60歳以上の女性を対象とした女性用風俗店「銀楼館」の男娼・櫻が、さまざまな老女に求められ、人生の一端に触れる様を描いた小説『枯れ枝に桜』。作者の君嶋彼方さんにインタビュー。
わからないからこそ書いてみたいと思えた
女性の老いと性、というテーマだけを聞いて、もしかしたら眉をひそめる人もいるかもしれない。あるいは、他人事だと思う人も…。著者の君嶋彼方さんも、その反応は想定内。それでも書きたかった物語だ。
「デビュー当時から着想はあって、きっかけはSNSで流れてきた動画でした。介護施設のような場所で、老婦人が若い男性介護士の腕を握って離さない姿をとらえていて、『おばあちゃんかわいい』『仲良しだね』などとコメントが並んでいました。それを見たとき、男女の立場が逆だったら、これほど好意的な反応にならないのでは、と思ってしまって。年齢を重ねた女性は、当たり前のように性欲はないものとして扱われている。もちろん本人の気持ちはわからないけれども、わからないからこそ書いてみたいと思えたのです」
6つの連作短編に共通して登場するのは、誰が見てもハッとするほど美しい顔立ちの、櫻(さくら)という青年。女性用風俗店「銀楼館」の男娼で、しかもその店は60歳以上を対象にしている。櫻がお相手を務めるのは、うらぶれた一軒家にひとりで住む孤独な老女、往年の大女優、老人ホームで夜這いを繰り返し、スタッフを困惑させている女性などさまざま。
「たとえば認知症の兆候が見られたり、死への恐怖を抱えていたり、どの女性も老人である必然性を意識しました。今回に限らず、自分と近い属性の人の話をそれほど書いたことがなく、想像によるところが大きいのですが、まったく自分の中にない感情というわけではない。老いへの不安や性的な悩みなど、わずかでも共通する部分を深掘りして、物語に落とし込んでいるのでしょうね」
女性たちは必ずしも体の交わりを求めているわけではないところが、むしろ生々しく、なかには一見突拍子もない依頼も。櫻は誠心誠意、応えていくのだが、相手によってまったく印象が異なるつかめなさも、読み手として興味をそそられる。
「性愛小説を書きたかったわけではなく、人とつながりたいと願う女性たちの話だと思っています。恋愛をしたいのも、忘れられたくないのも、ひとりでは死にたくないというのも、根本的には誰かとつながっていたいという心の表れだと思うので」
若いうちは、想像もつかない遠い未来かもしれないが、紛れもなく地続きの話。つながりを求める女性たちは、いつかの私たちの姿でもある。
Profile
君嶋彼方
きみじま・かなた 2021年「水平線は回転する」で第12回小説野性時代新人賞を受賞。同作を改題した『君の顔では泣けない』でデビュー。著作に『夜がうたた寝してる間に』『一番の恋人』など。
information
『枯れ枝に桜』
60歳以上の女性を対象とした女性用風俗店「銀楼館」の男娼・櫻が、さまざまな老女に求められ、人生の一端に触れるヒューマンドラマ。双葉社 1980円
anan 2493号(2026年4月22日発売)より















