疲弊した現場があぶりだされた。政策に反映を。
「#教師のバトン」は、昨年3月に文部科学省が始めたプロジェクト。ベテラン教師から若手教師に、現職の教師から教師をめざす学生や社会人に、先生方のノウハウや学校にまつわる日常のエピソードなど、情報をSNSを使って発信、共有。教職の魅力を広めてもらう目的でスタートしました。ところが蓋を開けてみたら、いい話もある一方で、教育現場の過酷な状況を訴える投稿が多く寄せられ、国はこれらの実態を把握していなかったのではないか、ということが明らかになりました。
最も問題になったのは長時間労働です。2018年のOECDの調査によると、日本の中学校教師の仕事時間は週56時間で、48の調査に参加した国と地域のなかで最長。文科省の調べでは、1950~’60年代と2000年代以降では、小中学校の教育活動時間は近年のほうが長くなっていますが、これは部活動や教育相談、進路相談など、授業以外の時間が増えたためといわれています。しかし、残業時間は一律に決められていて固定化されたままです。また、休日やプライベートの時間を割いて子どもたちの指導にあたらないといけない、ブラック部活動問題もあります。近年は、子どもたちのメンタルヘルスの状況が悪化し、教師の負担を大きくしています。デジタル化や、コロナ禍では消毒や感染対策も先生方の肩に重くのしかかりました。
「#教師のバトン」であぶりだされたさまざまな不満は、現場のニーズです。現場の声を国は、具体的な政策にぜひ落とし込んでほしいと思います。
部活動の指導に関しては、土日は地域のスポーツ教室に委託する動きも出てきています。しかし、社会経験の豊富な人が、教員免許を持っていなくても1~2コマの授業を担当できるなど、外部参入の障壁を低くする抜本的な改革も必要なのではないかと思います。
そもそも教育に潤沢な予算をかけないから、数が足りずに教師に負担がかかっているという指摘もあります。OECDのなかで日本は、教育費がGDPに占める割合が平均以下。これを改善しないと疲弊した状況は変わりません。みなさんもぜひ「#教師のバトン」で現場の声を知ってください。
堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。
※『anan』2022年8月31日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)