社会のじかん

5~17歳の10人に1人が働いている? 他人事ではない「児童労働」問題

ライフスタイル
2021.10.08
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「児童労働」です。

自分の生活に実は関わっているかも、という意識を持つ。

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今年は児童労働撤廃国際年。就労最低年齢は国際基準で15歳とされており、原則15歳未満、または18歳未満で危険で有害な仕事に就くことは国際条約や法律で禁止されています。精神や身体にかかる影響が大きく、教育の機会を阻害するというのが大きな理由です。

6月にILO(国際労働機関)とユニセフが児童労働の推計を発表しました。それによると、5~17歳の児童労働者の数は1億6000万人、うち7900万人は危険有害労働に就いていました。これは世界の5~17歳の10人に1人が働いている計算になります。

その多くはコーヒーやゴム、カカオなどの農園、コットン栽培などの農林水産業です。農薬を使ったり、遺伝子組み換え作業を手で行ったりすると皮膚がただれ、成長が止まるなどの薬害が出てしまいます。また、アパレル分野は繊維の生産から縫製までの工程で児童労働が介在しているケースが多く、鉱山での鉱物資源の採取にも児童が関わっていることは少なくありません。

地域別にみれば、サハラ砂漠より南のアフリカ地域が8660万人。次に多いのはアジア・太平洋地域。バングラデシュの縫製工場やインドのマッチ製造工場、タイやミャンマーのえび加工工場などが挙げられます。インドやパキスタンでは、皮肉にも子供が遊ぶサッカーボールの縫製が児童労働で賄われていたことが明らかになりました。

児童労働を生み出すことは、本をただせば先進国に行き着きます。先進国の企業が労働力を安く買い叩くため、開発途上国の子供たちを使わざるを得ない状況に追い込んでいるのです。

日本で児童労働と指摘されるのはポルノの分野。小学生の水着グラビアや、アイドル活動が、大人たちの搾取ではないかと国際機関から非難の声が挙がっています。警察庁のデータによると、児童買春や淫行などの有害労働で、児童買春・児童ポルノ禁止法、児童福祉法の違反容疑で検挙された数が2020年に803件ありました。

児童労働なんて他人事と聞き流さず、国内の状況にも目を向け、衣服やジュエリーなど、あなたの生活にも児童労働が関わっているのかもしれないという想像力を持っていただきたいです。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2021年10月13日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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