そもそもSDGsって何? 日本の20~30代にとっても身近な課題とは

ライフスタイル
2022.03.23
もはや誰もが知っている言葉になったSDGs。でも、その意味をちゃんと説明できる人はまだ少ないのでは? まずは身近な話を交えながら基本のキを分かりやすく解説。
sdgs

SDGsという言葉や、エコバッグを持ったりプラスチックのストローは使わないなどのSDGs的行動は、もはやすっかり日常に。でも、そもそもSDGsが何を目的としているのか、また“持続可能な開発”とはなんなのか。これを理解している人は実は少ないのでは。企業向けにSDGsに関するコンサルティングをしている玉木巧さん曰く、

「持続可能とは、今ある場所、ものがこの先に“続けられる、あるいは続く状態にある”ということ。SDGsは“今を生きる私たちの生活”の維持、さらに“未来の人たち”の人生の持続、そして人類が生きる場所である地球を存続させるために、設定された目標なのです」

地球を続けるために、というと、まず思い浮かぶのが環境のこと。

「地球の資源は有限で、今は枯渇に向かっています。すべての問題は、別の場所に生きる人、あるいは未来と密接に繋がりがある。例えば魚を必要以上に獲ることで、どこか遠くに住む人たちが不漁になって仕事が続けられなくなるし、なくなってしまえば未来の人は食べることができなくなる。世界をもっと包括的に捉え、企業や国、個人が垣根を越えて協力し、対策をしようというのが、SDGsの大きな特徴です」(持続可能な観光専門家・坂田華さん)

SDGsには他にも教育や働き方、国や人の不平等、技術革新に関する目標なども含まれる。「え、それって何がどう“持続可能”なの?」と思う人も多いはず。しかし東工大准教授の治部れんげさんは、そこにこそ、日本の20~30代にとって身近なSDGsがある、と言います。

「私が出版社に勤めていた20代の頃、朝から夜通し仕事をし始発で帰る、というような働き方をしていた結果、体を壊してしまったんです。仕事は楽しかったしやり甲斐もあった。でもこの働き方をずっと続けることは無理だなと、そのときに気がつきました。一方企業側からしても、いつ倒れるか分からない従業員が多い状況では、会社の持続が危うい。しかも日本は少子高齢化社会で人口が減少。かつてのように父親だけが猛烈に働き、母親は家庭を守る、という形だと、労働人口が減っているのでもう社会が続かない。性別にかかわらず、みんなが働く必要がある。そこで、男女ともに人間らしく健康的に仕事をするために、働き方を変え、ジェンダー平等を達成する必要がある、ということなんです」

絡み合う多数の課題は、簡単には解決できません。でもだからこそ、一人一人が取り組むことが大切。まずは、SDGsを自分ごととして考えるところからはじめてみましょう。

“持続可能な開発”って何?

名称はすっかりお馴染みになったものの、SDGs(Sustainable Development Goals)の内容を理解できているかというと…。持続可能? 開発って? まずはそこからおさらい。

SDGsとは、国連が掲げた未来への目標。

「2016年から2030年までの15年間に達成するべき、世界共通の目標」として、2015年に開催された〈国連持続可能な開発サミット〉に参加している全193か国によって採択された目標。地球上のほぼすべての国が採択した国際目標です。カラフルなデザインは、スウェーデン出身のグラフィックデザイナーが手掛けたもの。このようにポップな形で発信するのは、国連としても初めてだそう。

この目標が作られた、この世界の現状。

実はSDGsの前に、貧困撲滅や教育にまつわる8つの目標・MDGs(ミレニアム開発目標)の存在が。しかしこれは途上国開発に重きが置かれており、先進国にとっては身近にはならず…。その反省を受け、MDGsの達成期限の2015年に、新たに経済に関する目標を加えSDGsを採択。将来世代が住み続けられる地球を守りながら、経済成長を目指すという、すべての国と人々が関わる目標が登場した。

この目標が目指す先にある世界とは。

SDGsが目指しているのは、いま生きている人、そしてこれから生まれてくる人を誰一人として取りこぼさずに、2030年以降も“持続可能な社会”を実現させること。地球の自然資源を保護しながら、すべての人が平和のもと、健康で幸せに、“自分の生きたい人生”を生きられる、そんな世界を作ることが最終目標。世界中の国や企業、個人のすべてで、この目標達成に向け行動することが大切。

現在、目標はどの程度達成されているのか。

注力すべき目標や達成度は国ごとに異なるもの。達成度を国別に見た国際レポート「持続可能な開発目標報告2021」によると、対象となった165か国中1位はフィンランド、2位はスウェーデン、3位はデンマーク。日本は18位で前年度より1つ順位を下げた。全体で見ると、新型コロナウイルスのパンデミックにより、貧困率と失業率が増加。前年度より平均点は下落、深刻度は増している。

玉木巧(たまき・こう) 株式会社Drop SDGsコンサルタント。企業のサステナビリティ推進を支援。“SDGs経営”をテーマにした講演会は延べ40万人が参加。ウェブ「SDGs media」で情報発信も。

坂田華(さかた・はな) 持続可能な観光専門家、博士(経営学)、国連機関協力員。大学では自然科学を学び、観光先進国であるオーストラリアの観光マネジメントや自然保全に5年間関わる。

治部れんげ(じぶ・れんげ) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授、ジャーナリスト。ジェンダーに関する著書に『ジェンダーで見るヒットドラマ 韓国、アメリカ、欧州、日本』(光文社新書)が。

※『anan』2022年3月30日号より。イラスト・西尾彰典 参考資料・SDGs media

(by anan編集部)

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