鶴亀まよ『堕落家族論』上・下

職業不詳の都賀藤馬(つが・とうま)と、自称ミュージシャンの小谷仙太郎(こたに・せんたろう)。彼らの元カノだった凛々子(りりこ)が病死し、遺された6歳の娘・めぐると3人で同居することに。ドタバタな予感たっぷりに始まる鶴亀まよさんの『堕落家族論』がめっぽう面白い。


少女はどちらの青年を父に選ぶのか。破天荒な家族構築計画が始まる。

「“父親候補が複数人いる”という設定は映画『マンマ・ミーア!』から着想を得ました。子どもを取り扱う作品は読み手としても描き手としてもすこし慎重になってしまうのですが、これくらい振り切った設定なら私も楽しめるんじゃないかと思って。めぐるを6歳児に設定したのは大人と子どもの対話が描きたかったからです。幼すぎるとマスコット的な存在になってしまいそうで、ある程度自分の意思を言葉で主張できる年齢の子にいてほしいなと」

仙太郎は家事が少しだけできる分ましとはいえ、藤馬ともども「親らしさ」は持ち合わせていない。だが、噛み合わなさを繕いながら、新たな家族像を模索していく彼らの姿にハートが射貫かれる。

「ふたりとも世間的にはダメな大人なのですが、めぐるに対する言動は彼らなりにずっと誠実です。自分の子ども時代を振り返ったときにどんな大人が近くにいたら生きやすくなったかなということを考えながらキャラクターを構築していきました」

大人顔負けの達観もするけれど、6歳ゆえの無力感や運動音痴のコンプレックスに幼いながら思い悩むめぐるの存在は、本書の大きな魅力となっている。

「めぐるに限らずですが、連載を進めていく中で『このキャラってこういう人だったんだ』と私自身が驚かされることも多く、それが楽しみでもあります。なので、最初から細かく決めすぎないようにしています」

織り込まれているテーマはシリアスだが、どこかコミカルに展開していく空気感に救われる。

「読者がそう感じてくださるならうれしいです。疲れているときでも気軽に読み返して笑ってもらいたいので、全体のトーンが重くならないようシリアスなシーンの配置や分量にはかなり気を使いました。コメディ部分では特に会話のテンポを意識して、さらっと、でも何度でも読めるように腐心しています」

実は、すでに海外翻訳も決まっているのだそう。

「海外の方にもコメディ部分で笑っていただけていたりすると『言語が違ってもウケたんだ!』とちょっとうれしくなります」

Profile

鶴亀まよ

つるかめ・まよ マンガ家。創作BL漫画をSNSなどに投稿、編集者より声がかかり、商業誌デビュー。既刊に『パーフェクトプロポーズ』ほか。

Information

鶴亀まよ『堕落家族論』上・下

父ポジションを譲り合うふたりにめぐるが切る啖呵〈(死ぬのはいやだから)ぜったいどっちかパパにする かんねんしろ くそども〉のシーンは白眉。新書館 上902円、下858円。Ⓒ鶴亀まよ/新書館

写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子

anan2432号(2025年1月29日発売)より
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No.2432掲載

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