力を伝えられるようになっていきます!」

その大きな一歩は、自分と他人の言葉を分けること。

「SNS時代では、大量に目にした他人の言葉に影響を受けるので、自分と他人との言葉の境界線が曖昧になりがちです。まずは、自分だけの感情を大事にする。それが“推し語り”の基本です。応援しているアイドルのライブ後や好きな作家の本を読んだ後などにメモを取ることは、自分と他人の意見を分ける練習になるので、ぜひ習慣化してほしいです」

無理にセンスのいい言葉を使おうとしないのもポイント。

「自分に正直に、どう思っているのか、それはなぜなのか考え、表現していけば、普段使っている言葉だけでも、自ずとその人らしさは出てきます。そして、伝えたい相手のことを考えることも忘れずに。自分との情報量の差を考慮しないままいくら話しても、何も伝わりません」

そもそもなぜ人は、推しの良さを誰かに伝えたいのだろう。

「好きなものを通じて人と繋がり、共感できた時の喜びがとても大きいからではないでしょうか。なぜ好きになったのか。どんなところに惹かれるのか。推しの魅力を言語化することは、自分はどんな人間なのかを伝えることでもあります。推しへの解像度が上がると、自分自身の理解が深まるのです」

「推しの魅力の伝え方」講座

【STEP1】伝える前の心構え。

自分らしい言葉で推しの魅力を伝える前準備で大事なポイントは2つ。他人の言葉に影響される前に書いた素直な感情が、オリジナルの感想の種に!

・他人の感想をすぐ見ない
ライブが終わって即、スマホを取り出してSNSを開いて、レポや感想をチェック…。もし、それが習慣化しているのなら危険! 「私も感動を分かち合いたくて、やりたくなってしまいます。でも、私たちは他人の言葉にとても影響される生き物。自分の感想を言語化する前に他人の言葉に触れてしまうと、それに引っ張られ、さも自分がそう思ったような気になり、オリジナルの感想ではなくなってしまいます。そして目にした言葉が強ければ強いほど説得力があって、正しいとさえ思ってしまう。SNSやインターネットを見るのは、自分の感想を書いた後に!」

・メモを取る
SNSチェック以前にやるべきことは、ストレートな感想を残しておくこと。「スマホのメモ機能で箇条書きにする程度で大丈夫。書くことが苦手な人は、一つだけでも構いません。鮮度が落ちないように、なるべく早く書き留めて。この段階では、伝える相手を考えなくてOK。人から良く思われようとせず、感じたまま偽らずに書いて。そして、できるだけ具体的に。たとえば『最高!』と感じたなら“何が”心に響いたのか記しておきましょう。そしてネガティブな感情こそ、いきなりSNSに投稿せず、メモをおすすめします。モヤモヤが整理されますよ」

【STEP2】「推し」の魅力を自分の中で整理する。

まずは、感動ポイントを洗い出し! 細かいほどオリジナリティが生まれる。感情を言葉にするには、“共感”と“驚き”の2つの視点から考えるとスムーズ。

・感動した箇所を細分化する
推しの魅力を言語化するのに、語彙力はそこまで重要ではないそう。「大事なのは“細分化”。良さを伝えたい推しの“どこが”良かったのか、具体的に思い出していきましょう。ライブなら響いた歌詞、MCでの言葉、気に入った演出や衣装など。漫画や小説などフィクションなら、好きなキャラクター、印象的なセリフや場面、驚いた展開などがあります。広く全体のことではなく、心が動かされたものの幅を狭めていくイメージ。感想のオリジナル性は細部にこそ宿ります」

・感情を言語化する
具体例を挙げたら、それに対してどんな感情を抱いたか深掘りする作業へ。「グッときたことは、“共感”か“驚き”に大別できます。自分の体験や好きなものとの共通点を探してみてください。それが“共感”です。逆に自分とは違う価値観に触れることで“驚き”が生まれます。どういう点が新鮮だったか考えてみて。この2つのプロセスを踏むと、感情が言葉になっていくはず。これは自分自身と向き合う作業でもあり大変かもしれませんが、慣れると楽しくなっていきますよ」

・“クリシェ”に頼らない
推しや作品の素晴らしさを伝えたい時に、気をつけたいのが“クリシェ=常套句”。それらしく聞こえるため、無意識のうちに使ってしまいがち。三宅さんが特に注意すべきワードとして挙げるのが「泣ける」「ヤバい」「考えさせられた」。「自分の感想にクリシェが出てきたら、感情を深掘りするチャンス! もし、その言葉自体を書き換えるのが難しければ“どこが”泣けたのか、“何を”考えたのか、“どう”ヤバいのか、書き加えていくだけでも、オリジナルの感想になっていきます」

【STEP3】的確に相手に伝える。

実際に想いを伝えるステップでは、会話でも文章でも、伝えるターゲットを決めることが最優先! 相手の情報量の見極めも忘れずに。

・伝える相手を設定する
推しが同じ人同士のコミュニティでの会話なのか、推しを知らない人に向けて広めたいのか。誰に向かって発信するのかをはっきりさせるだけで、使う言葉やフレーズは全然違ってくる。「推し活仲間内では常識的な言葉でも、推しを知らない人にとってそれは、理解できない専門用語です。“誰に”伝えるのかという視点が抜けると、あなたの伝えたい気持ちは届きません。上手いライブレポは、見ていない人でもわかるように情報がきちんと説明されていて、臨場感があります」

・相手との情報量の差を意識する
特に会話で注意したいのは、推しに関する情報量の差。「発信先には相手がいます。“伝える”とは、相手との間にある情報差を埋めることに他なりません。推しについてどの程度知っているのか、どんな印象を抱いているのか。相手について想像するクセづけを。相手の反応が悪い時は、伝え方の問題かもしれません」。必要に応じて補足情報を入れる、相手が興味のある話題を盛り込むなどすると、置いてきぼりにせずに済む。「興味ないかもしれないけど」と前置きするのも一手。

・一番伝えたいことを明確にする
ブログやファンレターなど、長めの文章で伝える場合は特に、伝えたいポイントを見失わずにまずは書き切る! 「絶対に伝えたいこと、ここさえ伝わればいいと思える要点を絞り込むと、結局何が言いたかったのかわからないということが起きにくくなります」。一番伝えたいことは、最初に持ってくるといいと聞くけれど…? 「書き出しの方法は色々あるので、必ずしも結論から入る必要はなく、入りやすいところから始めてよいと思います。修正前提で書き始めてみて」

PROFILE プロフィール

三宅香帆さん

京都大学大学院在学中から文芸評論家として活動を始める。評論の対象はエンタメにも及び、今の推しエンタメは「timelesz project」。昨年、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)がベストセラーに。

イラスト・Jun Oson 取材、文・小泉咲子

anan 2433号(2025年2月5日発売)より

MAGAZINE マガジン

No.2433掲載2025年02月05日発売

想いの伝え方。

仕事、家族、友人、恋愛…さまざまなシチュエーションで自分の気持ちや考えをきちんと相手に届けるための、コミュニケーションのヒントを集めた特集です。伝わる会話の基本のキ、TPOに応じた「ありがとう」の伝え方、三宅香帆さんに教わる“推し”の魅力を言葉にする方法、大人気の春とヒコーキに聞くコンビ間でのコミュニケーションなど、いま必要な伝える力を磨くためのトピックスをご紹介。

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