今ではかるたで楽しむことが専らの百人一首。けれど約800年前、歌人で歌集の撰者としても知られる藤原定家の手で編まれた後はしばらく門外不出だったという。
百人一首の聖地・小倉山麓の美術館で歌の世界を満喫
「百人一首は藤原定家が息子の義父からの依頼で、山荘に飾る名歌百首を撰んだことが始まり。その後は歌人の間で受け継がれ、それも時代を代表する歌人の証しとして密かに伝承されてきたのです」
と、本展担当学芸員の國永裕子さんは話す。そうした秘伝中の秘伝だった百人一首も時代が下るにつれ、優れた歌人の姿を描いた「歌仙絵」などの絵画や書を通じて公家、武家の間に広まるように。さらに印刷技術の発達した江戸中期以降は、庶民にも親しまれるようになった。そうした絵や書を入り口に、百人百色の豊穣な世界を味わおうというのが本展の試みだ。
すでに平安時代の終わり頃には優れた歌人が神格化され、絵に描くことが行われていたという。人物像と代表作の歌を一画面に描くのが定番のスタイル。
「注目は初公開の『百人一首画帖』です。作者不詳ですが、非常に表情豊かな点が見どころ。同じスタイルで描かれた『百人一首手鑑(てかがみ)』のほうはポーカーフェイスですね」
さらに明治以降は写実的な技法を用いた歌仙像も描かれるようになる。
「今でいうとポピュラーなキャラクターを何人もの漫画家が描くように、自分なりのイメージを描いてみたくなるのが『歌仙絵』というジャンルなのかもしれません」
そのほか定家直筆と伝わる《小倉色紙 朝ほらけ》をはじめとする和歌をしたためた書の名品もずらり。書の見方を解説したパネル展示を一読すると、楽しく鑑賞のコツを学ぶことができる。例えば現代人を戸惑わせる「散らし書き」。これは言葉の順番を絵に合わせて並び替えたりすることをいい、斜め上に飛んだり、また中央に戻ったりといった配置の構成美を楽しむものなのだとか。先人たちの遊び心いっぱいの百人一首の世界へ、ぜひ足を運んで。
information
絵と書で楽しむ百人一首の世界
嵯峨嵐山文華館 京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町11 前期:1月31日(土)~3月2日(月) 後期:3月4日(水)~4月12日(日)10時~17時(2/14は~14時。入館は閉館の30分前まで) 2/15・17、3/17休 一般1000円ほか TEL. 075-882-1111
anan 2480号(2026年1月21日発売)より

























