たとえば重い荷物をさりげなく持ってくれたり、寒そうにしていたら上着をそっとかけてくれたり……。恋をしているときの「きゅん」とする瞬間は、女の子の性格や価値観が違っても、未来永劫、普遍的なものなのかもしれない。『恋のかけら 佐木 郁 silent story』を読んで、そんなことをふと思った。
佐木郁さんはツイッターで18万人ものフォロワーを持つ、イラストレーター。これほど注目されだしたきっかけは、セリフの一切ないサイレントマンガを掲載したことだった。
「サイレントマンガにしたのは、実を言うとセリフを入れるのが照れくさかったからなんです。セリフって、同じ意味合いでも人によって言い回しが違うじゃないですか。しかも好みは年々変化していくから、過去の作品を見返して照れくさくなるのが嫌だったんです。その点サイレントは、いつ見てもそのときにいいと思う言葉を当てはめられるから、結果オーライですよね(笑)」
本作に収められているのは、高校生の初々しいカップル、先生に片想いする女子高生、何かとちょっかいを出してくる会社の同僚、同棲しているほのぼのカップル、という4組の男女。それぞれの恋愛模様が、きゅんとするシチュエーションとともにサイレントで描かれていくのだが、なかでも佐木さんが得意としているのが、“強引男子”。
「草食系男子とかがかっこいいとされる風潮はありますけど、読者の反応なんかを見ていると、女の人はもっと男の人に引っ張ってもらったり、グイグイ来てほしいんじゃないかなあって思うんです」
そんな女性のささやかな願望を叶えてくれるシチュエーションがずらりと揃っているのだが、佐木さんの描く男性がまたイケメン!
「上手い下手は別として、自分が描いた男性のイラストが一番好みなんです。外見的にも行動的にも私の理想を詰め込んだ男性をみなさんに共有してもらい、ステキですねって言われると、なんだか自分の彼氏を褒められているようで嬉しいですね」
ツイッター上では、男性から「女の人って、こういうのできゅんとするんだ……」とか「今度、これやってみよう」というリプライが飛んでくることもあるそう。胸きゅんが詰まった本作を女性の妄想で終わらせないためにも、男性に薦めてみる!?