映画/ME:I・MOMONAの『みちをさがして』#2

ME:IのMOMONAさんが、旅をするなかで触れた新たな経験や、日々過ごす中でふと出合った「未知」のことやものを語るエッセイ連載「みちをさがして」。第2回は映画を観ることで味わうことができる時代や場所を超えた「心の旅」について綴ります。


"旅"といえば、時間とお金と…費やさなくてはいけないもので溢れている。日常化しないイベントだからこそ、いつもとは違う感性が生まれ、新しい感覚で多くのものに触れたり、向き合ったりすることができるのだと思う。

でも実は、心だけならいつでもどこへでも、旅に出ることができる。

私はそういった理由で"映画"が好きだ。映画のスクリーンに目を向けている間、心はスクリーンの中の世界に連れ出されている。

登場人物の人生や心情に、どれほど感情移入するかは作品にもよるだろう。でも必ずしも役に共感をする必要はない。

私は映画において、ストーリーや登場人物に惹かれる作品と、世界観や映像美に惹かれる作品とは、案外別のものだと感じることもある。

元々の性格として私は、好きなものに対して何故好きなのか明確に説明ができないと、もどかしい気持ちになるというところがあった。なので以前は『ただ、なんとなく惹かれる』という感覚は、あまり自分の中で尊重してこなかった。つまり先ほど述べたうちの前者のような、作品の持つメッセージ性や登場人物の人間性から感じ取った良さなどを説明できる作品だけが、自分が惹かれたものとして認められるものだった。

でも後者のような作品だって、スクリーンの中の音や光、景色に惹かれるというだけで心はその世界観の中をじゅうぶんに旅することができる。様々な作品との出会いを経験するごとに、段々とそう感じるようになり…特に旅を好きになってからは、忙しない日常の中でも心の旅ができるツールとして、幅広く映画を嗜むようになった。それと同時に、惹かれた理由をどう説明しようとか、難しく考えることもなくなっていった。

私にとってこれは、映画というジャンルがそれまでより更に好きになり、特別なものへと変わったきっかけだった。

 

映画を通じての旅。その特別優れた点は、時代ごと移動できるということ。

実際に行う旅といえば、その土地の歴史がどのように残されてきたのか、時間の経過を建築物などから直接感じられる点にロマンがある。それは現代を生きる私達だからこそ、体験することのできる旅の良さだ。

一方で映画の中を旅することは、ずっと昔の生きたことのない時代の中をリアルタイムで生きられるというのがやはり特別な点だと思う。国も時代も、簡単に移動することができるのは作品を通じてだけだ。

映画を"観る"だけでなく、心ごと旅してみようという気持ちで作品に向き合うと、今までには無かった気付きや、新たな自分の願望に出会えるかもしれない。

 

私が今までいくつもの心の旅をしてきた中で、印象的だった映画作品を一つ紹介したい。

2004年に公開された「きみに読む物語」は、40年代のアメリカ南部シーブルックが舞台になっている。ワンピースの柄も、道路を走る車や観覧車の造りも、時代背景からなる人々の価値観や生き方も、現代を生きていて実際には見たことのないものばかりだ。

夕焼けの茜色に包まれる湖の上を、持ち物のひとつもなしで、木製のボートでただ進んでいく…実際にした事もなければ、見たこともないのに、映像の奥に心奪われていると、遠い過去の記憶を辿っているような、どこか懐かしい感覚が湧いてくる。

そんなボートの上や、草花に囲まれたベンチの上、月明かりに包まれた静かな部屋の中など様々な場所で、おじいさんが大事そうに一つのノートブックを抱え、そこに記されたある物語をおばあさんに読んで聞かせていく。

冒頭から穏やかに流れていく、普遍的な日常のシーンの数々は、物語が終盤へ差し掛かるにつれて全てが、深い優しさと切ないほどの美しさで溢れているものだと感じさせられる。

現代ならば、美しい景色や大切な人の愛おしい瞬間を簡単にスマートフォンのカメラで収められるし、SNSでそんな思い出の数々を不特定多数に向けて、共有したり拡散したりすることができてしまう。

でも、あの時代の中では日記に記すことくらいでしか、どんなに大切な思い出も形として残すことはできなかっただろう。それに、事細かに日記に記したとしても、その内容を語ったり伝えたりすることのできる相手の数は限られている。

だからきっと、誰にも知られないままの愛おしく美しい思い出や記憶が、この地球上の様々な風景の中に大切に仕舞われているのだろうと思った。そして、そんな大切なものを語らう相手は今の時代でだって、人生でたった一人でもきっと良いのだろう。

日々この時代を生きる私たちが、目の前のことに必死に向き合って忙しなくしていると忘れてしまうような、些細でいて最も尊い感情や瞬間。その数々を、生きたことのない時代の中を心で旅してみて、私は思い出した。

だから15歳の時に出会ったこの作品は、いつまでもこの先もっと大人になっても、私にとって大切な作品であり、何度だって訪れたいお気に入りの旅先だ。

 

生きたことのない時代をただ想像するだけではなく、作品を通じてリアルタイムにその中で動き続ける人々の感情や葛藤を知り、自分の心もそこで生きてみる。そして、旅をするように心を自由に動かしてみる。

そうすると、忘れかけていた感情がまたあたたかみを帯びていき、生まれたことのなかった感情が湧いてきたりする。

"旅"は人々の日常のそばにいつだってあって、心一つでどこへだって赴くことができる。沢山のお金や時間、重たい荷物は必要ない。

あなたの感性でしか、出会うことのできない学びや気付きが、数多の作品の中にきっとあるはず。

ぜひ、お気に入りの旅先を見つけてみて欲しい。

(MOMONAさんの連載エッセイ『みちをさがして』は毎月15、30日に更新。次回は11月15日公開予定です)

Profile

MOMONA

2003年10月22日生まれ、神奈川県出身。日本最大級のサバイバルオーディション番組のガールズ版 『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』 から誕生したガールズグループME:Iのリーダー。今年8月からは、2度目となるアリーナツアー「2026 ME:I 2ND ARENALIVE TOUR“ME:I WAY”」を全国4都市で開催。12月2日(水)には5TH SINGLE『Rock & Roll Pretty』をリリース。個人としては映画「口に関するアンケート」に出演するなど、活動の幅を広げている。

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ワンピース(COCO DEAL TEL. 03-4578-3421) タンクトップ(Ungrid TEL. 03-5447-6531)

撮影・中島慶子 文・MOMONA スタイリング・松尾正美

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