社会のじかん

世界の格差是正なるか? 7月合意を目指す“グローバルミニマム税”とは

ライフスタイル
2021.07.10
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「グローバルミニマム税」です。

世界に広がる格差緩和を期待して、7月合意を目指す。

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グローバルミニマム税は、タックスヘイブン(租税回避地)問題の対処法として掲げられました。グーグルやアマゾンなど、グローバルに展開している巨大企業は、聞いたこともないような小さい島国に法人登記をしています。法人税の安い国や地域に籍を置き、多額の税の支払いを逃れているのです。小国は小国で、税収を得るために税率を極力低くし、積極的に企業誘致をしてきました。これがタックスヘイブンです。主権国家は多額の税収を失い、世界中で長年の問題になっていました。

そんななか、アメリカが中心となり、OECD加盟国を中心に140の国と地域に、グローバルミニマム税の実現を呼びかけたのです。世界的に最低税率を15%以上に決めて、法人税率の引き下げ競争に歯止めをかけようという提案です。7月にイタリアで開催されるG20財務大臣・中央銀行総裁会議にて、その合意を目指そうとしています。

主に対象となるGAFAやマイクロソフト社などはアメリカで生まれた企業ですから、これはバイデン大統領流の理にかなったアメリカ・ファーストと言えます。トランプ前政権は、アメリカ国内に本籍を置く企業の税を優遇し、関税を高くすることで対処しようとしていましたが、カリフォルニア系の企業の多くが反トランプ派だったため、次々に国外に出ていってしまいました。バイデン政権はそれに歯止めをかけようとしています。

巨大グローバル企業に課税できるようになれば、多額の税収を再分配できます。世界の格差是正の一環として打ち出されているというのが、グローバルミニマム税の大きなポイントです。

ちなみに日本の法人税は20%台。OECD諸国の中では高いほうです。経団連はもっと下げてほしいと国に要請しています。日本のタックスヘイブン対策は令和元年に変わり、事業実態が他国にあっても、日本の親会社による管理が確認されれば、タックスヘイブン税制の適用除外と判定されます。

残念なのは、グローバルミニマム税の対象となる世界を席巻する多国籍企業の中に、日本の新しい企業を送り込めていないことです。足元の産業をどう育てるかが課題となっています。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2021年7月14日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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