意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「水道民営化」です。
社会のじかん

水道管の再整備が必要な時期。不透明なところも。

昨年12月に「改正水道法」が成立しました。これにより、上下水道事業が民営化されやすくなります。改正の動きは数年前からありました。地方の自治体の財政基盤が弱っており、全国隅々まで水道インフラを維持するには、効率よく経営できる民間に任せたほうがいいという判断からです。

日本の水道インフラは、主に高度成長期に整備を進めていきました。水道管の耐用年数は約40年のため、いままさに再点検が必要な時期なのです。昨年6月に起きた大阪北部地震では、老朽化した水道管が破裂し、高槻市や箕輪市で約9万戸が一時期断水に追い込まれました。今後こういう被害は増えていくだろうといわれています。

実は水道料金は全国一律ではありません。破損した水道管を修理するにも、住民の数により負担額は変わります。平成28年4月の水道料金を見ると、全国平均は月額3227円。最も安いのは兵庫県赤穂市の853円で、最も高いのは北海道夕張市の6841円と、約8倍の格差があります。

水道法の改正により、「コンセッション方式」といい、水道施設の所有権は自治体にあり、運営権のみを民間に売却できる仕組みを取り入れることになりました。民営化した場合の問題は、水道料金が高くなること。フランスは1980年代にコンセッション方式で水道民営化を実施しましたが、3か月後には水道料金が値上がりし、25年間で倍以上に高騰したため、2010年に公営化に戻りました。

民営化でもうひとつ懸念されるのは、インフラの維持・管理。災害などが発生した場合に復旧されるのか? 日本には、水メジャー(上下水道事業を担う巨大な国際企業)はありませんから、フランスのヴェオリア社やスエズ社、アメリカのGE社などが参入することになるでしょう。それらの海外企業が、災害で水道管が破損した際の費用負担をするのか。そもそも老朽化した水道管をまず整備しないことには、商売も始まらないのでは? という疑問も。ヨーロッパでは公営化に戻す動きが主流ななか、日本のこの、水道民営化に移行しようとする流れは、実は不透明なところもあるのです。

堀

ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2019年2月20日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

エンタメ-記事をもっと読む-_バナー

※みんなで始めればもっと楽しい。地球にやさしい選択(クールチョイス)。
[gunosy]
#男の体験談 について、もっと深く知りたい![/gunosy]

Share

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line
ライフスタイル

Recommend

こちらの記事もおすすめ

Today's Update
クリエイター・Ame LIFEの上質なご自愛「完成した時よりも編んでいる最中が楽しい」
クリエイター・Ame LIFEの上質なご自愛「完成した時よりも編んでいる最中が楽しい」
Lifestyle
Today's Update
俳優・恒松祐里の上質なご自愛「編み物は脳をリセットできる特別な時間です」
俳優・恒松祐里の上質なご自愛「編み物は脳をリセットできる特別な時間です」
Lifestyle
Today's Update
獣医師が教えてくれた“猫に腸活(※1)”のススメ 毎日食べるフードで始める愛猫の腸活(※1)習慣!
獣医師が教えてくれた“猫に腸活(※1)”のススメ 毎日食べるフードで始める愛猫の腸活(※1)習慣!
Lifestyle
PR
【anan総研】自炊健康のため、節約のため…。みんな、普段から自炊してる?
【anan総研】自炊健康のため、節約のため…。みんな、普段から自炊してる?
Lifestyle

Movie

ムービー

Regulars

連載