一番近しい人を遠くに感じる…。ズレてしまった心は修復可能!? 漫画『1122 五代夫婦の場合』

漫画『1122(いいふうふ) 五代夫婦の場合』の作者、渡辺ペコさんにインタビュー。


生じてしまったズレと、その変化を丁寧に描いていきたいです

公認不倫を選択する30代夫婦を描き、大きな話題を呼んだ渡辺ペコさんの『1122』。本作はそのスピンオフだが、こちらの夫婦もなかなかややこしい状況に陥っている。

「夫婦っていうのは、恋愛的感情や性的つながりが薄れたとしても、信頼や敬意、言葉のコミュニケーションがあれば関係性は保てるはずだと、前作を描いた頃は思っていました。だけど自分も結婚生活が長くなり、周りの話を見聞きするうち、そもそも“言葉が通じなくなる”のが問題ではないかと思うようになって。前作では想像が及ばなかった夫婦のパターンを描けるかなと思いました」

五代敦史(ごだいあつし・40歳)と紗綾(さあや・37歳)は、5歳の娘を育てる結婚10年目の夫婦。冒頭、敦史がいつものように帰宅すると、紗綾から娘と一緒に家を出たいと告げられる。敦史にとっては青天の霹靂で、自分の過去の浮気をいまだ引きずっているのだと思い至るが、紗綾は見当違いなその反応にも心の隔たりを感じてしまう。

「別居を切り出されて、前触れがなかったと感じてしまうのは、単に鈍いだけでなく、相手の変化に関心を払っていないからだと思うのです。紗綾は何度も改善を訴えてきたのに、敦史は取るに足りないこととして聞き流していたのでしょうね」

たとえば家事や育児の分担。共働きで、敦史はこれらに決して非協力的なわけではないのだが…。

Ⓒ渡辺ペコ/講談社

「決定的にダメではないけど、少しずつ積み重なることによって揺らいでいく様を描きたかったのです。敦史は家事能力や問題解決能力が、紗綾より低いけど、そのことに無自覚だったりします。家事育児の認知労働といわれる、検討や判断、観察など監督業的な部分はどうしても女性に偏りがちで、紗綾は疲れや不満を感じています。前作のいちことおとやは諦めない関係性だったから、言葉の応酬や何かしらアクションを起こして、改善を図ろうとしていました。育児など目先のことに日々追われている五代夫婦は、諦めざるを得ない場面が多いのかもしれません」

自分で選んだ、最もわかり合える存在だったはずのパートナーを、遠くに感じてしまうもどかしさ。紗綾に好きな人ができるのも、別居を望む理由となるのだが、精神的共感を欲した結果のように思えてしまう。

「紗綾は恋の影響もあってドライブがかかる一方で、敦史は冷静にいろんなことを振り返って何を思うのか。生じてしまったズレと、その変化を丁寧に描いていきたいです」

言葉が通じなくなるのは、夫婦間に限ったことではないだろう。自分にとって大切な人と向き合い続けるためのヒントが、きっとあるはずだ。

Profile

渡辺ペコ

わたなべ・ぺこ マンガ家。2004年デビュー。'20年に完結した『1122』は、実写ドラマ化も。その他著作に『にこたま』『恋じゃねえから』など。

information

『1122 五代夫婦の場合』1

「いい夫婦」と思っていた夫が、ある日突然妻に別れを告げられる。妻の本音、夫の言い分を通して、関係性のズレを緻密に描く『1122』のもう一つの物語。講談社 792円

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写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

anan 2497号(2026年5月27日発売)より
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No.2497掲載

ときめきカルチャー 2026

2026年05月27日発売

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