92年ぶり、全“球技”が自力出場。メダル候補続々のパリ五輪開幕!
厳しい予選を戦って出場権を勝ちとった選手一人一人の頑張りは言うまでもないが、チームスポーツで出場権を獲得した競技が多いことも、そうなった要因の一つに挙げられる。サッカーやバスケットボール、バレーボール、7人制ラグビーが男女ともに出場。その他にも36年ぶりの自力出場となったハンドボール男子、6大会連続出場のホッケー女子、3大会連続出場の水球男子と、92年ぶりにすべての団体球技が自力出場する。昨年からの予選大会での盛り上がりを覚えている人も多いのでは?
もちろん、チームスポーツだけでなく、個人種目や団体種目も含めて、メダルが期待される競技や選手がまだまだ多いパリ五輪。その中でも注目の競技や選手をスポーツライターの松原孝臣さんに伺った。
「開催国枠で出場できた東京五輪と違って、今回は限られた出場国枠を勝ち上がっています。チームスポーツというところで言うと、やはり指導者の力が大きいとあらためて感じています。バスケットボール男子が本当に久しぶりに自力で出場権を獲ったのも、東京五輪で女子を銀メダルに導いたホーバスさんがヘッドコーチになったことが、チームの快進撃につながっていますし、バレーボール男子も今回、非常にいいチーム状態でパリに臨みますけど、ブラン監督の存在はやはり大きいなと思います。また、どちらにも共通するのは、海外でプレーしてキャリアを積んできている選手が核にいること。それがうまくチームの戦術に生かされていてチーム力も上がったというのもあります」
バレーボールでは石川祐希選手や髙橋藍選手。バスケットボールではNBAでプレーした渡邊雄太選手ら世界基準を知る海外組が、代表チームのレベルを押し上げた。
「バスケットボールは、八村塁選手が久しぶりに代表で見られるので楽しみです。今年の初めから、ホーバスさんが何度か渡米していて、どういうバスケがやりたいかなど直接話していたようです。個人競技で注目しているのは柔道ですね。これまで第一人者の陰に隠れてなかなか出られなかったベテラン選手で、初めて代表に選ばれた選手が多いんですね。男子73kg級の橋本壮市選手は32歳、男子60kg級の永山竜樹(りゅうじゅ)選手が28歳、女子48kg級の角田夏実選手は31歳。長年苦労してやってきた中でようやく掴んだチャンス。最後の大舞台ということもあり得るなか、どこまで今までの想いを発揮できるか! フェンシングも種目全体を通しておそらく史上最強と言っていいようなメンバーが揃っています。複数のメダルと優勝も全然あっておかしくないと思います。男子エペ団体が前回東京で金メダルでしたが、それよりもっと以前から、フェンシングも海外から指導者を呼んで、ずっと長い期間継続して強化に取り組んできている。今の強さはその積み上げてきたものの結果でしょうね。世界女王、女子サーブルの江村美咲選手は本当に金メダルに近いと思います」
他にも卓球や体操、レスリングなど、まだまだメダル候補が多くて、楽しみな五輪になりそうだ。
「あとはバドミントン。協会の不祥事もあって強化が難しかったところもあったんですが、男女シングルス、男女ダブルス、ミックスダブルスと全種目で、世界ランキング上位を維持しています。奈良岡功大選手、山口茜選手、ワタガシペア…。主要な国際大会では常にメダルを取っているような選手たちが揃っていますね。そしてメダル候補っていうところで言うと、スケートボードやブレイキンも可能性高いですね。日本はこういう新種目が強い印象がありますが、特にスケートボードだと、親御さんがコーチで親子で一生懸命やっている人が多いのかなって気がします。パリでも東京五輪に近い成績を期待したいですね」
江村美咲(フェンシング/女子サーブル)
世界選手権2連覇中の金メダル最有力候補。五輪で唯一メダルがないサーブルにメダルをもたらすか。開会式で選手団の旗手も務める。
角田(つのだ)夏実(柔道/女子48kg級)
世界選手権3連覇中。柔道は開会式の翌日にスタート。日本人選手金メダル第1号の可能性大だ。得意技はともえ投げと関節技。
八村 塁(バスケットボール男子)
東京五輪以来3年ぶりに代表復帰。チームの大黒柱として、3戦全敗だった前回の雪辱を期す。NBAのロサンゼルス・レイカーズ所属。
奈良岡功大(こうだい/バドミントン/男子シングルス)
2023年世界選手権男子シングルスで準優勝。五輪は初出場となる。世界ランキング5位(7/9現在)で、日本人最上位。
名監督の力も大きい!
フィリップ・ブラン
’17年バレーボール男子代表のコーチに就任、’21年10月監督に。パリ五輪が日本代表監督ラスト舞台となる。
トム・ホーバス
東京五輪ではバスケットボール女子日本代表を率い銀メダル。’21年9月より男子日本代表ヘッドコーチ。
パリ2024オリンピック
7/26(金)~8/11(日)32競技329種目NHK 地上波・BS ほか、各民放で放送予定。
松原孝臣さん スポーツライター、編集者。出版社勤務を経て『Number』編集に携わる。五輪競技を中心に取材、夏季・冬季とも現地取材経験も豊富。
※『anan』2024年7月31日号より。写真・YUTAKA/アフロ 森田直樹/アフロスポーツ 長田洋平/アフロスポーツ
(by anan編集部)