秋が深まってくると、猫と一緒に家でのんびりぬくぬくと過ごすのが何よりも幸せ! そんなひとときにぴったりの猫本をセレクト。猫本専門店の猫本担当・アネカワユウコさんが、とっておきの名作を教えてくれました。
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【絵本】『そらのほんやさん』くまくら珠美

時空を超えて気持ちが繋がる世界へ。
素敵な本屋さんが空の上に!? そこは、下界から旅立ったひとびと(動物たち)が憩う『そらのほんやさん』。ふたりの猫の店主が、どこか奇妙だけどワクワクする本をセレクトし、本の案内人として、お客様の要望に応えてくれます。その要望が、たとえ時空間を超えたものだったとしてもなんのその。「おさがしの本がありましたら、おこえがけください」と、天使の羽をつけた犬や猫たちが下界での思い出を語り、店主はご要望の本を見つけ出す。「当店の本は、そらと下界をさらにぐっと近づけます」という触れ込み通り、時空を超えて、かつての飼い主や思い出と繋いでくれる。下界から旅立った動物たちが住む、空の向こうにある世界。ペットロスの方にもオススメの一冊です。¥1,650(理論社)
【絵本】『Mo Story 子猫のモー』チェ・ヨンジュ 訳・矢部太郎

森の住人にも癒される子猫の冒険物語。
ある夜、子猫のモーは窓の外に見つけた“笑っている光”を追って、森へ冒険に出かけることに。森の中では、行く先々で気さくで楽しい動物たちが登場し、モーの旅を手助けする。だけど、みんなが口を揃えて言うのは「森に住む恐ろしいクマに気をつけろ」という警告。モーはクマに出会わず、“笑っている光”を見つけることができるのか? 装丁のかわいさに目を惹かれ、本を開くとまるで短編アニメーションのような世界観。次々と登場する動物たちが予想外の展開へと誘い、大人でも楽しめる彩り豊かなストーリーになっている。作・絵は韓国在住の人気イラストレーター、チェ・ヨンジュさん、日本語翻訳は芸人・漫画家の矢部太郎さん。読み終わったらイーゼルに立てて飾りたくなる一冊。¥2,750(玄光社)
【小説】『猫は宇宙で丸くなる』シオドア・スタージョン、フリッツ・ライバー他 編・中村 融

時にSF、時にファンタジックな短編集。
猫が登場するSF&ファンタジー10編を楽しめる一冊。この本に登場するのは、マシュマロを焼く天才猫、銀河文明を改変した猫、不老不死になった猫、魂の転移をした猫、猫パンチでエイリアンと戦う猫、テレパスになった猫など。SF作品でありながらも、猫型宇宙人や猫型ロボットは登場せず、いわゆる「猫」が物語を展開していく。媚びることなく、無邪気にユーモアを交えながらも、飄々と自分の願いを成し遂げてしまう「猫」。シビれる賢さや、神がかった展開や、子猫が自ら焼きマシュマロを作って食べようとも、「猫」ならばあり得るかもしれないとすんなりと受け入れてしまう。そこが地上だろうが宇宙船の中だろうが、猫はやっぱり猫で、本能のままに跳び回るのです。¥1,320(竹書房文庫)
【小説】『猫を処方いたします。』石田 祥

心が疲れている時、猫は効きます。
京都市中京区の薄暗い路地にある「中京こころのびょういん」。さまざまな悩みや心の不調を抱えてこの病院を訪れた患者に、妙にノリの軽い医者が処方するのは、薬ではなく、本物の猫。「大丈夫ですよ、だいたいの悩みは猫で治りますから」。その言葉に戸惑いながらも、決められた日数、猫を「服薬」する5人の患者たち。自分のことだけでも精一杯の日常に、突然「猫」が加わり、一体何が変わる? 今ある問題は解決するのか? 抱え込んだストレスは解消されるのか? と葛藤するものの、停滞していた現実は予想もしなかった方向に動き出し、患者たちは新たな状況の中でそれぞれの答えを見つけ出していく…。医者が猫を処方する不思議さと、ささやかな幸せが詰まったこの一冊を、心が疲れた時にぜひ。¥924(PHP文芸文庫)
【小説】『猫語の教科書』ポール・ギャリコ 訳・灰島かり

猫目線で語られる人間の飼いならし術。
この本は、ある一匹の猫が全国の猫のために書いた「快適な生活を確保するために、人間をどうしつけるか」というマニュアルであり、いかにして居心地のいい家に入り込み、人間を虜にし、快適に過ごすための権利を手に入れるかを伝授する一冊である。と、ここまで読んでワクワクしたあなたはもはや猫の下僕候補です。猫に好かれたいなら、猫の持つ「乗っ取り本能」に従うのが近道。猫目線で語られる緻密な人間観察と、その攻略方法。そして、物語の合間合間に出てくる、「だって、猫嫌いだって思い込んでいる人間を降参させるくらい、痛快なことはないでしょ?」など名セリフの数々。結局、飼いならされていたのは猫ではなく私の方だった、と知ることがでる名著です。¥704(ちくま文庫)
【短歌・エッセイ】『猫のいる家に帰りたい』仁尾 智 イラスト・小泉さよ

愛猫家なら共感する、猫と暮らす幸せ。
“猫短歌”31文字からストレートに伝わってくる、猫暮らしのふとした日常。そこにある幸福感をしみじみと味わえる一冊。《幸せなことだ 暮らしに猫がいて 泣いたり笑ったりすることは》と詠む歌人・仁尾智さんの温かで優しい猫好き目線の短歌&エッセイに、小泉さよさんの柔らかなイラストが寄り添い、じんわりと心がほぐれます。《幸せは重くて苦い ひざに寝る猫を起こさずすするコーヒー》。この短歌に添えられたエッセイの中に、「猫がひざで眠っているときは、動かなくてよい」という仁尾家の暗黙の掟も書かれていますが、猫と暮らしている人はそのエピソードに同意する人は多いはず。短歌に重ねて振り返る、我が猫暮らし。楽しさや喜びはもちろん、切なさもまた、良きです。¥1,430(辰巳出版)
Profile
『姉川書店 神保町にゃんこ堂』・アネカワユウコ
常時2000冊以上を揃える猫本専門店のセレクト担当。保護猫カフェからやってきた三毛猫すーちゃんが、同居7年目にして突然デレ度が増し増しになり、撫でろ、腰パンしろと、足元に絡むように。下僕冥利に尽きる日々を送っている。
anan 2469号(2025年10月29日発売)より


























