アンアン連載の「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「自由貿易」です。
経済向上だけではなく、世界平和を維持する効果も。
日本は貿易の自由化を進める、FTA(自由貿易協定)とEPA(経済連携協定)を各国と積極的に進めています。FTAは特定の国や地域の間で、関税などの障壁を削減したり撤廃する協定。EPAは貿易の自由化だけでなく、投資や人の移動、様々な分野での協力体制をとろうとする協定です。
いま日本では、TPPばかりが注目されていますが、日本が進めている自由貿易はほかにもたくさんあります。たとえばRCEP(アールセップ=東アジア地域包括的経済連携)は、ASEANの10か国に加え、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドが参加する経済連携で、2011年から本格的に交渉が始まっています。日本がTPPへの参加に積極的なのは、この先も東南アジア諸国とさらに大きな自由貿易を行うとなると、TPPのルール作りから参画し、日本にとって有利な条件を少しでも引き出しておきたいという思惑があったからです。一方、トランプは大統領選のときから、TPPはアメリカにとって有益ではないと反対を主張していました。TPPに参加して、これ以上安い労働力がアメリカに入ってきたら、国民がますます職を失うと警戒したのです。ただ、アメリカにとって有益な自由貿易は歓迎。2国間で協定を結べばいいと考えています。
いまやどの国も貿易によって経済が成り立っています。国内だけでは消費は限られますが、世界に市場を広げれば、より多く売ることができます。
自由貿易の最大の効果は、経済的な結びつきが強くなり、その国と戦争をしにくくなるということ。逆を言えば、自由貿易を破棄すると、世界の安全保障上、不均衡を与えかねません。第一次世界大戦前がまさにそういう状態でした。アメリカが保護貿易に走り、他国に干渉しなくなった結果、ヨーロッパで戦争が勃発したんです。
日本はいまRCEPに、中国、韓国と3か国間FTAを、EUと日本でEPAを結ぼうとしています。日本の人口は2050年には8000万人に減ると予測されています。国内だけ向いていては立ちゆかない。他国と協定を結ぶことは必須なんですね。