世界の時流にならい、環境対策に本気で取り組む一年に。
日本の環境対策は世界の取り組みから完全に乗り遅れています。昨年、マドリードで開かれたCOP25(気候変動枠組条約第25回締約国会議)の会期中に、日本は「化石賞」を受賞しました。地球温暖化対策に消極的な国に与えられる不名誉な賞です。日本がまだ石炭、火力発電に頼っていることから受賞に至りました。しかし、2020年はいよいよ日本も“環境”がキーワードの年になると思います。たとえば、次世代リチウムイオン電池、水素の燃料電池など、新しいエネルギーの市場が拡大するといわれています。石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料は燃焼させるとCO2を発生しますが、水素エネルギーは利用してもCO2は発生しません。家庭やビル、車やバス、船舶などで、今後水素エネルギーを使った蓄電池が積極的に使われるようになるでしょう。2020年度までに、水素ステーションは全国160か所に整備される予定です。国や一部の自治体では、太陽光発電を導入した蓄電システム、電気自動車用の充電設備の設置に補助金を出していきます。蓄電池の普及が進めば、将来、自分の家で溜めた電気を使うようになり、生活も変化していくと思います。
また、国の「スーパーシティ」構想も進んでいくでしょう。これはAIやビッグデータを活用する都市設計で、キャッシュレスや遠隔医療のほか、自動ゴミ収集、エネルギーや上下水、リサイクルをコミュニティで最適に管理することなどをイメージしています。
日本の環境対策が世界から遅れた原因は、コストがかかると産業界の猛反対があったからです。また、原発依存が強すぎて、2011年の震災で原発が止まった途端に大量のCO2排出国になってしまいました。しかし、いまやコストなどと言っている場合ではありません。
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昨秋には日本の学生たちも気候変動対策を訴えるデモを行いました。原発をどうするのか。再生エネルギーへの投資を高めるのか。止まった議論を再開するべきときだと思います。環境対策に積極的な姿を示さなければ、世界中の投資家は日本に投資をしなくなり、私たちの生活はよくなりません。
堀 潤 ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。映画『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)が3月7日公開。
※『anan』2020年1月29日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)