観光客を呼ぶだけでなく、招く側の意識変革も大事。
インバウンドとは、主に、海外から日本に観光客を誘致することを指して使われる言葉です。リーマン・ショック後、経済をどう立て直し、人口減少で縮小していく国内市場をどう活性化させるか。その頼みの綱がインバウンド事業でした。
日本に観光客を呼ぶ「ビジット・ジャパン(VJ)・キャンペーン」は2003年から始めていましたが、国は2008年に観光庁を置き本腰を入れます。ターゲットにしたのは、それまで日本を訪れていなかった新興国の旅行者。インバウンド事業でまず成功したのは北海道でした。北海道を舞台にした中国映画『狙った恋の落とし方』が2008年に公開され、映画のヒットとともに、直行便で北海道を訪れる中国人観光客が急増しました。このころから国は、海外メディアや旅行会社を日本に招聘したり、海外の物産展に日本の小売業者を出店させたり、官民協力体制でインバウンドを拡大する仕掛けを積極的に行っていったんですね。
国はさらに、ビザ発給要件を緩和し、LCCなど格安の直行便増便の後押しをしました。それにより、ビザが免除になったタイやマレーシアの観光客が増えました。東南アジアの人にとって最大の魅力は「雪」。「雪かき」までもが観光資源となったんですね。さらに、免税店を増やし、イスラム教徒の観光客を呼び込むため空港内にイスラム礼拝堂を建てたり、イスラム教徒が食べられる料理に「ハラール」認証をつけるなどの努力も始めました。それらが功を奏し、VJキャンペーンが始まった当時は訪日観光客数1000万人が目標でしたが、10年後の2013年に悲願達成。みずほ総研の調べでは、2015年の訪日旅行者数は約1974万人。消費総額は約3.5兆円で、前年の2兆円より増と、インバウンドの経済効果は確実に表れています。
現在問題なのは、ホテル不足。また今後の課題は、観光客が集中する都市部から、どう流れを地方に導くか。それには、電車の乗り継ぎや交通標識の多言語化も課題ですし、そこに暮らす人々が、外国人を受け入れる態勢にあるかどうか。日本は「内なるグローバル化」も必要になってきているんです。
※『anan』2017年2月15日号より。写真・中島慶子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)
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