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「おかげ横丁」を散策! 江戸時代の人々の伊勢への思いを感じる【総研神社部】

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2023.12.18

写真・大内カオリ 文・三谷真美 PR・神社本庁

3年目を迎えたanan総研の「総研神社部」が、2023年も活動! 新メンバーが加わり、「神宮大麻(じんぐうたいま)」のことや、伊勢神宮のお祭りの中でもっとも重要とされている「神嘗祭(かんなめさい)」について、全3回にわたって深堀りします。第3回となる今回は、江戸時代に大流行した「おかげ参り」の頃の風情が残る「おかげ横丁」へ総研神社部2名が行き、 全国から伊勢に人が集まる理由や歴史を学びます。

全国から伊勢神宮を目指した「おかげ参り」について調べてみよう

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左から、岩根沙恵子さん(anan総研No.304)、齊藤彩さん(anan総研No.76)。

三重県の伊勢神宮で行われた「神嘗祭(かんなめさい)」を実際に見学したanan総研神社部の2人。そこで知った、江戸時代の人々が全国から伊勢を目指した「おかげ参り」について調べるため、伊勢神宮内宮(ないくう)の門前町にある「おかげ横丁」を訪れました。

前回記事:【総研神社部】伊勢「おかげ参り」とは? 神嘗祭の見学レポ!
前々回記事:【総研神社部】伊勢神宮でもっとも重要なお祭り「神嘗祭」って?


江戸時代、およそ60年周期で「おかげ参り」が大流行!

「おかげ参り」とは、日本人の総氏神として仰がれる天照大御神(あまてらすおおみかみ)をおまつりしている、伊勢神宮へ参拝すること。「お伊勢参り」とも呼びます。

江戸時代にはおよそ60年周期で、数百万人規模の人々が「おかげ参り」をする現象が起こりました。全国から歩いて参拝するため、東北地方からは片道100日程度かかることも。それでも伊勢神宮への参拝は、人々の生涯かけての願いだったと言われています。


皇學館大学の小林郁さんに教えてもらいました!

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今回お話を伺ったのは、皇學館大学・研究開発推進センター 助教である小林郁さん。「おかげ横丁」を案内してもらいながら、「おかげ参り」について教えてもらいました。

齊藤 全国から歩いて伊勢を目指すのはとても大変なことなのに、人気だったんですね。

小林 そうですね。村ごとに“伊勢講(いせこう)”という団体をつくり、みんなで積み立てたお金で代表者が参拝に行く習慣があったのですが、それ以外の人の中には、誰にも伝えずに柄杓(ひしゃく)1本だけを持って伊勢へ旅に出る、抜け参り(のちに「おかげ参り」と呼ばれる)をする人が現れるほど、「伊勢神宮」への参拝は人々のあこがれでした。

岩根 柄杓を持っていくんですか?

小林 そもそも伊勢参宮にはお金がかかるのですが、柄杓が「おかげ参り」の目印となり、無一文でも道中で施しをしてもらえる風習がありました。「おかげ参り」をする人に食事を食べさせたり、新しいわらじを提供したりと、慈善活動をすることで、神様のおかげをいただくという考えだったんです。

齊藤 どうして大変な思いをしてまで、人々は伊勢を目指したのでしょうか?

小林 伊勢神宮は、天皇陛下が国家の安泰、国民の安寧を祈る特別なお宮であると同時に、日本人の総氏神様としても信仰を集めていたからです。

それだけでなく、非日常の世界を体験したいという思いもあったのかもしれません。たくさんのお店に立ち寄ったり、豪華な食事をすることができたので、ユートピアのような存在だったらしいです。


当時の町並みを再現した「おかげ横丁」

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明治以降、御師制度の廃止や交通機関の発達などにより、人々の伊勢参宮の形は大きく姿を変えました。昭和20年代には第二次世界大戦後の影響により参宮者の数が一時期落ち込みましたが、高度経済成長期を迎えると再び上昇傾向となりました。この当時、内宮周辺の町にはお土産を売る店がいくつか並んでいたのですが、参宮者数が上昇する一方、なかなか町まで足を運ぶ人は増えなかったようで、江戸時代には活気にあふれていた内宮の門前町(現在の「おはらい町」)も、昭和60年代には年間の来客数が20万人に落ち込んだとされています。この状況を危惧した地元の会社である株式会社赤福が、平成5年の式年遷宮に合わせて、伊勢路の伝統的な町並みを再現しようとつくったのが「おかげ横丁」で、町を整備して10年で、年間の来客数が300万人強まで回復したと言われています。また、伊勢神宮への参拝者数もその後増え続け、平成25年度の式年遷宮の年は1420万人を超え、コロナ禍を経た現在も年間670万人ほどが参拝に訪れています。

小林 「おかげ横丁」の名前には、おかげ参りと、商いを続けてこられたのは伊勢神宮のおかげという2つの意味が込められています。再現する際に、切妻、入母屋、妻入り様式など日本の伝統建築様式を取り入れています。

齊藤 昔の景観が再現されているから、江戸時代のおかげ参りを体感することができますね。

小林 そうですね。当時は参宮者の食事や宿泊の世話、伊勢近辺の観光案内なども行っていた、御師(おんし)の邸宅が建並ぶ地域でした。

また、当時は御師がお神札を奉製していて、それを「御祓大麻(おはらいたいま)」と呼んでいました。ですが、明治4年の神宮改革によって伊勢御師が廃止になったことで、伊勢神宮で公式に作られ、全国の神社で受けることができるように。これが現在の「神宮大麻(じんぐうたいま)」で、伊勢神宮のお祭りが国家の安泰、国民の安寧を祈るものであるように、神宮大麻にも同じ祈りがこめられています。

岩根 おかげ参りや「おかげ横丁」としての町が、今もなお、文化として根付いているのはなぜでしょうか?

小林 個人的な意見になりますが、日本の伝統文化を守り受け継いでいきたいという伊勢の人々の誇りだと思います。どのお店も、長年培ってきた、おもてなしの心を大切にしています。


「おかげ横丁」は、伊勢グルメの宝庫!

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岩根 「おかげ横丁」の名物グルメと言ったら、餅菓子と伊勢うどんですよね!

小林 「赤福」に代表される餅菓子は腹もちが良いため、伊勢までやって来る当時の参宮者に重宝されていました。そのため、伊勢へ向かうために作られた街道の途中には、餅菓子が名物となっている地域が多くあるんですよ。


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小林 諸説ありますが、うどんをやわらかく茹で、たまり醤油をかけて食べる伊勢うどんは、伊勢の郷土料理でした。ふやけているうどんは消化がいいので、長旅で弱った胃腸にやさしく、重宝されていたのかもしれません。

どちらも、今でいうファストフードのような存在で、疲れた参宮者にすぐ提供できるため人気だったのでしょう。

齊藤 餅菓子も伊勢うどんも、伊勢を訪れた人たちの疲れを癒すためだったんですね。ご当地グルメのひとつひとつに意味があることを知ることで、より楽しんで食べることができます!

小林 ご当地グルメのお土産として「さめのたれ」も有名です。元々はお土産ではなく、伊勢神宮のお供えものである、鮫の干物がルーツです。伊勢志摩地方でしか食べられていなかった鮫の干物のみりん味やしお味は、お酒のおつまみにも人気ですよ。


【総研神社部】の活動によって「伊勢神宮」とのつながりを再確認!

齊藤 「おかげ横丁」のあたりは、古くから伊勢神宮を訪れた人たちの楽しみの場であったと再認識。改めて伊勢神宮が私たち国民にとって欠かせない存在だと思いました。

岩根 おかげ参りや「おかげ横丁」の歴史について、家族や友達に伝えたい。今までは何となく実家の神棚に手を合わせていましたが、「神宮大麻」が伊勢神宮の神様とつながっているということを知ったので、これからはお神札を通じて平穏に暮らせることへの感謝の気持ちを祈りたいです。

全3回にわたって、anan総研神社部令和5年の活動をお届けしました。「神嘗祭(かんなめさい)」を実際に奉拝し、おかげ参りのありがたさや「伊勢神宮」とのつながりを感じたメンバーは、自宅で「伊勢神宮」の神様・天照大御神をおまつりできる「神宮大麻」をおまつりしたいと思ったようです。みなさんも、神社を参拝した際には、ありがたいご利益のあるお神札「神宮大麻」を受けられはいかがでしょうか。


取材協力:神宮司庁、おかげ横丁
皇學館大学:https://www.kogakkan-u.ac.jp/
神道博物館:http://kenkyu.kogakkan-u.ac.jp/museum/


「神宮大麻」は、自宅でどのようにおまつりするの?

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「神宮大麻(じんぐうたいま)」とは、全国の神さまの中心であり日本人の総氏神として仰がれる、伊勢神宮の神様・天照大御神(あまてらすおおみかみ)の力を宿し、「自宅でもまつることができるように」と奉製されたお神札のこと。

毎年、新しい「神宮大麻」を受けると共に、地域をお守りくださる氏神様や、崇敬する神社のお神札を一緒に神棚におまつりして、ご家庭の一年の無事と幸せを祈るのが、日本の習わしとなっています。

神棚には大きく分けて2種類あり、毎年買い換える必要はありません。「三社造り」は、中央に「神宮大麻」、向かって右に地元の氏神様のお神札、向かって左に崇敬している神社のお神札をお納めします。「一社造り」は、「神宮大麻」を一番手前に、その後ろに氏神様、崇敬する神社があればその後ろにお神札を重ねてお納めします。

神棚は、南向きあるいは東向きで、目線より高く、清浄な場所におまつりし、お米や塩、水などをお供えするのが習わしですが、こだわり過ぎず、自分のできる形でおまつりしましょう。何よりも尊ぶ心を持って日々丁重にお参りすることが大切です。

神宮大麻について 詳しくはコチラ

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