
塚田ゆうた『RIOT』2
本作『RIOT』が初連載となる塚田ゆうたさん。主人公と同様、ZINE(自主出版の冊子)を以前から作っていた。
衝動、憧れ、創作欲で高校生が挑むZINE制作!
「連載を始める前まで、新聞社の出版部という部署でデザインの仕事をしていました。もともとチームものの映画が好きだったのですが、本や雑誌の制作もまさにチームワークで、その過程を物語にしたいと思いました。以前の雑誌作りに興味があったので、写真や文字を切り貼りしてアナログに作っていく姿を描きたくて、だったらお金に余裕がない高校生がいいなと思ったんです」
舞台は、海が近いのどかな田舎町。スマホひとつで、情報収集もゲームもコミュニケーションもできる令和の時代、喫茶店で向かい合い、むさぼるように雑誌を読む高校生がいた。シャンハイはスマホの代わりに懐中時計を愛でるような、ちょっと変わっているけれども自分の世界を持つ男子。アイジは何をやっても長続きしないものの、とりあえず今はオリジナルTシャツを作って販売している。何かしら夢中になれるものを欲するふたりにとって、雑誌を作るきっかけのひとつとなるのが、2017年に実際に発行された『ポパイ』の「映画とドーナツ。」という号。
「この特集を読んだとき、シャンハイと一緒でドーナツ片手に映画を観たくなり、僕もドーナツを買いに行きました(笑)。知り得なかった情報に探さずとも出合えるのが、雑誌の面白さなのだと思います」
シャンハイが文章を書き、アイジがデザインを考え、見様見真似で8ページの冊子を制作。それが内容も印刷方法も綴じ方も自由なZINEと呼ばれるもので、世の中には多くの作り手がいることを彼らは知る。
「このマンガを描き始める前から、ZINEと商業雑誌、田舎と都市、大人と子ども、みたいな二項対立的な要素を意識していました。僕自身が地方に住んでいるのも大きいですが、田舎の高校生が作ったZINEが、より多くの人や広い世界に届くような展開を描けたらいいですね」
勢いだけでZINEを作ってしまったふたりは、さらなる仲間を巻き込みながら自分たちの表現を模索。決して派手とはいえない雑誌作りの工程を、高校生らしい人間関係の悩みとともにドラマティックに描いていく。創作の喜びが手に取るように伝わるのは、作者である塚田さんの実感がこもっているからこそだろう。
「言いたいことを言い合い、たまにケンカをしながらいい形になっていくのが、もの作りの楽しさだと思うし、仕事もそういうふうにできたらいいなと会社員のときに思っていました。シャンハイやアイジたちのことも、楽しませてあげたいです」
塚田ゆうたさん
Profile
つかだ・ゆうた マンガ家。静岡県出身。第79回新人コミック賞にて青年部門佳作入賞。読み切り掲載を経て、『月刊!スピリッツ』にて本作を初連載。
塚田ゆうた『RIOT』2
Information

衝動的にZINEを作り、2号目に着手するふたり。雑誌にはよい写真が不可欠だと気づき、写真部の女子をチームに誘うものの…。ZINEをめぐる青春物語。小学館 770円 Ⓒ塚田ゆうた/小学館
anan 2453号(2025年7月2日発売)より