世界勢力の変化に応じ微妙に違いが。現在の肝はインド。
最近、ニュースでよく耳にする「グローバルサウス」という言葉ですが、使い方によって、示す地域や意味合いが変化するようになってきました。
これまでは、先進国の集中する「グローバルノース(north/北)」に対してのサウス(south/南)。主にアフリカなど、植民地政策にも遭い、貧困や飢餓などさまざまな課題を抱える開発途上国。先進国はこれらの地域へ投資を強めていくことが必要だという文脈で、よく使われてきました。
また、北半球に民主主義の大国が多いことから、それらの国々に対して、地理的には南半球ではなくても独自外交で権威主義的な国々を「グローバルサウス」と呼ぶこともあります。その場合は、インドやタイ、カンボジアなど東南アジアや中南米が含まれます。西側の自由主義国とは違うという意味合いです。
もう一つには、ロシアや中国、旧東側でもなく、アメリカや欧州の西側陣営でもない第三の陣営という枠組みで「グローバルサウス」が使われることもあります。
今、グローバルサウスで注目される代表的な存在は、インドです。今年5月、G7広島サミットが開かれましたが、G7は西側のアライアンス。同月、インドでは「上海協力機構(SCO)」外相会議が開かれました。これは、ロシア、中国、インド、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、パキスタンの8か国で作る国家連合で、2001年に発足。西側とは真逆の視点で、「安全保障を脅かしているのは西欧諸国で、我々の国土を蝕んでいる。平和と安定と秩序を取り戻すため、G20に働きかけよう」と話されています。インドのモディ首相は広島サミットにも特別に招かれましたが、9月にはプーチン大統領がウクライナ戦争後初めてインドを訪ね、首脳会議を行う予定。インドは両陣営の綱引きの真ん中にいる形なのです。
グローバルサウスは、言葉自体が先進国目線すぎるから使わないようにしようという動きも一方であります。西側中心に世界を見ていると、現実を見誤ることも多々あります。常に世界を俯瞰することが重要でしょう。
ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。
※『anan』2023年7月19日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)