意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日本人と犬」です。
愛犬家は増えるが社会意識、環境はまだ追いつかず
JR東海は、東海道新幹線の1車両を貸し切りにし、愛犬をケージから出して、一緒に座って旅行できるツアー「わんわんエクスプレス」を試験的に運行し、好評を博しました。犬同伴の旅行やお出かけに伴う消費は「肉球経済」と呼ばれており、今後、乗り物や宿などで広がりが期待されています。
一方、数年前から、サモエド犬と触れ合える「サモエドカフェ」が各所にオープン。原宿にあるお店は外国人観光客の人気スポットにもなっています。
時代のニーズによって犬種は改良されてきました。明治時代には洋犬ブームが到来し、日本古来の犬との交配が進み、日本犬は変容していきました。そこで昭和3年に「日本犬保存会」が創設され、日本犬の基準を設け、天然記念物日本犬の保護と繁殖を担うようになります。日本犬は、柴犬、紀州犬、四国犬、甲斐犬、北海道犬、秋田犬の6種類。気迫と威厳があり、忠実で従順、素朴などの特徴があります。
日本では家畜としての犬は縄文時代からいて、埋葬された骨も見つかっています。狩猟用に飼われていたと考えられますが、弥生時代の遺跡によると食用にされていた地域もあったようです。犬がペットとして飼われるようになったのは明治以降。ところが太平洋戦争中、日本犬は、北方で戦う兵士の軍服用の毛皮や革を採るために大量に殺されてしまったんですね。戦後、日本犬の保護活動は活発になります。
現在、日本国内で飼われている犬は約682万頭。猫に比べ減少傾向にありましたが、近年は20〜30代の単身者や若年層で犬を飼う人が増えています。
ヨーロッパでは「アニマルウェルフェア(動物福祉)」という、動物を感受性を持つ生き物として扱い、ストレスなく健康的に生きられるよう配慮する考え方が進んでいます。ペットショップでの犬猫の販売禁止や、乗り物や店でも犬と自由に過ごせる場所が多くあるのもそのためです。ところが日本では、家畜飼養の現場では取り入れ始めても、ペット回りでは犬猫を殺傷しても器物損壊罪とされたり、乗り物に忘れると落とし物と同じ扱いに。肉球経済の前に、アニマルウェルフェアを進めることが先決なのかもしれません。
五月女ケイ子解読員から一言

昔は所有物の感覚が強かった犬も、いまは家族のような大切な存在になっていますよね。ちなみに昔、東京ムツゴロウ動物王国でたくさんのサモエド犬に迎えられたのですが、日本のサモエド犬の半数はムツゴロウ王国の系譜と知り、感慨深くなりました。
解説員
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
Profile
五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2508号(2026年8月19日発売)より
































