仕事を円滑に進めるために“お互い心地よく”が基本。
ワークスタイルが多様化し、ビジネスでのコミュニケーションのとり方にも変化が生まれている昨今。新たなツールを活用するシーンが増えた一方、ビジネスマナーがアップデートできず、なんとなく自己流でやっている人も多い。しかし、「幅広い世代が気持ちよく仕事をするためには、基本のマナーはおさえておくべき」と、ライフスタイリストの北條久美子さんは話す。
「様々な年代や立場の方と一緒になるビジネスの場では、育った環境や価値観、言語の違いで、どうしてもコミュニケーションに齟齬が生まれがち。しかしマナーはビジネスの土台であり、人間でいう背骨。マナーを知ることで人間力を養うことができ、どんな相手とも関係を築きやすくなります」
軸ができていないのに自己流を貫くのはNG。ベースをおさえておけば信頼を勝ち取り、個性を発揮しやすくなるのでチャンスも広がる!
「“お互い心地よく”が、ビジネスマナーの基本。そこをおさえておけば、常に相手のことを考えて行動に移すことができるし、応用も利きます。すると、“この人と一緒に仕事がしたい”と思われる機会も増えていくはず」
今回は、マナーについての疑問が多いメールに関するコミュニケーションマナーをアップデート!
「ビジネスマナーは円滑に仕事を進める武器にもなります。また、心得ていると自信を持って相手と接することができ、業務のパフォーマンスも上がるはず。ぜひ意識してみてくださいね」
メール 編
分かりやすさと自分らしさで印象アップ。
今やビジネスにおいてなくてはならないツールとなったメール。メールのやりとりだけで仕事が進んでいくことも多いので、分かりやすさを重視して、効率的な情報共有を心がけることが必要不可欠。その上で、相手に好感を持ってもらえるように、自ら積極的にコミュニケーションをとっていくことで一目置かれ、また仕事がしたいと思ってもらいやすくなるはず!
基本原則1. 読んで分かるより見て分かるを意識した文面を。
一日に何百通とメールが来る人もいるので、パッと見て分かる文章を心がける。「『日程調整のご相談です』『3点質問がありご連絡いたしました』など、何を伝えたいメールなのか、用件は必ず先に書きましょう。改行なしで書き連ねるのではなく、読む人のことを考えて、箇条書きや太字、かっこ書きを利用して工夫をすることも大切」
基本原則2. 相手にしてほしいアクションを明確にする。
相手にどんなアクションをしてほしいのかを明らかにしてからメールを作成すること。「『こちらご確認ください』だけではなく、『こちらご確認の上、明日までにお戻しいただけますでしょうか?』など次の展開をしっかりと述べましょう。やりとりの回数を最小限に抑えて、相手にできるだけストレスを感じさせないメールの書き方を」
基本原則3. どこかに自分らしさを輝かせる。
良い関係を構築していきたいなら、記憶に残るような個性を光らせる。「冒頭は『お世話になっております』で終わらせず、『桜が開花しましたね』など、時候の挨拶を入れるのがスマート。結びには、『ご自愛ください』など気遣いの言葉を入れたり、関係性が深まっている相手であれば、追伸にプライベートな内容を入れるのもありです」
マナーの迷いにアンサー! Q&A
Q. どのタイミングで件名を変えるべき?
A. スレッドが繋がりすぎて、延々と同じ件名のままやりとりしてしまうことはよくあります。一般的には、同じ案件の場合はそのまま件名を変えずに進めるのがベター。内容が変わったり、異なる案件になった場合は件名を変えて別スレッドを立てましょう。
Q. CCを入れて送ったのに、自分だけに返信が来た!
A. 社内共有のためCCに同僚を入れたが、一斉返信ではなく自分にだけ返信が来た時は、単純に間違ってCCを外してしまっただけかもしれませんが、無断で戻すと角が立つ場合が。だから一度「全員でやりとりを共有したいので、CCを入れてお返事いただけますでしょうか?」とお伺いを立て、OKだったら戻すようにしましょう。
Q. 取引先とのメールで砕けた表現は避けるべき?
A. 取引先の方との関係性にもよりますが、相手のテンションに合わせるか、それより少し控えめの文面にするのがよいでしょう。たとえば相手が「!!」と入れてきたら、自分は「!」を使うなど。堅苦しいままだと冷たい印象にはなりがちなので、控えめに相手のテンションに合わせていくのが◎。
Q. 相手と距離を縮めたい。メールでできる方法は?
A. 相手に合わせるのが基本中の基本ですが、ずっと平行線でなかなか距離が縮まらない時は、以前その人と話した話題に触れてみたり、ほっこりできるような時事ネタを入れてみては。それでもビジネスライクにしか返事が返ってこないようであれば、無理に砕けた感じにせず、相手を気遣う文面をさりげなく入れて様子を伺ってみましょう。
Q. メールの返信が必要ない場合、返信不要と書くのは有効?
A. 返信不要は堅苦しいので、「お返事には及びません」などできるだけ柔らかい言い回しが理想的。逆に相手から返信不要とメールが来た場合はできれば無視せずに、「お気遣いありがとうございます」と簡潔に返信して、こちらが終わらせましょう。
Q. 追伸だけが続いた時の適切な終わらせ方は?
A. 仕事に必要な要件のやりとりは済んでいるのに、プライベートな内容の追伸が何度も続き、どう終わらせたらよいか悩む…。そんな時は、「長々と失礼しました。引き続きよろしくお願いいたします」と、相手に配慮しながら簡潔に返信して、メールを終わらせるのが妥当だと思います。
北條久美子さん ライフスタイリスト。エイベックスグループホールディングスの人事部を経て、キャリアカウンセラーを取得し独立。年間約2500人にセミナーを行う。新著に『ビジネスマナーの解剖図鑑 第2版』(エクスナレッジ)。
※『anan』2024年4月24日号より。マンガ・日向山葵 取材、文・鈴木恵美
(by anan編集部)