フィナンシェには2段階の美味しさがあると思う。焼きたてのサクフワと広がる旨みと、包装されてしっとり馴染んだ味わいだ。焼き菓子の新ブランド『ETEL』を始めた、『Mr. CHEESE CAKE』の田村浩二シェフが追ったのは後者。「焼き菓子でも口溶けよくリッチ。素材が醸すフレーバーの最高点を探りました」。そのために、甘味も香りも濃いシチリア産アーモンドのパウダーを通常の3倍も投入し、混ぜ方などもひと工夫。齧るとしっとりと潤いすら感じられ、アーモンドの杏仁香が焦がしバターに重なり溢れ出す。え? 焼き菓子だよね? と二度見するほどジューシーで、フィナンシェなのに初めて食べる感覚!
さらに、料理人でもある田村さんらしい自在な香り使いで、フィナンシェのその先の喜びへ。バニラとトンカ豆(バニラや桜餅に似た香りの種子)のフレーバーは、豊かな香りがフィナンシェのキャラメルっぽい香ばしさを際立たせるよう。台湾のレアスパイス、「マーガオ」のフィナンシェは、その爽やかな香りに合わせて焦がしバターではなく澄ましバターを使い、ヨーグルトとオリーブオイルで軽やかに仕立てて。レモンケーキみたいな風味に、レモングラスに似たハーブ香まで纏っていて、なんとも清々しい。香りが紡ぐ奥深いフィナンシェの世界が、ここからどこまでも広がっていく!
バニラトンカ、キャラメルウーロン、マーガオの3種入り「Financier」(6個入り)¥2,700(送料別)。「キャラメルウーロン」はスパイシーさを秘めた福建省武夷岩茶をクリームに煮出してキャラメルを作ってから混ぜ込むことで、香ばしさや焦がしバターの旨みを引き立てて。リベイクすれば焼きたてのサクフワ感と香りが復活。冷凍して食べるのも手で、生キャラメルっぽい食感が楽しめます。
ETEL 公式オンラインストアで毎週月曜20時より販売。インスタアカウントは@etelofficial https://etel-official.com/
チコ スイーツライター。大人気のガイド本『東京の本当においしいスイーツ探し』(ギャップ・ジャパン)シリーズ監修。
※『anan』2023年6月7日号より。写真・清水奈緒 スタイリスト・野崎未菜美 取材、文・chico
(by anan編集部)