息を呑むほど見事な絞りに、カットするのを一瞬ためらう。ひとつずつ絞るクリームは型で作るだけとは違う、独特なルックスを叶えていた。今年9月に開業した『フォーシーズンズホテル東京大手町』は、ペストリーブティックはないけれど、事前注文すれば美しい3種のアントルメをテイクアウトできる。
エグゼクティブパティシエに就いた青木裕介さんは、10年ぶりに日本に戻ったという。フランスではM.O.F.(国家最優秀職人章)シェフのもとで腕を磨き、カタールやカナダなど、日本人パティシエには馴染みが薄そうな国でも経験を積んだ。「お菓子はもちろん、世界各地の食事や食材と出合い、視野が広がりました」。そう話す彼の素材使いはリベラルで、このチーズケーキにも直近で活躍していた、バリ島のニュアンスが潜んでいる。レモン風味のレアチーズにオレンジとアプリコットのジュレを忍ばせ、さらに層を重ねるレモンクリームはカラマンシー入り! シークワーサーにも似たカラマンシーは、東南アジアでメジャーな柑橘ながら、こんなふうに味わえるなんて。コクまろなチーズケーキは爽やかな柑橘のみずみずしさをまとい、その奥に潜めたひと味違う酸味は、そっとアジアンリゾートのムードを運んできてくれるのだった。
フロマージュ クリュ¥4,500(直径15cm)。口溶けの中で訪れる爽やかさに、その後から追いかけてくる、サクサクのクランブルとヘーゼルナッツのスポンジとの香ばしさもアクセント。
フォーシーズンズホテル東京大手町「THE LOUNGE」 東京都千代田区大手町1‐2‐1 TEL:03・6810・0600 8:00~23:00 無休 ※テイクアウトケーキは、3日前までに電話注文(TEL:03・6810・0655)、『THE LOUNGE』で受け取るシステム。キャンセルは2日前までに。
チコ スイーツライター。大人気のガイド本『東京の本当においしいスイーツ探し』(ギャップ・ジャパン)シリーズ監修。
※『anan』2020年10月21日号より。写真・清水奈緒 スタイリスト・中根美和子 取材、文・chico
(by anan編集部)