性をタブー視することのない、生きやすい未来を目指して。
――そもそも「フェムテック」とは何ですか?
アミナ:フィメールとテクノロジーを組み合わせた言葉で“女性の健康問題をテクノロジーで解決するサービスやモノ”を指します。
アカネ:最近は吸収性のあるショーツや月経カップがその一例として紹介されることも多いですね。
アミナ:生理用品だけではなく、妊娠や不妊、産後ケア、更年期、セクシュアルウェルネス、ヘルスケアなど、フェルマータでは女性の選択肢を広げてくれるプロダクトやサービスを総称しています。
リア:フェムテックという言葉が2012年にドイツで生まれてから、欧米を中心にさまざまなアイテムが誕生していて、なかでも近年、アメリカでヒットしたのが「エヴァ2」。従来型の挿入を目的にしたペニス型のバイブではなく、クリトリスを刺激するためのプレジャートイです。
アカネ:クリトリスにかぶせて大陰唇に挟み込んで装着すると、ハンズフリーでクリトリスに刺激が伝わり、快感が得られます。ペニスを挿入しながらセックス中に使えるし、セルフプレジャーにも使えるんです。
アミナ:開発者はコロンビア大とMITを卒業した女性2人で、女性視点でものづくりをしているから、デザインがかわいいんです。
アカネ:一見、プレジャートイだとは気づかない。私は家で植物と並べてディスプレイしてます(笑)。
リア:フェムテックはデザインが洗練されているものが多く、「ライオネス」もすごくクールなバイブレーター。実はこれ、中にセンサーを搭載していて、オーガズムを測定し、アプリにつないで可視化できるというデバイスです。
アカネ:女性は自分の性感帯を特定できない人も少なくないけど、「ライオネス」が膣内の締め付けを感知し、数値化して気持ちいいポイントを教えてくれる。自分で理解しておくとパートナーにも伝えやすいですよね。
――フェムテックが進化することは男性にも関係がある、と。
アミナ:「ブルームライフ」もそうです。これは妊娠中期以降の女性のお腹に貼って赤ちゃんの心音や動きを計測したり、陣痛のモニタリングができるデバイス。開発者は男性で、妊娠中の奥さんや赤ちゃんの健康状態を知りたいという想いから作られたんですよ。
アカネ:遠隔医療の一つとしても注目されているんですよね。
アミナ:そうですね。今は感染症のリスクがあり、病院に行きにくいという妊婦をサポートできます。
――産後ケアアイテムにはどういったものがありますか?
リア:骨盤底筋をトレーニングできる「エルビートレイナー」はそうですね。膣圧を感知するセンサーがついていて、スマホに接続し、膣の筋肉や圧力を計測。アプリに搭載されたゲームをクリアしながら、骨盤底筋が鍛えられます。
アカネ:骨盤底筋トレーニングにはボール状のダンベルのようなものがあるけど、これは数値化して自分の骨盤底筋がどれだけ鍛えられたか把握できるのがいい。
アミナ:骨盤底筋を鍛えることで、尿漏れや頻尿、子宮脱といった疾病予防にもつながるといわれていて、イギリスでは国民保険サービスの認可も受けています。
――日本発のプロダクトで注目しているものはありますか?
アミナ:「シーム」かな。専用の顕微鏡レンズで精子の状態をスマホで確認できるキットで、いわゆる男性用の妊活グッズですね。
アカネ:不妊の問題は男性側の原因が半数ともいわれているのに、自分の体について知らない男性も多い。このアイテムをきっかけに自分のことを知ってねっていう。
リア:日本発ではないけど、男性が使うアイテムは「オーナット」も。リングをペニスに装着して、性交時の痛みを和らげてくれる。
アカネ:性交痛を感じる場合って女性側に潤滑剤を塗ることがほとんどだけど、男性側がこうしたアイテムを身につけることでセックスの楽しみも広がるはず。
――ほかに注目アイテムは?
アミナ:「ジョイラックス」は膣に挿入してLEDを照射し、膣内の筋肉をトーニングするプロダクト。感度が上がり、乾燥しにくくなる効果があるといわれています。
アカネ:「ポピット」は音と振動を読み取るセンサーが入っていて、ピルなどシート状の薬に装着すると、飲み忘れを知らせてくれる。月経困難症に悩む女性だけじゃなくて、性別や年齢問わず使えます。
――フェムテックが進化することで未来はどうなるのでしょうか?
アミナ:フェムテック商品にはウェアラブルデバイスを活用しているものが多く、そこで集積されたデータが今後、女性の健康管理や予防医学の観点で貢献すると期待されています。実は今、使われている医学的なデータって男性を対象に計測したものがほとんどで、女性の体についてはまだまだ知られていないことも多いんです。
リア:生理周期やPMSのデータの中には60年間以上、アップデートされていないものも。
アミナ:フェムテックのアイテムが広く普及し、一人一人の個体数値を記録して、生理や妊娠、オーガズムや更年期にまつわる大規模なビッグデータが解析されれば、古いままの“平均値”にあてはめることなく、現代女性のさまざまな課題を解決できるはず。
アカネ:タブー視されていた女性特有の健康課題についてオープンなディスカッションがしやすくなり、理解が深まれば、女性はもちろん、誰もがもっと自分らしく生きられる社会になるはずです。
パートナーと一緒に楽しめる、ハンズフリーのおもちゃ。
エヴァ2
伸縮性のある羽のようなパーツを外陰部にフィットさせ、ハンズフリーでクリトリスを刺激。パートナーと密着しながら楽しめる。モミの木カラー、桃色の2色展開。¥19,980(税込み)
スマートなバイブレーターが自分の性的反応を測ってくれる。
ライオネス
世界初のスマホ連動のスマートバイブレーター。膣内の状態を感知し、スマホへ記録。自分の性感帯を可視化。パートナーとのコミュニケーションが深まるかも(近日発売予定)。
ぷにぷにのリングがクッションに! ペニスにつけて女性の性交痛を軽減。
オーナット
リング状のシリコンをペニスにつけることでクッションになり、挿入時の痛みを和らげてくれる。リングは連結でき、1つだけでも、4つ全部をつなげて使用することも可能(近日発売予定)。
fermataのみなさん 国内外のフェムテック商材や企業支援を通して、市場の活性化を目指すグローバルチーム。右から、アミナさん、リアさん、アカネさん。オンラインショップと併せて、フェムテック商品が買える路面店『fermata store in New Stand Tokyo』も。このページの掲載商品の問い合わせはこちら。https://www.hellofermata.com/
※『anan』2020年8月12-19日合併号より。写真・中島慶子 取材、文・浦本真梨子
(by anan編集部)