〈“surplus”2003-04→a/w〉切り絵の後に残った紙の切れ端をちりばめ生まれた図案をプリントしたテキスタイル。

創立30周年を迎えたミナ ペルホネンの新たな大規模展「つぐ」に込めた想いを、代表の田中景子さんが語る。田中さん自身が手がけたポスター《スー ころん》のアートワークにも触れながら、長く愛されるブランドの「つぐ」物語を紹介します。


ものづくりを続けるために、それぞれの「つぐ」を探して

一枚一枚から物語が浮かんでくるような、オリジナルのテキスタイルを使ったものづくりで知られるミナ ペルホネン。デザイナーの皆川 明さんがブランドを創立して30周年を迎えた今年、2019年から国内外を巡回した「つづく」展を終え、新たな大規模展が開催される。

代表を務めるデザイナーの田中景子さんは本展についてこう話す。

「これまでも節目節目に展覧会という形で活動を振り返り、ブランドの思想をお伝えしてきました。自分自身が代表になってから、ミナ ペルホネンが皆川という個人が始めたものという枠を超えて、ひとつのブランドとして長く活動が続くことを思い、形態を徐々に変化していけるよう考え続けてきました。ようやく形として表現できるようになったのが、今回の機会なのだと思います」

〈“tarte”2007-08→a/w〉 パティスリーに並ぶ色とりどりのタルトをイメージ。ドットの刺繍で縁取りを、内側はステッチで表現

「せめて100年続くブランドを」という思いで皆川さんはブランドをスタートさせたという。例えば一枚のテキスタイルから洋服やバッグ、椅子などいくつものプロダクトを展開することや、一つのモチーフを色使いや生地を替えてリリースしていくこと。前回の「つづく」展が瞬間的に消費する商品づくりではなく、日々の生活や人生のさまざまな側面に寄り添う長く愛されるアーカイブを育てていく、そうしたブランドのあり方を伝える試みだとしたら、今回の「つぐ」展にはどんな意味が込められているのだろう?

「『つづく』展では私たちの活動を広く表現したり、観たり、体感したりしてもらうことを通して知っていただけるように意識して展示を考えました。『つぐ』という行為は受け手があってこそ成り立つように、『つぐ』展では私たちの活動を考察することを通し、ご自身の中にある『つぐ』とは何かという問いを持ち帰っていただきたいなと思っています」

田中さん自ら手がけた本展のポスターには《スー ころん》というタイトルが添えられている。その線はケーキの一切れや小人の顔、ちょうちょ、山型パンのようでもある。

展覧会告知ポスター(アートワーク:田中景子《スー ころん》)

「暮らしの中にある形で、理由をはっきりと意識したことはないけれど、好きなラインやフォルムを描いてみました。『つぐ』展を観ていただく方々の中にある、潜在的な興味や思考に少しでもアクセスできたら嬉しいという思いもあります」

「つぐ」とは誰か1人が担うことでも、技術を受け継ぐことだけでもなく、ミナ ペルホネンを囲む一人一人の内側にその萌芽はあるのだろう。皆川さんが始めたミナという小さな1滴のしずくの周りにいくつもの波紋が連なるように、受け取り手たちの反応が、次世代のミナ ペルホネンをつくっていく。つぐことによって物語はつづいていく。

〈“forest parade”2005→s/s 原画と刺繍パーツ Photo:sono(mame)〉草花や鳥など37種類のパーツが立体的に房のように連なる刺繍のためのデザイン画

Profile

田中景子

たなか・けいこ デザイナー、CEO。2002年入社。国内外の産地やメーカーの個性を生かしたものづくりを行う。ブランドとして社会に貢献し、個人の喜びを増やすべく活動の場を広げている。

information

「つぐ mina perhonen」

  • 世田谷美術館1・2階展示室(東京都世田谷区砧公園1-2)
  • 開催中(~2026年2月1日まで)
  • 10時~18時(入場は17時30分まで)
  • 月曜(11/24、1/12は開館)、11/25、12/29~1/3、1/13休 一般1700円ほか
  • TEL. 050-5541-8600(ハローダイヤル)

取材、文・松本あかね

anan 2472号(2025年11月19日発売)より
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No.2472掲載

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