ふたつの“ゾウ”を通して自由について考える。現代美術家・椿昇の個展がスタート

《the Elephant in the Room XL》のドローイング 2025年 Ⓒ椿昇

現代美術家・椿昇の個展「椿昇 フリーダムー像(ゾウ)と生きる」が、6月6日から青森県の十和田市現代美術館でスタート。ふたつの“ゾウ”を通して、見る者に「自由とは何か」という根源的な問いを投げかける。


社会の同調圧力が不可避な中でどう自由に生きるか

謎の生命体や昆虫をモチーフにした超巨大作品で知られる現代美術家・椿昇さんの個展が始まる。メインとなる新作は、展示室を埋め尽くす象の頭部。作品名《the Elephant in the Room XL》は英語の慣用句に由来し、部屋の中に象がいるのにいないように振る舞うこと、ひいては大きすぎて処し難い問題を見て見ぬふりをする状況を指す。十和田市現代美術館のチーフ・キュレーターの長尾衣里子さんはこう解説する。

《アッタ》 2008年 十和田市現代美術館 撮影:小山田邦哉

「環境破壊や格差の拡大といった社会の諸問題を“黙殺”しがちな、実体の曖昧な世間の圧力を具現化した作品です。一方で、そうした規範が日常を円滑にする一面もある。社会の同調圧力が不可避な中でどう自由に生きるか。それが椿さんの問いかけなのです」

展覧会の副題にある“ゾウ”は「象」と「像(イメージ)」のダブルミーニング。日々、さまざまな出来事やそれに伴う同調圧力がSNSやメディアで増幅し拡散され、私たちは常にその像(イメージ)に晒されている。決して排除できない“ゾウ”の下で自由であること(フリーダム)とはどういうことなのか。そのヒントを椿さんが展示室に滞在して作る「制作スタジオ」の中に見つけ出せるかもしれないと長尾さん。

《the Elephant in the Room XL》のマケット 2025年 Ⓒ椿昇

「椿さんの脳内を三次元化する試みです。椿さんいわく『頭の中は自由だ』と。また、ここからさらに、頭の中のフリーダムと巨大な像の間にどのような接点が作られていくのか。ぜひ会場で体感してください」

何を自由と捉えるかは、人によって異なる。だからこそ、自分自身のフリーダムについて、十和田を訪れ、じっくりと考えたい。

information

椿昇 フリーダムー像(ゾウ)と生きる

十和田市現代美術館 青森県十和田市西二番町10-9 6月6日(土)~11月8日(日) 9時~17時(入場は16時30分まで) 月曜休(祝日の場合は翌日休。8/3・10は開館) 一般1800円ほか TEL. 0176-20-1127

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取材、文・松本あかね

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